目次
📜 引用原文
第一四章 憎しみ 一
「悪い行ないをなさず怒ってもいない人に対して怒るならば、
この世においても、かの世においても、その人は苦しみを受ける。」
— 『ダンマパダ』
🔍 逐語訳
悪い行いをしていない者に対して、
その人が怒ってもいないのに、怒りを向けるならば、
その者(怒りを向けた側)は、この世でも、死後の世でも、
その報いとして苦しみを味わうであろう。
🧩 用語解説
- 悪い行ない:倫理や道徳に反する行為。仏教においては殺生・偸盗・妄語などがこれに該当。
- 怒ってもいない人:感情的に反応せず、静かに振る舞う人。理性ある者。
- この世・かの世:現世と来世。仏教では因果応報が来世にも及ぶと考える。
- 苦しみを受ける:業(カルマ)の結果としての精神的・身体的な苦痛。
🧾 全体の現代語訳(まとめ)
自ら悪事を働かず、怒りを表すこともない穏やかな人に対して、
不当な怒りをぶつけるような者は、その行為の因果によって、
現世でも来世でも、相応の苦しみを味わうことになる。
――仏陀は、理不尽な怒りは、結局その人自身を滅ぼすと教えている。
🧠 解釈と現代的意義
この章句は「無実の者に向けられた怒り」は、
理不尽であるだけでなく、怒りを抱いた者自身を損なうと説いています。
人間関係における誤解、嫉妬、感情的反応は、しばしば無害な相手に向かいます。
しかし、そうした怒りはやがて自らを苦しめる――それがこの教えの核心です。
この言葉は、正しい相手に、正しい理由で、正しい方法で向き合えという
自己統制の教訓であるとも言えるでしょう。
💼 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 実務での活用例 |
---|---|
感情マネジメント | 部下や同僚の過失でなく、自分のストレスを相手にぶつけていないかを内省する。感情のコントロールが成熟の証となる。 |
評価と公正性 | 相手の意図や背景を理解せずに、表面的な反応で裁断しない。事実に基づいた冷静な判断を心がける。 |
信頼構築 | 不当な怒りを向けられた人は深く傷つく。理不尽な言動は長期的な信頼を崩壊させることを認識する。 |
リーダーシップ | 自分が怒りを向けられたとしても、相手の感情に巻き込まれず、穏やかに対応することが組織の安定をもたらす。 |
🧭 心得まとめ
「怒りは敵を倒さず、己を滅ぼす」
人は怒りを「正義」や「防衛本能」と混同しがちですが、
無実の者に対する怒りは、自らに悪業の種を蒔くことにほかなりません。
職場でも家庭でも、まず自分の心を静め、
本当に怒るべきことなのかを見極める冷静さこそ、
信頼と成長をもたらす道である――それが『ダンマパダ』の教えです。
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