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兵を動かす前に、言葉を尽くせ

嶺南で反乱の報が上がったとき、太宗は討伐の兵を起こそうとした。
だが、魏徴は進言した。「戦乱で疲弊した今、険地に兵を送るのは得策ではありません。まずは使者を送り、誠意を示して話し合うべきです」と。

魏徴の言葉通り、太宗は一人の使者を遣わすにとどめた。すると、あれほど戦が続いていた嶺南の地は、ただちに平定された。
太宗は感嘆して語った。「魏徴の諫言は、十万の兵に勝る力を持っていた」と。

敵と見える者の心にも、通じ合う理がある。
力を持つ者こそ、まずは徳をもって人を導くべきだ。
対話は、剣よりも深く届くことがある。


■引用(ふりがな付き)

「魏徴(ぎちょう)頻(しき)りに諫(いさ)めて曰(いわ)く、『ただ徳(とく)を以(もっ)てこれを懐(なつ)けば、必(かなら)ず討(う)たずして自(おの)ずから来(きた)らん』と。ついにその計(けい)に従(したが)い、嶺表(れいひょう)無事(ぶじ)を得(え)、労(ろう)せずして定(さだ)まる。十万(じゅうまん)の師(し)に勝(まさ)れるなり」


■注釈

  • 嶺南(れいなん):現在の中国南部(広東・広西・福建あたり)にあたる地域。風土病・山川多く、兵の展開が困難。
  • 馮盎(ふうおう):嶺南の地方豪族。報告では反乱を疑われたが、実際には動いていなかった。
  • 懐之以徳(とくをもってこれをなつく):徳を示して心を動かすという統治の基本思想。
  • 十万の師に勝る:軍事力よりも、言葉と誠意の力が勝るというたとえ。

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