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知識に宿らぬ覚悟 ― ごまかしの賢さより、命がけの愚直さ


目次

一、原文と逐語訳

🔹原文

勘定者はすくたるる者なり。仔細は、勘定は損得の考へするものなれば、常に損得の心絶えぎるなり。
死は損、生は得なれば、死ぬる事をすかぬ故、すくたるるものなり。
また学問者はオ知・弁口にて、本体の臆病・欲心などを仕かくすものなり。人の見誤る所なり。

🔹現代語訳(逐語)

計算高い者は臆病になりやすい。それは、計算とは損得を基準にするからであり、そういう者はつねに損得の心が頭から離れない。
死は損、生は得だと思っているので、死を避けようとする。だから、いざというときに臆病になる。
また、学問を持った者(知識人)は、その知識や弁舌で、自分の本質である臆病さや欲深さをごまかそうとする。
その実像を見誤ってはならない。


二、主旨:知識や弁舌は「臆病」と「欲心」を隠す仮面

この節が伝えるのは、**知性や合理性の裏にある“逃避”と“欺瞞”**の指摘です。

  • 計算=損得で動く思考
  • 死=損、だから逃げる=卑怯
  • 知識人=「弁舌で誤魔化す能力を持つ者」

ここでの批判の矛先は、単なる学問や知識ではなく、それを自分の臆病さの隠れ蓑に使う態度に向けられています。


三、現代的な読み替えと洞察

この章の意義は、「知識そのものを否定している」のではなく、知識が「行動」「覚悟」「誠」の代替になるという誤解への警鐘です。

現代でも当てはまる教訓:

  • 分析・理屈を盾にリスク回避ばかりする人
  • データや専門用語で逃げ道を作るプレゼン
  • 本音を語らず「思慮深いふり」をする指導者や知識人

これらは表面的に賢く見えても、現場で真に頼れる人物ではない、という『葉隠』の視点が光ります。


四、ビジネスと実践への応用

状況教訓と心得
経営・マネジメント数値やKPIにとらわれすぎず、最終的には人間の信頼と覚悟で突破することを重視すべし。
人材評価学歴や語彙力ではなく、本当に泥をかぶれる覚悟があるかを見極めることが重要。
自己鍛錬情報や理論に逃げ込まず、自分の「欲心」や「臆病さ」と正面から向き合う自己省察が不可欠。
リスク選好計算ばかりでは何も始まらない。時には損得勘定を超えた行動こそが信頼と機会を生む

五、まとめ:知識と覚悟は別物である

  • 真の強さは知識の量や巧みさではなく、腹を決めて動けることにある。
  • 計算や弁舌は、覚悟のなさを隠す道具になりうる。
  • 知識は道具、覚悟は人間性。ごまかしの知識より、真っすぐな実行力が尊い。

✅心得要約:頭で勝とうとする者は、腹を決めた者には勝てぬ

損得にしがみつく者は、いつか勇断できずに逃げる。
学識や言葉のうまさで自らをごまかす者は、人をも欺く。
本当に頼れる者とは、損得や体裁を捨てて、自らを賭けられる者である。
武士道とは、その覚悟のかたちである。


この精神は、現代においてもリーダーや起業家、教育者の心得として、非常に強い意味を持ちます。

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