孔子の弟子・冉求(ぜんきゅう)は、あるときこう言った。
「私は先生の教えに感動し、それを喜んで学んでおります。ですが、自分には力が足りず、ついていけません」
それを聞いた孔子は、明確な言葉で返した。
「もし本当に力がないのであれば、やがて道半ばで倒れてしまうだろう。
だが今のお前は、そこにたどり着く前に、自分で『このくらいが限界だ』と線を引いてやめてしまっている。
それは力が尽きたのではなく、自分で限界を決めたに過ぎないのだ」
これは、私たちがしばしば陥りがちな「自己限定」への厳しくも温かい警鐘である。
本当の力の限界は、歩みを止めたその先にある。
挑戦をやめてしまえば、それ以上の自分には出会えない。
孔子がここで伝えたのは、能力の有無ではなく、姿勢の問題。
たとえ未熟でも、歩き続ける者だけが進化する。
だからこそ、「自分には無理だ」とあきらめる前に、せめて「そこまでやりきったか?」と自分に問うてみるべきなのだ。
ふりがな付き原文
冉求(ぜんきゅう)曰(いわ)く、子(し)の道(みち)を説(よろこ)ばざるに非(あら)ず、力(ちから)足(た)らざるなり。
子(し)曰(いわ)く、力の足らざる者は、中道(ちゅうどう)にして廃(はい)す。
今(いま)、女(なんじ)は画(かぎ)る。
注釈
- 冉求(ぜんきゅう):孔子の弟子。多才で実務にも長けていたが、自分に厳しい性格であった。
- 中道にして廃す:本当に力が尽きた者は、道半ばでやむを得ず挫折するという意味。
- 画る(かぎる):自分で限界を線引きして、そこまでと決めてしまうこと。自己制限。
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