■引用原文(日本語訳)
聖バガヴァットは告げた。
「それは分割されず、しかも万物の中に分割されたかのように存在する。
それは万物を維持し、吞み込み、創造するものであると知らるべきである。」
(『バガヴァッド・ギーター』第13章 第16節)
■逐語訳
それ(ブラフマン/真理)は、本質的には一体(不可分)であるが、
あたかもすべての存在の中に個別に分割されて存在しているかのように見える。
それは世界のすべてを維持し、すべてを吸収して終わらせ、そして再び創造する力でもあると知るべきである。
■用語解説
用語 | 意味 |
---|---|
分割されず(アヴィヴクタ) | 根源的な実在(ブラフマン)は唯一にして全体であり、断片に分かたれることはない。 |
分割されたかのように(ヴィヴクタ・イヴ) | すべての個体(生命・物質)に分かたれて存在するように「見える」現象。 |
維持する(ダーリヤティ) | 宇宙の秩序と存在を保つ力(維持神ヴィシュヌ的側面)。 |
吞み込む(グラナーティ) | 万物を解消・終焉させる力(破壊神シヴァ的側面)。 |
創造する(ウツパーダヤティ) | 世界と生命を生み出す創造力(創造神ブラフマー的側面)。 |
■全体の現代語訳(まとめ)
クリシュナは、知るべき真理とは――
それ自体は一つで分かたれぬものでありながら、無数の存在の中に“分かたれているように”現れていると説く。
それはすべてを保ち、壊し、また創り出す力でもあり、世界のあらゆる活動の根本である。
■解釈と現代的意義
この節は、「本質は一つだが、現象としては多様に現れる」という統一と多様性の同居を示しています。
例えば、一つの太陽が水たまりごとに違う姿で映るように、真理も人ごとに異なるように見えるが、根本は一つである――というヴィジョンです。
また、「創造・維持・破壊」という循環の原理を示すことで、あらゆる変化の中に“見えない秩序”があることを教えています。
■ビジネスにおける解釈と適用
視点 | 解釈と応用例 |
---|---|
多様性の尊重と統一性 | チームの個々人は異なって見えるが、根底にある価値や目的は一つ。そこに立脚することで連携が生まれる。 |
変化の受容 | 組織やプロジェクトには「創造・維持・終焉」のサイクルがある。自然な流れとして受け入れることで、次の成長につながる。 |
戦略的思考 | 目に見える複雑さ(多様性)の背後にある「統一された構造や原則」を理解することで、より大局的な判断が可能になる。 |
リーダーシップ | 状況や人材が変わっても、「全体を維持し、変化を受け入れ、未来を創造する」視点を持つことで、継続的な成長を導ける。 |
■心得まとめ
「一つであり、すべてに在る――その理解が分裂を超える力になる」
『バガヴァッド・ギーター』は、世界のすべては見かけ上バラバラに見えても、
根底では一つの力(真理)がすべてを生み出し、支え、終わらせていると教えています。
この理解があれば、変化や多様性の中にあっても不安に振り回されず、
一貫した価値観と落ち着きの中で、調和と創造のリーダーシップを発揮することができるのです。
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