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心から人を思うなら、行動にも慎みが宿る

孔子は、悲しみにある人への思いやりを、ことさら言葉で語るのではなく、行動で示した。
喪中の人の隣で食事をする時には、決して満腹になるまで食べず、
その日、葬儀や法事で涙したなら、どんなに日常であっても歌を口ずさむことはなかった。
それは、場の空気を読むという表面的な配慮ではなく、悲しむ人の気持ちに深く寄り添う姿勢そのもの。
人の痛みに共感するとは、こうして日常のふるまいの中にあらわれるものである。


原文・ふりがな付き引用

子(し)は喪(も)有(あ)る者の側(かたわ)らに食(しょく)するには、未(いま)だ嘗(かつ)て飽(あ)かざるなり。子(し)、是(こ)の日(ひ)に於(お)いて哭(こく)すれば、則(すなわ)ち歌(うた)わず。


注釈

  • 喪有る者の側に食する … 喪中の人とともに食事をする場面。
  • 未嘗飽かざる … 一度も満腹になるまで食べたことはない、つまり控えめに食したという意味。
  • 哭す … 大声で泣くこと。葬儀などで感情を表に出す弔いの儀礼。
  • 歌わず … 日常の楽しみである歌を慎むことで、心の哀しみへの共感を示す。

1. 原文

子食於有喪者之側、未嘗飽也。子於是日哭、則不歌。


2. 書き下し文

子(し)は喪(も)有(あ)る者の側(かたわ)らに食(しょく)するには、未(いま)だ嘗(かつ)て飽(あ)かざるなり。子(し)、是(こ)の日(ひ)に於(お)いて哭(こく)すれば、則(すなわ)ち歌(うた)わず。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ訳)

  • 「子は喪有る者の側に食するには、未だ嘗て飽かざるなり」
     → 孔子は、近くに喪中の者がいる場では、食事を満腹になるまで取ることは決してなかった。
  • 「子、是の日に於いて哭すれば、則ち歌わず」
     → 孔子がその日に弔いの哭(な)きを行った日は、歌を歌うことはしなかった。

4. 用語解説

  • 喪(も)有る者:近親者を亡くして喪に服している人。
  • 飽かざる:満腹になるほど食べない。自制し、慎みを表す。
  • 哭(こく)す:亡くなった人のために泣く儀式。中国古代では葬礼や喪中の儀礼として行われた。
  • 歌(うた)う:儒教では音楽(礼楽)の一環。喜びや祝意を含む行為とされる。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

孔子は、喪中の人のそばで食事をするときには、決して満腹になるまで食べることはなかった。
また、葬儀で哭きを行った日には、歌を歌うことはなかった。


6. 解釈と現代的意義

この章句は、**「他者の感情に対する極めて繊細な配慮」**を示しています。
孔子は、喪中の人の悲しみに共感し、その人に対して配慮ある振る舞いを徹底しました。

これは単なる礼儀の話ではなく、心から相手に寄り添う態度
そして「その場にふさわしいふるまい=“時と場に応じた礼”」の実践例でもあります。

現代的に言えば、感情的・文化的背景を理解し、空気を読むだけでなく、心をこめて行動する人格の深みを表しています。


7. ビジネスにおける解釈と適用

■「共感から始まる礼節」

──形式的マナーではなく、相手の状況・感情に心から配慮する姿勢が信頼の礎となる。

■「“相手中心”のふるまいが、場を整える」

──自分の都合ではなく、相手の状態・場の空気に合わせて行動を整える力は、ビジネスパーソンとしての品格。

■「沈黙・自制こそ、成熟したリーダーの美徳」

──相手が悲しみにあるとき、自分だけが快活に振る舞わない。
“あえて控える”選択が、尊敬される振る舞いとなる。

■「ふさわしさを見極める感性」

──宴席・会議・SNS発信など、すべてにおいて「そのタイミングでそれをするべきか?」という感性を持てる人が、組織の信頼を守る。


8. ビジネス用心得タイトル

「慎みと共感が信頼を築く──“場を読む力”と“心で寄り添う力”」


この章句は、対人関係・リーダーシップ・企業文化における“品格と共感”を高める実践知といえます。

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