目次
■原文(日本語訳)
第2章 第35節
クリシュナは言った。
「勇士たちは、あなたが恐怖から戦いをやめたと思うであろう。
あなたは彼らに敬われていたのに、軽んじられることになろう。」
■逐語訳
- 勇士たちは(バヤード・ラーナト・サンキャ・プラー):戦いの場にいる戦士たちは。
- 恐怖から(バヤー):恐れ・臆病さによって。
- 戦いをやめたと思う(ティヤクタム・マンヤンテー):放棄したと見なすであろう。
- 敬われていた(ヤシャスィ):かつては名誉ある者として尊敬されていた。
- 軽んじられる(ラグァヴァン・アヴァープシヤスィ):価値を下げ、見くびられることになる。
■用語解説
- バヤー(恐れ):敵や困難から逃れたいという心の弱さ。
- ティヤガ(放棄):この場合、正当な義務を果たさずに途中で投げ出すこと。
- ラグァヴァン(軽んじられる):敬意を失い、価値を下げた状態。
- ヤシャスィ(名誉ある者):世間から尊敬を受けている立場の人。
■全体の現代語訳(まとめ)
クリシュナはアルジュナにこう警告します。
「この場を逃げれば、かつてあなたを尊敬していた勇士たちですら、
あなたを臆病者と見なし、軽蔑するようになるだろう」と。
名誉とは、積み重ねるのは難しく、失うのは一瞬。
戦うべきときに逃げる者に、人は敬意を払い続けない。
■解釈と現代的意義
この節は、**「恐れに支配された行動は、信頼と尊敬を損なう」**という現実的な人間関係の力学を語ります。
かつての評価がどれほど高くとも、
「ここ一番」で逃げたという印象は、人々の記憶に深く刻まれる。
それは現代においても、企業やリーダー、あらゆる立場の人にとって変わらぬ真実です。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 解釈と応用例 |
---|---|
リーダーの信頼構築 | 難局の場面で逃げる・曖昧にするリーダーは、信頼を失い「臆病」と見なされてしまう。 |
過去の実績の儚さ | どれほどの実績を築いても、「今このとき」の行動でその全てが失われうる。 |
社内評価と心理 | 一度恐れや逃避が見えると、それは一気に周囲の軽蔑へと転じる。人は弱さではなく勇気に尊敬を覚える。 |
危機対応における勇気 | 重大局面において、勇気を持って立ち向かうことが、長期的に名誉と評価を守る。逃げた場合、回復は難しい。 |
■心得まとめ
「逃げた瞬間、尊敬は侮りに変わる」
どれほど尊敬されていたとしても、
恐れから義務を放棄すれば、人はあなたを「勇者」ではなく「敗者」と見るだろう。
勝敗よりも、人は“勇気”を見ている――
それが、信頼と尊敬を守る唯一の道である。
次の第36節では、たとえ敵に勝てなかったとしても、不名誉を受けることの方が遥かに苦しいと語られます。
コメント