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客人をもてなさずして、民を治められようか

―『貞観政要』巻一より

心得

遠方から公務でやってくる者には、敬意と礼節をもって迎えるべきである。
太宗は、地方からの使者が宿を自費で借り、商人らと雑居している現状に対し、「このような待遇では、彼らは朝廷に不満を抱く」と憂い、専用の宿舎を建てさせた。
待遇は信頼と忠誠の礎であり、心からの接遇こそが、天下をともに治める第一歩である。

🏛 出典と原文

貞觀(じょうがん)十二年、太宗(たいそう)侍臣(じしん)に謂(い)いて曰(いわ)く、
「古(いにしえ)者(は)、諸侯(しょこう)入朝(にっちょう)するに、有(あ)りしは湯沐(とうもく)の邑(ゆう)、芻禾(すうか)百車(ひゃくしゃ)、以(もっ)て客禮(かくれい)を待(ま)つ。晝(ひる)は正殿(せいでん)に坐(ざ)し、夜(よる)は庭燎(ていりょう)を設(もう)く、思(おも)うに相見(あいまみ)えて、其(そ)の労苦(ろうく)を問(と)わんと欲(ほっ)す。又(また)漢家(かんか)の京師(けいし)にも、亦(また)諸郡(しょぐん)のために邸舎(ていしゃ)を立(た)つ。

頃(このごろ)聞(き)くに、考使(ちょうし)が京(けい)に至(いた)る者(もの)、皆(みな)賃屋(ちんおく)を以(もっ)て坐(ざ)し、商人(しょうにん)と雜居(ざっきょ)し、纔(わず)かに身(み)を容(い)るるを得(え)るのみ。待禮(たいれい)の不足(ふそく)、必(かなら)ず是(こ)れ人(ひと)多(おお)く怨歎(えんたん)し、豈(あに)肯(あにこころよ)く竭誠(けっせい)して共(とも)に理(おさ)めんや」。

乃(すなわ)ち令(れい)して京師(けいし)の閑坊(かんぼう)に就(つ)きて、諸州(しょしゅう)の考使(ちょうし)のために各(おのおの)邸第(ていてい)を爲(つく)らしむ。既(すで)に成(な)りて、太宗親(みずか)ら幸(おとず)れて之(これ)を観(み)たり。

🗣 現代語訳(要約)

太宗は、地方から都に来る使者が劣悪な環境で滞在していることに憂慮し、古代や漢代の例にならって彼らのための宿舎を建設させた。完成後には自ら出向いて視察を行った。

📘 注釈

  • 朝集使(ちょうしゅうし)/考使(こうし):地方官の功績や政務報告のために都へ派遣される使者。
  • 湯沐之邑(とうもくのゆう):賓客や諸侯に与えられる恩典としての領地・接待地。
  • 庭燎(ていりょう):夜間の接待のために庭で焚くかがり火。
  • 賃屋(ちんおく):借家。自費で借りる簡素な宿。
  • 雑居(ざっきょ):商人などと同居して生活環境が劣悪なこと。

🔗 パーマリンク案(英語スラッグ)

  • dignity-in-hospitality(主スラッグ)
  • 補足案:lodging-for-envoys / respect-through-treatment / shared-duty-starts-with-respect
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