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悪の記憶は、心を離れず


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■引用原文(日本語訳)

三二
悪いことをしたならば、ひとは憂える。
ずっと昔にしたことだとか、
遠いところでしたことであっても、ひとは憂える。
秘密のうちにしたことであっても、ひとは憂える。
それの報いがあるのだから、ひとは憂える。
―『ダンマパダ』より


■逐語訳

  • 悪いことをしたならば、ひとは憂える:人は悪行の結果として、遅かれ早かれ後悔や不安を感じる。
  • ずっと昔・遠く・秘密でも:時間・場所・他人の知覚を超えても、その行為は自らの心に影響を残す。
  • 報いがあるから憂える:仏教における因果律により、どんな悪も影響から逃れられず、心を曇らせる。

■用語解説

  • 憂える(うれえる):後悔、不安、恐れ、罪悪感などの心の苦しみ。
  • 報い(むくい):自らの行為によって引き起こされる精神的・環境的な影響。
  • 秘密のうちにしたこと:誰にも知られていないと自分では思っていても、心の奥底では残っている行い。

■全体の現代語訳(まとめ)

どんなに昔のことでも、遠く離れた場所で行われたことでも、あるいは誰にも知られていないとしても、
悪いことをしたという事実は、必ず自分の心に影を落とし、悔いや不安を引き起こす。
その行為には報いがあるため、人は自らの悪行に対して苦しむのである。


■解釈と現代的意義

この偈は、悪行は忘れても、心は忘れないという仏教の深い心理観を表しています。
外的な罰がなくとも、自己の内面に苦しみが残ること――それが「報い」の真実です。
秘密にした悪行でも、その人の無意識や価値観に負の影響を与え、
やがて「人生の選択・幸福感・人間関係」すら狂わせる原因になります。
つまり、「悪を行なうことそのものが、苦しみをつくる行為」なのです。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点応用例
内的誠実さ不正・誤魔化し・嘘などは、表面的にうまくいっても、後で必ず自己不信や葛藤を生む。
良心の重み曖昧なルール運用や不誠実な契約対応は、後になって自らの判断への信頼を揺るがせる。
心の健全性自分だけが知っているズルや欺きは、ストレスや不安・罪悪感となり、集中力や創造力を奪う。
組織文化組織内で「バレなければいい」という風潮が蔓延すると、個々の心に慢性的な憂いを残し、活力が削がれる。

■心得まとめ

「隠した悪は、心の奥で錆となる」
どんなに巧妙に隠しても、
どんなに遠く、昔のことでも、
あなたの心は、その悪を覚えている。
その記憶は、不安・罪・恐れとなって、
静かに、確実に、あなたを蝕む。
だからこそ、悪を遠ざけよ。
清らかな心こそが、ほんとうの安らぎをもたらすのだから。


この偈は「企業倫理」「誠実なリーダーシップ」「心のマネジメント」にも応用できる重要な教えです。

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