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📜 引用原文(出典:『ダンマパダ』第3章 第11偈)
屋根を粗雑に葺いてある家には、雨が洩れ入るように、
心を修養してないならば、情欲が心に侵入する。
(パーリ語原典:
Asārāṃ bhavitaṃ gehaṃ vuṭṭhī samativijjhati,
Tath’evaṃ abhavitaṃ cittaṃ rāgo samativijjhati.)
🪶 逐語訳
- 粗末に造られた家の屋根には、雨水がしのび込むように、
- 訓練されていない心には、欲望(情欲)が入り込んでしまう。
📘 用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
粗雑な屋根(asārāṃ gehaṃ) | 手入れや設計が不十分な心の比喩。心に備えがないこと。 |
雨(vuṭṭhī) | 外からやってくる欲望・刺激・誘惑。ここでは主に情欲(rāga)の象徴。 |
情欲(rāga) | 五欲(色・声・香・味・触)に対する執着。仏教における三毒の一つ。 |
修養されていない心(abhavitaṃ cittaṃ) | 内省・瞑想・倫理的修行が欠けており、欲望に脆弱な心の状態。 |
🧾 全体の現代語訳(まとめ)
粗末に葺かれた家に雨が漏れるように、心の修養がなされていなければ、
そこに情欲が容易に入り込んでしまう。
心に備えがなければ、外からの刺激にあっという間に支配されてしまうのである。
🔍 解釈と現代的意義
この偈は、**「日々の心の訓練と自省がなければ、誘惑や欲望に簡単に侵される」**という警句です。
現代社会においても、スマートフォンの通知、SNS、広告、娯楽など、
「心の隙間」に入ってくる情報や誘惑は、まるで止まない雨のようです。
そのような中で、心を整えず、無防備な状態にしていれば、
欲望や衝動、怒り、不安といった「感情の雨水」が染み込み、
冷静さや判断力を失ってしまうのです。
💼 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
感情的な意思決定の回避 | 日々のマインドセットの整備がなければ、緊急事態や誘惑的提案に即反応して誤った判断をしやすくなる。 |
メンタルの強化 | 定期的な心の見直し(内省や瞑想)が、外部からのネガティブな情報への免疫力となる。 |
企業倫理とブレーキ力 | 心の訓練が不十分なチームは、不正や無理な意思決定に流されやすい。倫理観の土台は「整えられた心」から始まる。 |
誘惑に打ち勝つリーダーシップ | 利益や名誉に目を奪われず、冷静な判断をするリーダーには、心のトレーニングという裏付けがある。 |
💡 心得まとめ(結びのことば)
「備えなき心に、欲望は漏れ入る。」
「修養の屋根こそ、心を守る盾となる。」
どんなに立派に見える家でも、屋根がきちんと葺かれていなければ、
雨に打たれて中から崩れていきます。
それと同じように、心の修養が欠けたままでは、外からの刺激に抗えず、
やがて判断も行動も蝕まれていくのです。
だからこそ、日々の「心の屋根葺き」――すなわち、自省、節制、観察――こそが、
現代において最も重要な「自己防衛」なのです。
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