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■引用原文(『ダンマパダ』第十三章 第171偈)
さあ、この世の中を見よ。王者の車のように美麗である。愚者はそこに耽(ふけ)するが、心ある人はそれに執著しない。
― 『ダンマパダ』第171偈(中村元訳)
■逐語訳(逐文的な意味の解釈)
- さあ、この世の中を見よ:まず、冷静に世界の姿をよく観察せよ。
- 王者の車のように美麗である:外見は壮麗で魅力的であり、まるで王の乗る豪華な馬車のように映る。
- 愚者はそこに耽する:知恵なき者はその美しさに心を奪われ、夢中になる。
- 心ある人はそれに執著しない:智慧ある者(真理を求める者)は、その見かけの美しさに囚われず、本質に目を向ける。
■用語解説
- 王者の車:権力・富・栄光・美などを象徴する、豪華さと威厳の象徴。
- 耽する(ふける):没頭し、心を奪われること。分別を失って執着する状態。
- 心ある人(パンディタ/慧者):分別と洞察を備えた者。仏教的には「正見」を持つ人。
- 執著しない:魅力に気づきつつも、心をとらわれず、超然と受け止める態度。
■全体の現代語訳(まとめ)
「さあ、この世の真の姿をよく見よ。それは王の車のように外見は美しく、魅力的に映る。だが、愚かな者はその見かけに耽溺してしまう。賢明な人は、そうした外見に心をとらわれることなく、その背後にある無常や本質を見つめる。」
――この偈は、表面的な美や成功に惑わされずに、本質を見る心を育むことを促している。
■解釈と現代的意義
現代社会は「視覚的魅力」「ブランド価値」「SNS映え」など、外見的価値に強く傾きがちです。
しかし、この偈は明確に警告します――美しいからといって、それに耽るのは愚かであると。
本当に「心ある人」は、美しさを認識しつつも、それに心を支配されない。
見かけの価値よりも「中身」や「行い」、あるいは「真理」に重きを置いて生きている。
これは、現代の情報過多・誘惑過剰な世界を生き抜くための、極めて現代的な智慧です。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
ブランドや見栄に溺れない | 高級感や外見に惑わされず、実質的な価値や信頼性で判断することが重要。 |
派手な成功に執着しない | 一時的な話題性や売上に浮かれず、長期的な信頼や使命に集中する。 |
採用・人間関係の見極め | 表面の印象や経歴に惑わされず、人間性や誠実さを見抜く眼を持つこと。 |
マーケティング視点の調整 | 見た目や演出よりも、本質的な価値を誠実に伝えることで、顧客との深い関係を築く。 |
■心得まとめ
「美しさに酔うな、本質を見よ」
『ダンマパダ』は教えます。
この世はまばゆい魅力に満ちている。しかし、その魅力に酔いしれれば、真理を見失い、心は迷いに満ちる。
逆に、心ある者はその輝きに敬意を持ちつつも、それに囚われず、静かに、真っ直ぐに、自分の道を歩むのです。
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