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■引用原文(日本語訳)
「純質に依存する者は上方に行き、激質性の者は中間に止まり、最低の要素の活動に依存する暗質性の者は下方に行く。」
(第14章 第18節)
*「上方・中間・下方」とは、霊的進化の方向性・魂の行き先・心の成長段階を象徴。
■逐語訳
純質(サットヴァ)に根ざした者は、上昇していく(高次の存在へ向かう)。
激質(ラジャス)に依る者は、現世的な中間領域にとどまる。
暗質(タマス)に依る者は、下方(無明・退化・混乱の世界)へと堕ちていく。
■用語解説
- 純質(sattva):光明・知性・静けさ・調和を表す性質。霊的成長や高次の境地をもたらす。
- 激質(rajas):情熱・欲望・動的活動の性質。社会的行動や現世的業績に結びつく。
- 暗質(tamas):無知・怠慢・混乱・惰性の性質。精神の鈍化・退行・無意識化につながる。
- 上方(ūrdhvaṁ):魂の上昇、真理への接近、より清明な次元への進化。
- 中間(madhye):現世的な存在状態。達成・競争・渇望の中にとどまる。
- 下方(adho):退化・錯誤・迷妄に陥る存在状態。
■全体の現代語訳(まとめ)
純質に生きる人は、より高い精神的次元へと上昇していく。
激質の人は、成果や行動を追い求める現世的な世界にとどまり続ける。
そして、暗質に支配された人は、意識や生の在り方が退化し、より苦しみや迷いの多い低い次元へと向かっていく。
■解釈と現代的意義
この節は、「人間の在り方そのものが、人生の方向性を決める」という原理を示しています。
ここでの“上方・中間・下方”は単に死後の行き先ではなく、今この瞬間からどのような次元の人生を生きているかを表してもいます。
- 純質の人は、平穏・理解・誠実の中におり、常に自己を高めていく。
- 激質の人は、常に忙しく結果を求め、競争と渇望の中にとどまる。
- 暗質の人は、怠惰や混乱の中で道を見失い、自他ともに損なう傾向が強い。
つまり、内面の傾向(グナ)こそが、その人の“人生の階層”を形づくるのです。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
リーダーの心の質=組織の行き先 | 純質的リーダー(明晰・冷静・徳ある)に導かれる組織は成長し、激質的リーダー(成果偏重)は疲弊し、暗質的リーダー(無責任・無関心)は崩壊を招く。 |
キャリアの層構造 | 上昇する人とは、知性・調和・学びの姿勢を持ち続ける人。中間にとどまる人は、成果だけを追い、やがて限界を迎える。下方に向かう人は、責任回避・現実逃避を繰り返す。 |
意思決定の質=未来の位置 | 今日の小さな判断が、自分をどの次元へ導くかを決める。安易な逃避や衝動的な選択は、下方への傾きとなる。 |
組織文化の方向性 | 純質を育む文化(対話・透明性・内省)があると、社員は自然に成長する。激質や暗質が蔓延すれば、組織は疲弊・停滞・崩壊へ向かう。 |
■心得まとめ
「心の向かう先に、人生もまた引き寄せられる」
人生は、外の条件によって動かされるのではない。
自分の中にどの性質が優勢であるか――その“内なる重力”によって、上昇するか、留まるか、沈むかが決まる。
だからこそ日々、自分の心が純質・激質・暗質のいずれに傾いているかを見極め、
静かに、清らかに、自らを高める選択を重ねていくことが、未来を変える最も確かな道となる。
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