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顕れ、去りゆくものに、執着せず嘆かず


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■原文(日本語訳)

第2章 第28節
クリシュナは言った。
「万物は、初めは顕現せず、中間が顕現し、終りは顕現しない。
ここにおいて、何の嘆きがあろうか。」


■逐語訳

  • 初めは顕現せず(アヴィヤクターニ・ブーターニ):すべての存在は、最初は目に見えず、潜在している状態から始まる。
  • 中間が顕現し(ヴィヤクタ・マドヒヤーニ):途中で顕現し、姿や形を現す。
  • 終わりは顕現しない(アヴィヤクタ・ニダーナニ):最終的には再び見えない状態に戻る。
  • ここにおいて何の嘆きがあろうか(タトラ・カー・パリデヴァナー):この自然の摂理に対して、なぜ悲しむ必要があるのか。

■用語解説

  • アヴィヤクタ(非顕現):五感によって認識されない状態。形がなく、潜在的であること。
  • ヴィヤクタ(顕現):形や作用を伴い、目に見える状態。現象世界に現れたもの。
  • パリデヴァナー(嘆き):喪失・変化・消滅に対する感情的反応、執着から来る悲しみ。

■全体の現代語訳(まとめ)

クリシュナはこう語ります。
「すべての存在は、元は目に見えない状態から始まり、
一時的に目に見える形をとって現れ、やがてまた見えなくなる。

この自然な流れにおいて、何を嘆く必要があるのか?」

つまり、「現れること」と「消えること」は常であり、そこに執着するのは無意味であるという真理を示しています。


■解釈と現代的意義

この節は、すべての現象(人・物・関係・状況)が「一時的に姿を見せては、また去っていく」ことを静かに教えています。

現代では、見えるもの・数値化できるものに価値を置きがちですが、
ギーターは「見えることは一時的、見えないことに真の本質がある」と語ります。

人生の現象に対して「現れた」「消えた」と一喜一憂するのではなく、
背後の不変なるものを観る目を養うことの大切さを教えているのです。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点解釈と応用例
プロジェクトの一過性の理解すべてのプロジェクトや製品は一時的な「顕現」。成功や終焉に過度に執着せず、流れを受け入れる。
数値・成果に過剰反応しない業績や数字は一時的に「見える」ものにすぎず、本質的な価値を見失わないことが重要。
無常を前提とした戦略形成どんな状況もやがて変化するという前提で、柔軟でレジリエンスある組織運営が可能になる。
リーダーとしての俯瞰的視点見えないところから始まり、また消えていくことを理解することで、冷静で動じない判断ができる。

■心得まとめ

「現れるものは、やがて去る。執着は手放し、流れを受け容れよ」
どんなに愛しい存在も、どれほど誇らしい成果も、
この世界に現れるものはすべて、やがて見えなくなる定めにあります。

だからこそ、今この瞬間を、過不足なく味わい尽くすことに価値がある。
嘆きではなく、受容と感謝の心を持つことが、変化の中で自由に生きる智慧です。


次の第29節では、「魂をどう見るか」に関する人々の多様な視点――驚き、理解不能、語っても理解されぬ存在としての魂――が語られます。

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