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📜 引用原文(日本語訳)
「知識ある人も、自分の本性にふさわしく行動する。
万物はその本性に従う。制止して何になろうか。」
(『バガヴァッド・ギーター』第3章 第33節)
🔍 逐語訳
「知識を持つ者(jñānavān)であっても、
自らの生まれ持った性質(svabhāva)に従って行動する。
あらゆる存在(sattvāni)は各々の本性に従って動く。
それを抑えようとして何の意味があるだろうか?」
🧩 用語解説
- 知識ある人(jñānavān):精神的・哲学的に高い理解を持つ者。
- 本性(svabhāva):個人が生まれ持った傾向、資質、気質。カルマやグナ(性質)の組み合わせに由来する。
- 万物(sattvāni):人間に限らず、すべての存在・生物。
- 制止(nigrahaḥ):無理やりに抑制すること。外的な力によって自然の傾向を押し止める行為。
🗣 全体の現代語訳(まとめ)
たとえ知識を持つ人であっても、
自分の生まれ持った性質に従って行動するものである。
すべての存在は、その本来の性質に応じて自然に動いており、
それを無理に抑え込もうとしても、意味はない――とクリシュナは説いています。
つまり、悟りや知識は本性の否定ではなく、むしろ理解と調和の中にあるべきだという教えです。
💡 解釈と現代的意義
この節は、自己理解と自己受容の重要性を説いています。
人にはそれぞれ、向き不向き、情熱、気質、能力の違いがあり、
それを否定して無理に他者に合わせたり、自分を押し殺して生きることは、
かえって苦しみと葛藤を生むだけなのです。
悟りとは本性の否定ではなく、本性を知った上で、それと調和した行為をすること。
自分の強み・性格・傾向を理解して、それを社会的な貢献に活かすことが、
自然で持続的な道となります。
🏢 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
適材適所と組織設計 | 向いていない仕事に人を無理やり当てても成果は出ず、本人も苦しむ。個性に合った役割分担が重要。 |
キャリア形成 | 「自分に向いていないけれど頑張る」よりも、自分の性質を理解し、それに合う形で社会に貢献する方が充実する。 |
マネジメントと動機づけ | 部下の性格や志向を理解し、それに応じた育成・指導を行えば、能力は自然に伸びていく。 |
自己受容と成長 | 苦手な面ばかりを矯正しようとせず、得意な面を活かすことで、前向きな成長が実現する。 |
🧠 心得まとめ
「本性は抑えるものではなく、活かすものである」
自分の中にある性質――
それは失くすべき欠点ではなく、
磨き、活かし、貢献するための資質。
悟りとは、
自分を否定せずに受け入れ、
そのままの自分で役立つ術を知ることなのだ。
この節は、これまでの「教えに従うか否か」という外的態度に対し、
「人は内的にどう動くか=本性に従う」という視点を示し、
今後の章(とくに第18章のスヴァバーヴァ=天性の教え)につながる重要な基盤です。
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