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易きに流れず、難きを為せ


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■引用原文(日本語訳)

一六*
善からぬこと、己れのためにならぬことはなし易い。
ためになることで、しかも健全なことは、実に極めてなし難い。
―『ダンマパダ』より


■逐語訳

  • 善からぬこと:道徳的・精神的に良くない行い。欲望や怠惰など。
  • 己れのためにならぬこと:短期的には快楽があっても、長期的には自分を損なうような行為。
  • なし易い:誘惑されやすく、抵抗せずとも流されてしまう行動。
  • ためになることで、しかも健全なこと:人格を高め、心身ともに有益で、他者にも良い影響を与えるような行為。
  • 極めてなし難い:自律・勇気・努力が求められ、容易には実践できない。

■用語解説

  • 善からぬこと:例えば愚痴・怒り・怠慢・欺瞞など。人としての品性を下げる行為。
  • ためになること:自己成長・長期的幸福・信頼の構築・他者への貢献。
  • 健全なこと:道徳的にも正しく、精神的にも安定と調和をもたらす行動。
  • なし難さ:困難さは行動自体よりも「心の向き方」にある。習慣・感情・煩悩との闘い。

■全体の現代語訳(まとめ)

人は悪いことや自分のためにならないようなことほど、簡単に手を染めてしまうものだ。
反対に、自分にとって本当に有益で、しかも正しく健やかなことは、非常に実行が難しい。
だが、だからこそ、その道を選ぶ者には価値がある。


■解釈と現代的意義

この偈は、「楽な道と正しい道の違い」を端的に表しています。
私たちはしばしば、「わかっているけれどできない」ことに直面します。
その原因は、正しいことが本質的に困難だからです。努力が必要で、時に痛みも伴います。
しかし、安易に流れてしまえば、成長も信頼も得られません。
本当に価値ある行動は「選びにくく、続けにくい」。だからこそ、それを選ぶ者は尊いのです。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点応用例
意思決定短期的な成果ではなく、長期的利益や倫理を重んじる判断は難しいが、信頼と持続可能性を築く。
組織文化批判せずに陰口を言うことは易しく、正面から対話することは難しいが、後者が健全な文化を育てる。
個人の習慣サボるのは簡単、習慣を守るのは困難。しかし前者は後悔を、後者は誇りをもたらす。
リーダーシップ人気を取ることは易しく、厳しくても正しい方針を掲げ続けることは難しい。しかしそれが真の導き手である。

■心得まとめ

「難しきことにこそ、意味がある」
易しいからといって、それが善とは限らない。
難しいからこそ、そこに成長と価値が宿る。
――「正しいが難しい道」を、静かに、誠実に選び続けること。
それが、真の強さであり、人生を磨く道なのです。


この偈は「自律訓練」「長期思考」「美徳の実践」などに関連し、教育・研修や習慣形成プログラムにも応用可能です。

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