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心は「空」であり「満ちている」——この両立が人格を高める鍵となる

人の心は、先入観や邪念で満たしてはならない。
常に柔らかく、空っぽであるようにしておくことが肝要である。
そうすることで、義理――すなわち正しい道理や教えが、自然と心の中に入ってくる。

しかし同時に、心は「中身がない状態」であってはいけない。
むしろ、自らを高めようとする誠実な思いや、理想に向かう意志で充実させておくべきである。
そうすることで、物欲や邪念といった余計なものは、入り込む隙を失う。

つまり、心は「空虚で開かれて」いながら「真実で満ちている」状態が最上なのだ。
これは、柔軟性と確かさ、受容性と意志力を併せ持つ生き方である。


原文とふりがな付き引用

心(こころ)は虚(むな)しからざるべからず、虚(むな)しければ則(すなわ)ち義理(ぎり)来(きた)り居(お)る。
心(こころ)は実(じつ)ならざるべからず、実(じつ)なれば則(すなわ)ち物欲(ぶつよく)は入(い)らず。


注釈(簡潔に)

  • 虚(きょ):心を空にし、先入観や偏見、我欲を取り除いた状態。柔軟な心。
  • 義理(ぎり):本来の意味は「正しい道理」「正義の原理」。自己修養・道徳の根拠。
  • 実(じつ):中身があり、意志や学び、向上心で満ちていること。
  • 物欲(ぶつよく):外的な欲望。心が空虚であれば入り込みやすいが、充実していれば自然と遠ざかる。

パーマリンク案(英語スラッグ)

empty-yet-full-heart
「空でありながら満ちた心」という両立の妙を表現したスラッグです。

その他の案:

  • open-to-truth-closed-to-vice
  • flexible-and-focused
  • hollow-for-wisdom-solid-against-desire

この章は、精神的成熟における「両極の統合」の重要性を語っています。
現代のように情報や欲望があふれる時代にこそ、受け入れる力と拒む力の両方を持った心構えが求められるのです。

1. 原文

心不可不虛、虛則義理來居。心不可不實、實則物欲不入。


2. 書き下し文

心(こころ)は虚(むな)しからざるべからず。虚しければ、則(すなわ)ち義理(ぎり)来たりて居(お)る。
心は実(じつ)ならざるべからず。実なれば、則ち物欲(ぶつよく)入(い)らず。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ訳す)

  • 心不可不虛、虛則義理來居。
     → 心は常に空っぽである(=偏見や欲望で満たされていない)必要がある。そうすれば、自然と道理や正義(義理)がその中に入ってくる。
  • 心不可不實、實則物欲不入。
     → しかし同時に、心は中身のあるしっかりとした状態でもなければならない。そうしていれば、欲望や邪な思いは入り込むことができない。

4. 用語解説

  • 虚(むなし)い心:先入観や欲望にとらわれない、受け入れられる余白のある心。無私の状態。
  • 義理(ぎり):道義・正理。道徳的な正しさや理にかなった考え方。
  • 実(じつ)な心:確固たる信念や誠実さ、揺るがぬ志を備えた心。
  • 物欲(ぶつよく):物に対する欲望。貪欲・我欲。
  • ※ここでの「虚」と「実」は矛盾でなく、「柔軟さ」と「堅さ」の両立。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

人の心は、余白があってこそ道理が入り込むことができる。だからこそ、心を空(から)にしておく必要がある。
しかし、同時にしっかりと芯が通った心を持たなければ、物への欲望に呑み込まれてしまう。
つまり、「空(むな)しさ」と「実(じつ)さ」、両方を備えた心が必要なのだ。


6. 解釈と現代的意義

この章句は、心の状態における「柔らかさと強さの両立」を説いています。

  • 偏りなく受け入れられる“虚”の心があるからこそ、真理・道理を内に宿すことができる。
  • しかし、内に信念や意思という“実”がなければ、物欲や迷いに流されやすくなる。

これはまさに、知性と感性、柔軟性と一貫性、開かれた心と強い意志のバランスを示す教えです。


7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)

▪ リーダーに求められるのは「受容性」と「信念」の両立

組織の声や社会の変化を受け止める**“空”の姿勢と、判断軸としての“実”の強さ**の両方を持つこと。
片方だけでは、リーダーシップは成立しない。

▪ 学びの心=“空”にして“満たさず”

新しい知識や価値観を受け入れるには、まず心を虚にして先入観をなくす必要がある。
しかし、その学びを自分の中で咀嚼し、信念として確立する“実”がなければ、形だけで終わってしまう。

▪ 欲望を防ぐ最良の防壁は“心の実”

倫理規範・職業意識・ビジョンといった「心の実」がしっかりしていれば、
いかに誘惑があっても、逸脱することはない。価値観の中核を持つことが防御力になる。


8. ビジネス用の心得タイトル

「心を空にして理を受け、心を実にして欲を退けよ──“柔と剛の心”が信を生む」


この章句は、現代のビジネスや教育、リーダーシップ論にも深く通じる「心のバランス学」です。
開かれていて、しかし揺るがない。柔らかく、そして強い。
そのような人格こそが、組織を導き、人々の信頼を得ていくのです。


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