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ならぬことはならぬ、それが君子の道

孟子は、してはならないことをしない、欲してはならないことを欲しないことが、君子の道であると教えた。それだけのことだと言い切っており、道徳の本質は非常にシンプルであると述べている。自分の行動に対して常に基準を持ち、何がすべきことで、何がしてはならないことかをしっかりと認識することが、君子としての道を歩むために重要である。

「孟子曰(もうし)く、其の為さざる所を為すこと無く、其の欲せざる所を欲すること無し。此の如きのみ」

「してはならないことをしない、欲してはならないことを欲しない。それだけのことだ」

君子の道は、何をするべきか、何をしないべきかをしっかり理解し、行動することに尽きる。

※注:

「為さざる所」…してはならないこと。
「欲せざる所」…欲してはならないこと。

目次

『孟子』 告子章句(上)より


1. 原文

孟子曰、無為其不為、無欲其不欲、如此而已矣。


2. 書き下し文

孟子曰(いわ)く、其(そ)の為(な)さざる所を為すこと無く、其の欲(ほっ)せざる所を欲すること無し。此(か)くの如きのみ。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ)

  • 「無為其不為」
     → 本来やるべきでないことを、無理にやってはならない。
  • 「無欲其不欲」
     → 本来自分が欲しないものを、欲しがってはならない。
  • 「如此而已矣」
     → ただそれだけのことである(とてもシンプルなことだ)。

4. 用語解説

  • 不為(ふい):道理に反して為すべきでない行為。たとえば、不正・無理・嘘・強欲など。
  • 不欲(ふよく):人間本来の良心・本性が望まないもの。外的誘惑・虚栄・不当な利益など。
  • 如此(じょし):このようであること。この姿勢。
  • 而已矣(じい):「それだけのことだ」と事の簡潔さを強調する語尾。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

孟子はこう言った:
「人は、自分が本来やるべきでないことを無理にやろうとしてはならず、
また、自分が本当に欲していないものを無理に欲しがってもいけない。
ただそれだけのことだ。」


6. 解釈と現代的意義

この章句は、孟子の**「性善説」**と「自己の本性に従うことの大切さ」をシンプルに説いた教えです。

  • 「善なる本性に従えば、過ちは起こらない」
     孟子は、人間には生まれながらに良知・良能が備わっていると考え、それを歪める原因は「不自然な欲望」や「無理な行動」であると見ます。
  • 「自然に従う」ことが倫理であり、自由である
     自分の内なる感覚=良心・良知に反しない生き方こそが、もっとも調和のとれた生き方である。
  • シンプルであることの強さ
     「これだけでよい」と孟子が断言するところに、道徳や生き方の本質的な簡明さと、深い自信がうかがえます。

7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)

「無理にやらない」「無理に求めない」が判断の基準になる

  • 誠実でないプレゼン、心から共感していない商品提案などは、結局“本気”になれない。
  • 本心に反して行動するより、「これはやらない」「これは求めない」と決めることが、信頼の起点になる。

「欲しないものを欲しがらない」=“不要な競争”から自由になる

  • 昇進・名声・高報酬などを“社会的に正解だから”という理由で求めても、自分の本質とかけ離れていれば空虚に終わる。
  • 自分にとって本当に価値あるものは何か?という問い直しがキャリア形成の土台。

「やらない勇気」=長期的な成功の鍵

  • ストレスフルな取引・倫理に反する顧客との関係など、“やらない”ことを選ぶ決断も、真のプロフェッショナリズム。
  • シンプルな判断基準が、複雑な状況でも自分を守る盾となる。

8. ビジネス用の心得タイトル

「“しない”と“欲しない”が、ブレない力を生む」──自分の軸で選ぶ勇気


この章句は、複雑な社会の中で「本質に従うこと」の価値を再確認させてくれます。
孟子は、人が迷うときは「やりすぎ」「求めすぎ」が原因であると見抜いており、そこから自分を解放する鍵として、「しない・欲しない」というシンプルな知恵を提示しています。

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