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📖 引用原文(『ダンマパダ』第33章「バラモン」第63偈)
「バラモンを打つな。バラモンはかれ(=打つ人)にたいして怒りを放つな。バラモンを打つものに禍あり。(打たれて)怒る者に禍あり。」
🔍 逐語訳(意訳)
- 「バラモンを打つな」
真に清らかな者を害してはならない。 - 「バラモンは怒りを放つな」
たとえ攻撃されても、怒りによって応じてはならない。 - 「バラモンを打つものに禍あり」
暴力をふるう者には悪果が訪れる。 - 「怒る者にも禍あり」
たとえ正当な怒りであっても、それに囚われる者にも災いは及ぶ。
🧘♂️ 用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
バラモン | ここでは階層制度ではなく、真に修養された聖なる人、煩悩を超えた人を意味します。 |
怒り(コーダ) | 仏教では貪・瞋・痴の「三毒」の一つ。内なる怒りは自己破壊につながる毒とされる。 |
禍(わざわい) | 行為の結果として受ける苦しみ。カルマの観点から因果応報として説かれている。 |
🗣 全体の現代語訳(まとめ)
バラモンという修行者に対して暴力を加えることは、加害者自身に災いを招く。
しかし、修行者であるバラモン自身が怒りによって応じた場合も、またそこには禍がある。
つまり、「加害」も「怒りによる報復」も、どちらも自己を汚し、真の解脱を妨げるという道理が述べられています。
🧭 解釈と現代的意義
この偈が伝えるメッセージは明快です:
- 暴力は明確に否定される
- しかしそれに対する反撃的怒りもまた、煩悩であり堕落である
現代においては、暴力は必ずしも物理的なものとは限りません。
言葉による攻撃や、ネット上での誹謗中傷も含まれます。
「攻撃されたから怒るのは当然だ」
という態度ではなく、
**「怒らずに受け流す成熟」**が本当に強い態度だと説いています。
🏢 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 実践への応用 |
---|---|
非暴力・非対立の精神 | 他者からの批判や理不尽な要求に対して、反射的に怒りで応じるのではなく、冷静かつ沈着に対応する力が、信頼を得る要である。 |
感情的リーダーシップの否定 | 部下や関係者のミスや反発に「怒りで返す」上司は、自らの徳を落とす。対話と理解の姿勢が、真の統率力となる。 |
反応ではなく選択 | 怒りは本能だが、応じるか否かは「選べる」。感情に支配されない選択力が、成熟した人間関係を築く基盤となる。 |
💡 感興のことば:心得まとめ
「怒りをもって応じるなかれ――清らかなる者よ」
攻撃されて怒るのは、自然なことかもしれない。
だが、そこで「怒らない」という選択ができる者だけが、
真に自由で、徳ある存在となる。加害者は自らに業(カルマ)を積む。
しかし、それに怒りで応じる者も、また苦の輪に巻き込まれる。怒りに勝つ者こそ、真に勝利した者である。
この偈は、「感情のコントロール」や「反応と応答の違い」について
深く考えさせる、非常に実践的な教えです。
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