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📜 引用原文(日本語訳)
譬えば自分が堅固に作った矢でも、
(誤って)乱暴に弦に番(つが)えると、その人を殺してしまうように、
ここで自分の内部から現われて出た蔓草である愛執は、
人々を殺すに至る。
――『ダンマパダ』 第三章「愛執」より(一七)
🔍 逐語訳・語句解説
- 堅固に作った矢:本来なら役に立つもの、あるいは意志・能力・努力の象徴。
- 乱暴に弦に番える:使い方を誤ること、制御を失うこと。自制を欠いた行動の比喩。
- 自分の内部から現れ出た愛執:外的要因ではなく、心の奥底から自然に芽生えた欲望・執着。
- 蔓草である愛執:しなやかで取り除きにくく、油断すると広がる性質。放置すれば手に負えない。
- 人々を殺すに至る:「殺す」は比喩的に、精神を破壊する・人格を崩す・人生を損なう意味。
💬 全体現代語訳(まとめ)
たとえば、自分が丹念に作り上げた堅固な矢であっても、誤って弦に強く番えてしまえば、自分自身を傷つけ、命さえ奪ってしまうことがある。
それと同じように、自分の内面から生まれた愛執という欲望は、適切に扱わなければ、ついには自分自身を滅ぼすほどの力を持つ。
人を傷つけるのは、外からの矢ではない。自らの心に生じた欲望こそが、最も深く己を殺す毒となるのだ。
🧭 解釈と現代的意義
この句は、**「自己の内部にある無自覚な愛執」**がもたらす破壊力に警鐘を鳴らしています。
- 私たちは、外の敵に警戒しながらも、自分の中の欲望・執着・怒り・誇りには気づきにくいものです。
- しかもそれらは、一見「自分にとって有益な力(=堅固な矢)」に見えるため、自覚なく制御を失う危険があります。
- 愛執は、放置されれば判断力を鈍らせ、人間関係を壊し、自分の信頼や人生そのものを損なう要因になります。
この警句は、自己の内面を観察し、扱い方を誤らぬよう、深い注意を促してくれているのです。
💼 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
自己の能力への過信と誤用 | 高いスキルや経験も、執着や怒りに支配されて使えば、組織を壊す“鋭利な刃”となる。 |
感情的な行動による人間関係の崩壊 | 自分の正義感や欲求が強すぎて、チームにとって有害な言動を取ってしまうケース。 |
リーダーの“内面の癖”への無自覚 | 自尊心・成果欲・支配欲が無意識に組織運営に現れ、信頼の崩壊や部下の萎縮を招く。 |
戦略の誤作動 | 本来正しい方向性でも、焦りや貪欲が介在すると判断が歪み、組織全体を損なう結果となる。 |
🪷 心得まとめ:感興のことば
「外の敵に気をつけよ。だが、内なる執着はもっと恐ろしい。
手にした武器が、自らを傷つけることもある。
欲望は、刃のように扱わねばならぬ」
ブッダは、この句を通して私たちに**「心の力と危うさ」**を教えています。
欲望や執着は、正しく扱えば力にもなるが、誤ればそれは自己破壊へとつながる。
だからこそ私たちは、常に**「これは本当に必要か?」「これは誰のための欲か?」**と内省しながら、自分の心の扱い方に智慧を持たねばなりません。
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