■ 引用原文(日本語訳)
放逸に耽るな。愛欲と歓楽に親しむな。
おこたることなく思念をこらす者は、不動の楽しみを得る。
――『ダンマパダ』第四章「はげみ」第12節
■ 逐語訳(一文ずつ現代語訳)
- 放逸(怠惰)にふけってはならない。
精神の緊張をゆるめて怠惰に流される生き方を慎め。 - 愛欲や感覚的な快楽に親しんではならない。
刹那的な快楽、欲望を満たすことを生きる目的としてはならない。 - 怠ることなく、思念(マインドフルネス)を深める者は、
気を抜かずに、心を見つめ、観察することを日々の修行とする者は、 - やがて不動の楽しみ(究極の平安)に至る。
一時の快楽ではない、揺らがぬ幸福と心の静けさを得ることができる。
■ 用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
放逸(パーマーダ) | 注意力・節制の欠如。精神の弛緩、怠慢な生活状態。 |
愛欲・歓楽(カーマ) | 五感による快楽。欲望に基づく一時的な喜び。 |
思念をこらす(サティン・ウパッタナ) | マインドフルネス、自己観察、気づきを維持する実践。 |
不動の楽しみ(アカンパ・スッカ) | 動揺しない安らぎ。涅槃や心の深い平安を指す。 |
■ 全体の現代語訳(まとめ)
怠惰や愛欲に流されてはいけない。
一時的な快楽では、真の幸福は得られない。
日々、心を見つめ、怠ることなく気づきを保ち続ける者は、
やがて、揺らぎのない静かな安らぎ――それこそが本物の幸福に到達する。
■ 解釈と現代的意義
この節は、「快楽中心の生き方が、真の幸福から遠ざける」という厳しいが深い教えです。
日常生活の中で私たちは、誘惑や刺激に満ちた環境に晒されています。
しかし、それに流されるのではなく、気づきをもって自分の内面を観察し続けることで、
一時的な快ではなく、永続的な心の平安を得ることができる――これが仏教の智慧です。
■ ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
衝動のコントロール | 成果やご褒美ばかりを追いかけると短期思考に陥る。継続的な行動と意識的な判断が重要。 |
マインドフルネスの実践 | 心の状態を常に観察し、「何に反応しやすいか」を自覚することで冷静な判断力が育つ。 |
安定した意思決定 | 外的な変化や誘惑に左右されず、落ち着いて物事を選択できる人は、組織において信頼される。 |
働き方の質向上 | 楽な仕事・楽な道を選ぶのではなく、意味ある働き方を継続することが、やがて深い満足を生む。 |
■ 心得まとめ
「刹那の快を追うな。静かなる悦びを育てよ。」
怠惰と快楽の道は、一見楽だが、やがて心を疲弊させる。
反対に、静けさと気づきをもって歩む道は、揺るぎなき平安へと導いてくれる。
本当の楽しみとは、外にあるのではなく、整った心の内にあるのです。
次節(第十
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