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熱意と優しさをもって、人と共に高め合う

――励まし合い、学び合い、にこやかに生きる人こそ“士”である

子路(しろ)が孔子に問うた――

「どのような人が“士”と呼ばれるのでしょうか?」

孔子は三つの徳目を挙げて、こう答えた。

「**切切(せっせつ)、偲偲(しし)、怡怡(いい)**たる者は、士と呼ぶにふさわしい」

  • 切切:心をこめて、懇切に励ますように。
  • 偲偲:誠意をもって、やさしく助言し合い、学びを深めるように。
  • 怡怡:兄弟のように、穏やかでにこやかに、和やかに接するように。

孔子は続けてこう語った:

「友人とは切切・偲偲と――すなわち、互いに高め合い、勉強し合う関係でありたい。
兄弟とは怡怡と――すなわち、にこやかに和やかな関係でありたい。」

これは単なる礼儀作法ではなく、“士(志ある者)”として人間関係にどう向き合うべきかを語った言葉である。
温かさと真剣さ、率直さと和やかさ――このバランスを保ちながら人と関わる姿勢こそ、「仁」の実践であり、士の生き方である。


原文とふりがな付き引用:

「子路(しろ)問(と)うて曰(いわ)く、如何(いか)なれば斯(ここ)に之(これ)を士(し)と謂(い)うべきか。
子(し)曰(いわ)く、切切(せっせつ)、偲偲(しし)、怡怡(いい)たらば、士と謂うべきなり。
朋友(ほうゆう)には切切、偲偲たり。兄弟(けいてい)には怡怡たれ。


注釈:

  • 士(し) … 志ある人物。品性と責任感を持ち、社会に貢献する者。
  • 切切(せっせつ) … 熱意をもって思いやり深く接すること。深いまごころ。
  • 偲偲(しし) … 親切に導き励まし合うこと。互いに学び合う姿勢。
  • 怡怡(いい) … にこやかで、和やかな人柄。気持ちの安らぎをもたらす態度。

1. 原文

子路問曰、何如斯可謂之士矣。
子曰、切切偲偲怡怡如也、可謂士矣。
朋友切切偲偲、兄弟怡怡。


2. 書き下し文

子路(しろ)、問うて曰(いわ)く、
「如何(いか)なれば斯(ここ)に之(これ)を士(し)と謂(い)うべきか」。

子(し)曰(いわ)く、
「切切(せつせつ)、偲偲(しし)、怡怡(いい)たるが如(ごと)くならば、士と謂うべし。
朋友には切切偲偲たり、兄弟には怡怡たれ」。


3. 現代語訳(逐語訳/一文ずつ)

  • 「子路が尋ねた:どのような人物が“士”(立派な人物)と呼べるでしょうか?」
  • 「孔子は答えた:真心こめて親切に話し、柔らかく思いやりをもって接し、和やかで穏やかである――そのような人は“士”と呼ぶにふさわしい。」
  • 「友人には誠意をもって親しく接し、兄弟とは和やかに付き合うのだ。」

4. 用語解説

  • 子路(しろ):孔子の弟子。直情的・行動派で、よく率直な質問をする。
  • 士(し):立派な人物、人格と行動に優れた人。仁義礼智を備えたリーダー的人材。
  • 切切(せつせつ):心を込めて熱く誠実に語ること。真剣であること。
  • 偲偲(しし):思いやり深く、静かに親しみをもって接すること。
  • 怡怡(いい):穏やかでにこやか、和やかな態度。
  • 朋友には切切偲偲、兄弟には怡怡:対人関係における姿勢の違いを説く。友情には誠実な対話を、兄弟間には温和な態度を重視する。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

弟子の子路が孔子に尋ねた:

「どんな人が“士”と呼ばれるにふさわしいのでしょうか?」

孔子はこう答えた:

「真剣に向き合い、思いやりをもって接し、いつも穏やかな態度でいられる人――そういう人こそ、真の“士”である。
友人には誠意と深い思いやりをもって接し、兄弟には和やかであれ。」


6. 解釈と現代的意義

この章句は、**「立派な人とは、対人関係の質を高められる人である」**という孔子の価値観を端的に表しています。

  • 単に有能な人が“士”なのではなく、人間関係のなかで誠実・親切・穏やかな徳を発揮する人こそが士
  • 友情と家族関係には、それぞれ適した態度があるという点も示唆的であり、関係性に応じた誠意の示し方の重要性が説かれています。

7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)

  • 「“人柄”が人望と信頼を築く」
     成果や論理だけでなく、誠実な対話・温かみのある態度・心のこもった関わりが、リーダーとしての信頼を支える。
  • 「人間関係は態度と距離感のマネジメント」
     友人(同僚)には深く率直に、兄弟(親密な部下やチーム)には柔らかく安心感をもって接する――相手と関係性に応じた柔軟さが重要。
  • 「誠実・思いやり・温和──信頼関係の三要素」
     この3つが揃えば、どんな立場でも**“士”=人として敬意をもたれる存在**になれる。
  • 「人は“どう接したか”で覚えられる」
     提案内容や業績以上に、“あの人は丁寧だった”“優しかった”という記憶が信頼をつくる。

8. ビジネス用の心得タイトル付き

「真剣・思いやり・穏やかさ──“接し方の品格”が人を士にする」


この章句は、技術・実力・成果だけでは人の本質は測れず、日常の態度や接し方に人徳が現れるという孔子の信念を体現しています。

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