目次
📜 引用原文(日本語訳)
二〇
苦しみと苦しみの起る本(もと)を知る人は*、どうして愛欲を楽しむであろうか?
思慮ある人は、世間における絆を棘であると考えて、
それを制し、導くために修学すべし。
――以上、第二章 愛欲
📖 逐語訳(意訳含む)
- この世の苦しみ、そしてその苦しみの「原因」を知る人が、
- どうしてなおも愛欲に溺れ、快楽に耽ることができようか?
- 思慮ある人は、世の中の絆――すなわち愛執や欲望の関係を、
- 心に刺さる棘のようなものと見なして、
- それを克服し、心を導くために、修行と学びに努めるのである。
🧩 用語解説
- 苦しみとその起る本(もと):仏教でいう「四諦」のうち、苦諦と集諦。苦しみの存在と、それがどこから来るか(主に欲や執着)。
- 愛欲(あいよく):感覚的快楽・対象への執着。仏教では苦しみの根源とされる。
- 絆(きずな):ここでは人間関係の愛執や依存的なつながり。善意の絆ではなく、「束縛」としての意味。
- 棘(とげ):痛みや苦しみをもたらす、潜在的に危険なものの比喩。
- 制し・導く:感情や衝動に流されず、自制し、智慧によって自己を方向づける。
- 修学(しゅうがく):修行と学び。仏教における実践と智慧の両面を意味する。
🪞 全体の現代語訳(まとめ)
苦しみの正体と、それを引き起こす根源(欲・執着)を見抜いた人が、どうしてなお愛欲に浸っていられようか?
思慮深い者は、世間の絆や執着が、心に苦をもたらす「棘」であると理解し、それに呑まれずに生きるために修行し、学び続けるべきである――このように『愛欲篇』は締めくくられている。
🧠 解釈と現代的意義
この章句は、苦しみの原因を理解することが、欲望を離れる第一歩であると教えています。
現代においても、苦しみの多くは「失いたくない」「手に入れたい」という執着に由来します。その仕組みに気づいたとき、私たちは欲を追うより、「どうすれば心を静かに保てるか」「どうすれば手放せるか」を学ぶようになります。
つまり、苦しみを避ける生き方ではなく、苦しみの根を断つ生き方への転換を促しているのです。
💼 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 応用例 |
---|---|
意思決定の原理 | 利益や承認への「執着」が意思決定を歪める。動機の純度を高めることで、ブレない判断が可能になる。 |
人間関係の健全化 | 仲間や顧客とのつながりも、執着ではなく「尊重」によって築くことで、真に自由で安定した関係となる。 |
マネジメント | 部下の心を支配するのではなく、「棘となる絆」を見抜き、健全な距離感で導く姿勢が必要。 |
リーダーシップ | 自らが執着に囚われずに生きることで、周囲の人々の心も自由になっていく。「率先して離れる」姿が信頼を生む。 |
🧭 心得まとめ(座右の銘風)
「苦しみの根を断つ者、欲には溺れず」
真に賢き者は、苦の源が欲にあると知っている。
絆に甘えず、棘を見抜き、自由な心を育てる。
それが、思慮ある人の修行であり、人生の道である。
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