つまらない小人物(しょうじんぶつ)――つまり、自己中心的で偏狭な小人とケンカをしても意味はない。
なぜなら、彼らには彼らと同じレベルの者が自然と争いの相手として現れるものだからである。
人格のある者がわざわざそこに降りて行って争う必要はない。
また、立派な人格を持つ君子に対して、こびへつらったところで何も得られない。
なぜなら、君子はもとよりえこひいきや私的な便宜をはからないからである。
公平と道理に従って行動する人間は、媚びに動かされることなどない。
つまり――
- つまらぬ相手には関わらない
- 高潔な人には取り入らない
これが人間関係における自律と品格を守るための基本的姿勢である。
『論語』でも、「君子は説ばし易からず」と述べられているように、君子は道理を重んじるがゆえに、媚びを受け入れない。
原文(ふりがな付き)
「小人(しょうじん)と仇讐(きゅうしゅう)することを休(や)めよ。
小人は自(みずか)ら対頭(たいとう)有(あ)り。
君子(くんし)に向(む)かって謟媚(とうび)することを休めよ。
君子は原(はら)より私恵(しけい)無し。」
注釈
- 仇讐(きゅうしゅう):敵対すること。ケンカ・争い。
- 対頭(たいとう):同等の相手。ここでは「小人には小人がふさわしい」との意。
- 謟媚(とうび):へつらい、媚びること。表面的な取り入り。
- 私恵(しけい):えこひいき。私的な恩恵や便宜。
パーマリンク候補(英語スラッグ)
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(愚人と争うな、賢人に媚びるな)preserve-dignity-in-relationships
(関係における品位を守れ)high-road-over-petty-battles
(低俗な争いより高潔な道を)
この条は、現代の職場・組織・人間関係にも深く通じます。
不毛な争いに巻き込まれず、上の人間に媚びて生きないこと――これは、自らの品格を保ち、誠実な人生を歩むための基盤です。
自分の立つべき場所と、守るべき美徳を見失わないことこそ、長い目で見たときにもっとも強く、信頼される人間の在り方なのです。
1. 原文
休與小人仇讐、小人自有對頭。
休向君子謟媚、君子原無私惠。
2. 書き下し文
小人と仇讐(きゅうしゅう)することを休(や)めよ。小人は自(おの)ずから対頭(たいとう)有り。
君子に向かって謟媚(とうび)することを休めよ。君子は原(はじめ)より私惠(しけい)無し。
3. 現代語訳(逐語訳/一文ずつ訳)
- 「つまらぬ人(小人)と憎しみ合うことはやめなさい。彼らには自然に敵が現れるものだ」
→ 愚かな者に関わらずとも、彼ら自身が報いを受ける。 - 「立派な人(君子)におべっかを使うのもやめなさい。そうした人はそもそも私情で恩を与えたりしない」
→ 真の人格者は、個人的な媚びやお世辞では動かない。
4. 用語解説
- 小人(しょうじん):度量が狭く、自己中心的で利己的な人物。
- 仇讐(きゅうしゅう):恨みや憎しみを持って敵対すること。
- 對頭(たいとう):自然と争う相手、または報いを与える存在。
- 君子(くんし):人格・徳行の優れた人物。正義と節度を持った者。
- 謟媚(とうび):へつらい、取り入ろうとする行為。
- 私惠(しけい):私的な恩恵。個人的な好みによって施される利益。
5. 全体の現代語訳(まとめ)
つまらぬ人物と争うのはやめよう。彼らは放っておいても自然と報いを受けるものだ。
また、高潔な人物におべっかを使うのも無意味である。そうした人は、私的な好意で恩を施すことなどしないからだ。
6. 解釈と現代的意義
この章句は、**「無駄な争いを避け、真の人格者には誠実であれ」**という対人関係の知恵を伝えています。
- 愚かで利己的な人に立ち向かうことは、同じ土俵に下るだけ。時間と精神の浪費になる。
- 一方で、誠実で高潔な人には、媚びずに真心で接すべき。誠意は媚びへつらいとは違う。
争いを避ける智恵と、尊敬すべき人物への接し方のバランス感覚が示された一節です。
7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)
●「無益な対立からは距離を取れ」
- 社内や業界で問題行動を繰り返す人と争っても、自己の価値を下げるだけ。
- 小人は自然と孤立し、結果を招く。エネルギーは建設的な方向へ使うべき。
●「高潔なリーダーには正面から誠実に接する」
- 媚びや忖度では信頼されず、かえって軽んじられる。
- 君子は理非によって判断する。自らの行動を正し、誠意をもって対応することが結果的に認められる道。
●「組織文化の視点」
- 対立を煽る人物を放置せず、制度や周囲が自然にバランスをとるよう設計されていれば、“対頭”は自ずと現れる。
- 上司が“私惠”で人を引き上げる組織ではなく、“公正な評価”で評価される文化が、健全な組織をつくる。
8. ビジネス用の心得タイトル
「争わず、媚びず──人を見る目と距離感の知恵」
この章句は、感情的対立を避け、誠実な関係を築くための冷静で成熟した対人観を示しています。
- 感情に任せて衝突するのではなく、理性と距離感を持って関わる。
- 真に尊敬すべき人とは、媚びへつらいではなく、自己の誠でつながる。
これは、職場の人間関係、顧客対応、組織リーダーシップにおいてきわめて重要な教訓です。
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