—— 責任を果たしたうえで、報酬はあとからついてくる
孔子は、主君に仕える者(現代で言えば組織の一員・働き手)の基本姿勢について、こう語りました。
「君主に仕えるには、まずその仕事を敬意をもって真剣に果たすことが大切だ。
報酬や待遇のことを優先して考えるのではなく、後に回すべきである」と。
これは、職業倫理・働く姿勢の原点を説いた言葉です。
真の責任感とは、まず自分の任務に向き合い、それをしっかり果たすこと。
待遇や報酬を先に求めるのではなく、「なすべきことをなす」姿勢こそが信頼と報酬を生むのです。
働く意味を「何がもらえるか」ではなく、「どう貢献するか」に置くこと。
それが、職業人としての真価を高める道だと、孔子は教えています。
原文とふりがな
「子(し)曰(い)わく、君(きみ)に事(つか)うるには、其(そ)の事(こと)を敬(けい)みて、其の食(しょく)を後(のち)にす」
注釈
- 「君に事うる」:君主に仕える。現代では上司や組織、役職への奉仕を指す。
- 「其の事を敬む」:その任務・仕事を尊重し、誠実に取り組むこと。
- 「其の食を後にす」:報酬や待遇(食)を後回しにする。最優先は責任の遂行。
- この章句は、「成果の前に行動、報酬の前に貢献」という働く上での本質的な順序を示している。
パーマリンク候補(英語スラッグ)
duty-before-reward
(報酬より先に責任を)work-first-pay-later
(働いてから報われる)respect-your-role-first
(まず仕事に敬意を)
この心得は、現代のビジネスマナー・公共奉仕・職業倫理・チームワークに深く通じる普遍的な教えです。
「まずやるべきことに集中する」姿勢こそが、信頼と報酬を生む根本です。
1. 原文
子曰、事君敬其事而後其食。
2. 書き下し文
子(し)曰(いわ)く、君(きみ)に事(つか)うるには、其(そ)の事(こと)を敬(けい)みて、其の食(しょく)を後(あと)にす。
3. 現代語訳(逐語/一文ずつ)
- 「君に事うるには」
→ 主君(上司)に仕えるにあたっては、 - 「その事を敬みて」
→ 任務・職務そのものを尊重・真剣に取り組み、 - 「その食を後にす」
→ 自分の報酬や食事(=利益)は後回しにすべきである。
4. 用語解説
- 事君(じくん):主君や上役に仕えること。現代で言えば、上司や組織への奉仕。
- 敬(けい)む:深く尊び、真摯な姿勢で向き合うこと。
- 事(こと):任務・仕事・与えられた職責。
- 食(しょく):食事、転じて俸禄・報酬・対価。
- 後にす:優先順位を下げる。後回しにする。
5. 全体の現代語訳(まとめ)
孔子はこう言った:
「主君に仕えるときには、まず職務に対して敬意をもって真剣に取り組み、
報酬や自分の利益はその後に考えるべきである」。
6. 解釈と現代的意義
この章句は、職務への誠実さと利己心の順序づけを明確に示すものです。
- 義務と責任(事)を第一に置き、報酬(食)は第二とせよという教えであり、
- これは「志をもって働くべきで、打算や損得勘定が先に立ってはならない」とする職業倫理の原則です。
孔子は、ただの“仕えること”ではなく、**どう仕えるか(=誠意と優先順位)**に重点を置いています。
7. ビジネスにおける解釈と適用
◆ 「成果よりもまず、使命に対して誠実であれ」
プロジェクト・職務に取り組む際、最初に問うべきは“この仕事の意味”であり、“いくらもらえるか”ではない。
◆ 「給料より、仕事への敬意を持て」
対価を得るためだけに働くのではなく、その仕事に価値を感じ、誠意をもって取り組む姿勢が信頼を生む。
◆ 「利を追う前に、“事”に心を尽くせ」
「まず何を得られるか」で動くのではなく、「何に尽くすべきか」で動ける人材が、結果として評価も高くなる。
◆ 「貢献ファーストの姿勢がリーダーを育てる」
報酬や地位ではなく、与えられた役割や目的への貢献を最優先する人物こそが、組織を導くにふさわしい。
8. ビジネス用心得タイトル
「報酬より貢献──“職務を敬す”姿勢が信頼を育む」
この章句は、「報酬や地位を目的とせず、使命と職責に真摯に向き合うこと」の大切さを、孔子らしい簡潔さで示しています。
職業倫理研修、管理職トレーニング、若手社員の意識改革など、現代の組織文化においても極めて示唆に富んだ内容です。
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