中小企業の成長において、幹部社員の育成は欠かせない要素です。優秀な人材を外部から採用するのは難しく、仮に採用できたとしても企業文化に馴染むとは限りません。そのため、いま在籍している社員を幹部社員として成長させる仕組みを構築することが、組織全体のレベルを引き上げる近道となります。
社長の役割と社員の実行力
まず、組織のトップである社長の仕事は「決定」と「チェック」に集約されます。そして、社長の方針に対する社員の実行スピードによって役職の特徴が明確になります。
- 役員: 方針を1日で実行する。
- 部長: 方針を1週間で実行する。
- 課長: 方針を1ヶ月で実行する。
- 平社員: なかなか実行に移さない。
この違いは、社員の実行力だけでなく、指導力や責任感にも関わる問題です。幹部社員を育てることは、組織の中核を担うリーダーを作り上げることであり、中小企業が成長するために欠かせない取り組みです。
見込みのある幹部社員を成長させる方法
荷の重い事業部への異動
幹部社員が同じ業務を長く続けていると、「自分は優秀だ」と思い込み、成長が止まる危険性があります。このような状態を防ぐために、見込みのある幹部社員をあえて課題の多い、困難な事業部に異動させることが有効です。
- 困難な環境での学び
ガタガタの状態から立て直す経験を通じて、幹部社員は自分の無力さや限界を実感します。このプロセスにより、「先輩たちが築き上げた成果に頼り切っていた自分」に気づき、本質的なリーダーシップを磨くことができます。 - 形の整っていないものを売る経験
完成度の低い製品やサービスを扱う中で、工夫する力や粘り強さが養われます。これにより、より現実的な視点を持ち、組織の中核としての責任感が一層高まります。
幹部社員に求められる「数字を上げる人格」
幹部社員の評価は、一般社員とは異なる基準で行われます。その中でも重要なのが、業績(結果)を重視することです。
人事評価の違い
- 一般社員
- 業績評価30%+プロセス評価70%
- まじめに取り組む姿勢や努力が重視される。
- 幹部社員(例: 本部長クラス)
- 業績評価80%+プロセス評価20%
- 数字を上げることが最優先される。
このように、幹部社員には「結果を出す力」が求められます。いくら努力しても結果が伴わない場合は評価されず、適当にやっていても結果を出せる人が評価されます。
「数字が人格」という考え方
組織における幹部社員の人格は、「部門と部下の数字を上げる能力」で測られます。これは、幹部社員が持つべき責任感と成果を両立するための明確な基準です。このルールに従えない場合、会社を離れる覚悟が必要になります。
幹部社員に求められる報告力
業績を求められる幹部社員は、失敗や不都合な状況を隠したくなる傾向があります。しかし、本当に優れた幹部社員であるためには、自分に不利な情報や良くない報告を正直に伝える力が不可欠です。
- 悪い報告を避けない文化を育てる
幹部社員が問題を隠すことで、会社全体の改善が遅れる可能性があります。正直な報告を推奨し、問題に正面から向き合う姿勢を持つことで、信頼されるリーダーへと成長できます。
まとめ
中小企業が組織の中核を担う幹部社員を育てるには、現在の社員を育成する仕組みが必要不可欠です。そのためには、荷の重い事業部への配属や困難な状況での経験を通じて成長を促すこと、数字を重視した評価基準を設けること、そして正直な報告を奨励する文化を育むことが重要です。
幹部社員の成長は、会社全体のレベルアップに直結します。いまいる社員を育てることこそが、中小企業の未来を切り開く鍵なのです。
いまいる社員を幹部社員に育てる
社長の仕事は決定とチェックです。社長が決めた方針を1日で実行するのが役員、1週間で実行するのが部長、1ヶ月で実行するのが課長で、なかなか実行しないのが平社員です。
中小企業は、幹部社員(上司)をしっかり育てる仕組みを構築しておかないと会社全体のレベルを高めることができません。
優秀な人材は中小企業にはなかなかきません。中途で優秀な人材を引き抜こうにもそうした人材は市場にはあまりいないし、かりにいても自社の風土に合うかは別の問題です。だとしたら、今いる社員を幹部社員に育て上げるしかありません。
見込みのある幹部社員は、荷の重い事業部に異動させる
幹部社員を続けていると、そのうち「自分は優秀だ」と勘違いします。勘違いが続くと、努力しないダメ幹部になる。
そうならないためには、見込みのある幹部社員を荷の重い事業部に配属したほうがいい。ガタガタな状態から作り上げる大変さを体験させます。
形の整っていないものを売る体験を通して、自分の無力さを心と体で感じてもらう。自分は優秀だと思っていたのは勘違いで、先輩たちが積み上げたものにあぐらをかいていただけということを教える。
幹部社員は数字を上げる人格者でなければならない
人事評価は、「業績(業績評価+プロセス評価)+環境整備の点数+方針共有点」が基本です。「方針共有点」のなかには、早朝勉強会の参加やサンクスカードの枚数などが含まれます。
一般社員と幹部社員で大きく人事評価基準を変えているのが、業績+プロセスの比率です。一般社会は、業績評価30%+プロセス評価70%と、プロセス評価を大事にしています。
まじめに仕事をすることが評価されて、業績(プロセスに対する結果)はそれほど重視していません。
それに対して、幹部社員、例えば本部長クラスでは、プロセス評価20%+業績評価80%という評価基準になります。
数字が人格です。人格者とは、部下と部門の数字を上げる人のこと。幹部社員も人格者ではなければいけません。一生懸命やって結果が出ない人より、適当にやっていてもいいから結果を出せる人を優遇します。
いい悪いではありません。ルールに従えないなら他の会社に行ってもらうしかありません。
幹部社員は良くない報告をしなければならない
業績を求められると、幹部社員はつい自分に都合の悪いことは隠したがります。
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