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次の主役は自分――明確な未来が生む社員の活力

L社は、約20のガソリンスタンドを展開する地方の石油販売会社だ。地方都市にありながら、その業績は系列内でトップ10に位置し、収益面ではトップを占めるとさえ言われている。さらなる成長も期待され、あと数年でトップ5、さらにはトップ3入りも見据えた驚異的な勢いを見せている。


地方における異例の業績

都市部に比べて車の保有台数が少ない地方では、1店舗あたりの売上高が低い傾向にある。しかし、L社はそれを覆し、1店舗あたりの売上高で東京を上回る水準を達成している。この業績の裏には、単なる営業努力を超えた独自の経営哲学がある。


高い定着率を生む「未来志向」の経営

ガソリンスタンド業界は労働条件の厳しさから従業員の定着率が低いことで知られる。しかし、L社ではその傾向が当てはまらない。社員の定着率は極めて高く、人手不足に陥ることはほとんどない。採用活動も特別なスカウトや大規模な募集を行わず、必要なときに新聞広告を出す程度で人材が集まるという。

その秘訣は、一見すると「高賃金」にあるように見える。L社では他社に先駆けて昇給を実施しており、「世間より一歩先に進む」という姿勢を貫いている。しかし、それだけではこの定着率を説明するには不十分だ。


社長が語る未来と社員のモチベーション

L社の真の強みは、社長が常に「未来」を語り、それを具体的な計画として実現している点にある。社長との対話では、話題の多くが会社の将来展望に関するものだ。新たに設立される給油所の場所や、その責任者が誰になるのかといった具体的な情報が社員全員に共有されており、透明性の高い経営が行われている。

この「見える未来」が、社員一人ひとりの目標を明確にし、会社への信頼と愛着を生んでいる。社員は「次は自分が給油所長になる番だ」と考え、自分の成長が会社の発展に直接つながることを実感している。その結果、自然と高いモチベーションが引き出されるのだ。


給油所長という「楽しみ」の存在

社員の間では、給油所長というポストが一つの大きな目標となっている。今年新設される3カ所の給油所、来年予定される4カ所の詳細があらかじめ共有されており、「自分がその責任者になる可能性がある」という希望を抱ける環境が整っている。このような「手の届く未来」が、社員の働きがいを高めている。

さらに、給油所長となった後の責任感や期待される成果も、社員の中で意識されている。高い給与に加え、努力次第で昇進が叶うという明確なビジョンがあることで、会社に対する忠誠心と自己成長への意欲が絶え間なく湧き上がっている。


L社が教える「未来の力」

L社の成功は、「未来を語り、それを社員と共有すること」の重要性を示している。給与の高さだけではない。社長が示すビジョンが、社員たちの心を動かし、共に未来を築くという一体感を生んでいるのだ。この経営哲学こそが、L社を他社とは一線を画す存在にしている。

次の給油所長を目指す社員たちが抱く「次は自分の番だ」という希望と覚悟。その意識がL社の成長を支え、不況や競争をものともせず、圧倒的な成果を生み出している。

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