直接原価計算は、収益性を迅速かつ正確に評価し、経営判断を簡略化するための実務的なツールです。以下に、事例を用いた具体的な比較とその実用性を解説します。
商品別の収益比較
〈第20表〉で示した例では、直接原価計算を用いることで、A商品とB商品の収益性を直感的に比較できます。
直接原価計算の特徴
単位当たりの加工高を算出し、それを基に利益を計算。固定費は全体で一定として扱うため、商品別の比較や変更が容易。
簡便さと精度
A商品を減らしてB商品を増やす場合、加工高の増加分を直接計算するだけで利益の変化を予測可能。この手法により、迅速かつ正確な意思決定が可能になります。
〈第21表〉で示される結果は、「変化する部分」にのみ注目することで得られ、計算の効率性と正確性を証明しています。
新しい仕事の採算性評価
〈第22表〉を用いて、新規商品のB商品を採用する場合の採算性を評価しました。
全部原価方式の課題
固定費を商品ごとに配分するため、計算が複雑化し、場合によっては収益性を過小評価してしまうリスクがあります。
直接原価方式の利点
B商品の売価と変動費を用いた加工高の増加分(13円/単位 × 10単位 = 130円)を計算するだけで、全体の損益に与える影響を明確にできます。結果として、現状の赤字100円をカバーし、30円の黒字に転じることが確認されました(〈第23表〉参照)。
柔軟性と実用性
直接原価方式の最大の魅力は、計算の簡潔さと実務適用性です。以下の特徴が挙げられます:
- 全社規模の計算を一からやり直す必要がなく、「変化する部分」のみを抽出して評価可能。
- 経理知識が乏しい場合でも簡単に理解・活用できる。
- 将来の経営計画や価格設定のシミュレーションにも適している。
スキー宿の例題と前向きな検討法
別の例としてスキー宿の売価変動に対応する損益計算があります。この事例では、売価の変動に応じた粗利益のシミュレーションが示されています。
- ポイント:
売価が変動する場合、事前にさまざまな価格シナリオを設定し、それぞれの粗利益を計算しておくことが重要。 - 実務的な活用法:
このようなシミュレーションは、価格戦略の策定や収益予測に役立ち、経営判断をサポートします。
まとめ:直接原価計算の実務価値
直接原価計算は、過去のデータに基づいた分析だけでなく、未来の意思決定にも役立つ強力な手法です。商品別の収益性評価、新規取引の採算性検討、価格戦略の立案など、多岐にわたる用途で効果を発揮します。
次章では、さらに具体的な事例と直接原価計算の活用方法について掘り下げていきます。
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