■ 引用原文(日本語訳)
下劣なしかたになじむな。怠けて人々とともにふわふわと暮すな。
邪な見解をいだくな。世俗のわずらいをふやすな。
――『ダンマパダ』第四章「はげみ」第8節
■ 逐語訳(一文ずつ現代語訳)
- 下劣な生き方に親しんではならない。
品性を失うような行動、欲望にまみれた生活習慣に染まるな。 - 怠惰になり、人とともにふらふらと流されるように暮らすな。
周囲に流されて惰性で生きるような、意志なき生活を避けよ。 - 誤った考えを持ってはならない。
真理から外れた見解や、自己正当化の論理を信じてはならぬ。 - 世俗的な煩わしさを自ら増やすな。
執着・欲望・名声・比較など、自分で苦しみの種を増やすな。
■ 用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
下劣なしかた(ヒーナヨーニ) | 品性のない、低俗な振る舞い。倫理や道義を欠いた生き方。 |
ふわふわと暮す(サンガ・サラ) | 意志なく流されて生きること。惰性的で責任感に欠ける暮らし。 |
邪見(ミッチャー・ディッティ) | 真理に反する考え方。自己中心的・短絡的な世界観。 |
世俗の煩い(ローカ・ウパディ) | 所有・地位・人間関係などに対する執着が生む悩み。 |
■ 全体の現代語訳(まとめ)
品格のない行いに親しんではならない。
怠けて他人とともに惰性で暮らしてはならない。
正しくない考えに染まってはならない。
また、自らの執着によって世俗的な悩みを増やしてはならない。
これは、精神的な堕落から自らを守るための、力強い自戒の言葉である。
■ 解釈と現代的意義
この節は、現代にも通じる「内なる堕落への警告」です。
社会的に許されているからといって、心が曇るような行動に馴染んではならず、
周囲に合わせて惰性で生きることは、知らぬ間に自分を蝕む生き方になってしまいます。
また、誤った価値観や思考にとらわれると、知らぬうちに人生の質を大きく損ねるのです。
この節は、己の思考・行動・心を絶えず整えることの大切さを語っています。
■ ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
倫理観と誠実性 | 利益や立場を優先して道義に反する行動をとらない。小さな妥協が大きな信用失墜に繋がる。 |
同調圧力への対処 | 周囲の惰性や流れに巻き込まれず、自分の軸で意思決定を行うことが信頼を生む。 |
思考の健全性 | 短絡的・利己的な考えに流されず、長期的な視点で善悪・正否を判断する力が求められる。 |
タスクと煩雑さの整理 | 不必要な業務・人間関係・欲望に囚われず、シンプルで本質的な仕事に集中する習慣を持つ。 |
■ 心得まとめ
「怠惰に流されるな、誤りに染まるな。心を清く、自らを律せよ」
他人や環境に流されるのではなく、自らの良心と真理に従って歩むべし。
低俗さ、惰性、誤った見解、執着――それらは心の沈みゆく錘となる。
ビジネスにおいても、日常においても、
一つひとつの選択に「品格と自律」をもって臨むことが、真の道を歩む第一歩である。
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