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善き思いは、心の塵を鎮める雨となる

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原文(第十七章 一七)

つねに善き思考をはたらかせよ。
しかしつねに悪を避けよ。
そうすれば、吹き上げられた塵を雨がしずめるように、
諸の思考と思索とを捨て去るであろう*。

用語解説と逐語訳

  • 善き思考:慈しみ・誠実さ・寛容・正直など、他者にも自分にも害をなさない清らかな心のはたらき。
  • 悪を避ける:貪り・怒り・妄想など、心と行いを濁らせる思いや衝動を慎み離れること。
  • 吹き上げられた塵:煩悩・妄念・雑念の象徴。感情や衝動により乱れた心の状態。
  • 雨がしずめるように:雨が塵を地面に落とし空気を澄ませるように、善き思考と正しい行動が心を鎮めるたとえ。
  • 思考と思索を捨て去る:概念・分別・計らいを超えた、直観的な静けさ・明晰さへ至ること(無分別智・禅定の境地)。

全体の現代語訳(まとめ)

常に善きことを思い、そして常に悪しきことを避けるように心がけなさい。

そうすれば、塵が風に舞い上がっても、雨がそれを静めるように、心の中の混乱した思考やこだわりも、やがて自然に消え去っていくだろう。

解釈と現代的意義

この節は、「日々の思考の質が心の清らかさを決定する」という仏教的な実践法を示しています。

「思考を捨てる」ことがゴールであると聞くと、思考を否定するように聞こえるかもしれませんが、ここで言う「捨てる」とは、混乱や執着から自由になることです。

そのためには、まず 善い思考の習慣をつくり、悪しき思考の入り口を閉じることが第一歩だと教えているのです。

やがて、善き思考の雨が、心に舞い上がった煩悩の塵を自然に鎮めてくれる――
これは、瞑想や精神統一の基本的プロセスにも深く通じるものです。

ビジネスにおける解釈と応用

観点適用例
思考習慣のマネジメント日々の内省・振り返り・感謝の習慣によって、前向きな思考を強化し、自己破壊的な思考を遠ざける。
心理的セルフケア怒りや不安などのネガティブな感情を「思考しないようにする」のではなく、善き意識で包み込むように整える。
チーム内の空気浄化誹謗・批判・不平といった“悪しき思考の流通”を止め、共感・賞賛・目的意識の共有で心の空気を澄ませる。
創造性と集中力の向上思考が整理され、雑念が静まったとき、本来の創造性と判断力が自然に立ち上がってくる。善なる心がその土壌となる。

心得まとめ

善き思いが、心の乱れを沈め、静けさと智慧をもたらす

混乱した心に対して、「考えるな」「止めろ」と命じても、それは逆効果です。
むしろ、穏やかで善き意識を丁寧に育てることこそが、乱れを鎮める本当の道なのです。

現代のストレス社会においても、「悪を避け、善を想う」というシンプルな修養が、もっとも効果的なマインドフルネスであり、深い智慧への入口となるのです。

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