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心を揺るがすのは、敵の姿ではなく、縁の重さである


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■引用原文(日本語訳)

「更に、義父、親友たちを見た。両軍の間に。
アルジュナはこれらすべての縁者が立っているのを見て、」
―『バガヴァッド・ギーター』第1章 第27節


■逐語訳(一文ずつ)

  • 「そして(アルジュナは)見た。
  • 義理の父たちや、親しい友人たちまでも、
  • 両軍の間に立っていることを。
  • そして、そこに集まったすべての縁ある者たちの姿を目にした。」

■用語解説

  • 義父(シャシュラーン):妻側の父や親族。血縁ではないが、家族としてのつながりを持つ存在。
  • 親友たち(スゥフリド):心から信頼し合う者、同士とも言える存在。
  • 縁者(バンディーン):広義の家族・親族・知己を含む語。単に戦士ではなく、人間関係に基づく絆を象徴する。
  • 両軍の間:ここでは物理的な“戦場の中間地帯”であると同時に、感情と理性、義と愛の“間”を意味する。

■全体の現代語訳(まとめ)

アルジュナは、戦場に立つのが父や師、兄弟だけでなく、義父や親友たちであることにも気づく。そしてその瞬間、彼の目の前にいるのは「敵兵」ではなく、人生を共に歩んできた「かけがえのない縁者たち」だと強く実感する。ここにおいて、戦いは「他人との争い」から「自分との葛藤」へと本質を変えていく。


■解釈と現代的意義

この節は、アルジュナの心の中にある「縁(つながり)」という概念が、戦場の現実に重なり始める場面です。戦うことは、単に敵を倒すことではなく、「つながりを断ち切ること」にもなるという重大な気づきが、アルジュナを深く揺さぶります。

現代でも、判断の場面で「情」が邪魔だと感じることがあります。しかし本当の問題は、「情があること」ではなく、「情を無視して決断すること」なのです。人とのつながりを直視した上でなお、自分の信じる道を選べるか――それが本当の強さなのです。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点適用例
縁の中での意思決定プロジェクトや経営判断の中で、利害関係者が知人・親戚・元同僚だった場合、意思決定は格段に難しくなる。
感情を伴う判断力冷静さを保つとは「感情を消すこと」ではなく、「感情を知った上で判断すること」である。
人間関係の尊重利害を超えた「人との縁」を大切にする判断軸が、長期的な信頼と組織文化を支える。
リーダーの覚悟組織のトップは、自分に近しい者との間で決断を迫られることもある。そのときに問われるのは「覚悟と透明性」である。

■心得まとめ

「つながりを知る者だけが、正しく断ち切ることができる」
戦場に立つ縁者の姿を見たとき、アルジュナは戦いの意味そのものを疑うようになる。何を守るために戦うのか――それは「縁」そのものかもしれないし、「縁の中で守るべきもの」かもしれない。真の判断は、つながりを理解した上でこそ可能となる。


この節以降、アルジュナの動揺と悲嘆がさらに深まり、「戦えない」という決意に至ります。それは弱さではなく、人間としての誠実さから来る葛藤です。

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