固定資産の減価償却は、資産の価値の減少を適切に費用として計上する手続きであり、いくつかの方法があります。それぞれの特徴と計算方法を以下にまとめます。
1. 定額法
特徴
- 耐用期間中、毎期同額の減価償却費を計上する方法。
- 減価償却費は時の経過に比例して計上されます。
計算式
[
\text{減価償却費} = \frac{\text{取得原価} – \text{残存価額}}{\text{耐用年数}}
]
または、
[
\text{減価償却費} = \frac{\text{取得原価} \times 0.9}{\text{耐用年数}} \quad (\text{残存価額が取得原価の10%の場合})
]
例: 定額法による減価償却(直接法)
建物の取得原価が10,000円、残存価額が0円、耐用年数が20年の場合:
減価償却費 = 10,000 ÷ 20 = 500円
仕訳:
減価償却費 500円 / 建物 500円
2. 定率法
特徴
- 期首の未償却残高に一定の償却率を掛けて減価償却費を計上。
- 初期に多くの減価償却費を計上し、年々減少していく。
計算式
[
\text{減価償却費} = (\text{取得原価} – \text{期首減価償却累計額}) \times \text{償却率}
]
200%定率法の償却率
[
\text{償却率} = \frac{200\%}{\text{耐用年数}}
]
例: 定率法による減価償却(間接法)
取得原価が30,000円、償却率20%、1年目~3年目の計算:
- 1年目(途中取得、4か月分):
[
30,000 \times 20\% \times \frac{4}{12} = 2,000円
]
仕訳:
減価償却費 2,000円 / 減価償却累計額(建物) 2,000円
- 2年目:
[
(30,000 – 2,000) \times 20\% = 5,600円
] - 3年目:
[
(30,000 – 2,000 – 5,600) \times 20\% = 4,480円
]
3. 生産高比例法
特徴
- 資産の利用度(生産高や走行距離など)に比例して減価償却費を計上。
- 会計期間の途中で取得した場合でも、月割計算は不要。
計算式
[
\text{減価償却費} = (\text{取得原価} – \text{残存価額}) \times \frac{\text{当期利用量}}{\text{総利用可能量}}
]
例: 生産高比例法
- 取得原価が200,000円、残存価額が10%(20,000円)、総利用可能距離が10,000km、当期の走行距離が1,000kmの場合:
[
\text{減価償却費} = (200,000 – 20,000) \times \frac{1,000}{10,000} = 18,000円
]
仕訳:
減価償却費 18,000円 / 減価償却累計額(車両) 18,000円
減価償却の記帳方法
直接法
- 減価償却費を計上すると同時に、資産の金額を直接減少させる。
減価償却費 500円 / 建物 500円
間接法
- 減価償却費を計上し、減価償却累計額を使用して資産価値の減少を示す。
減価償却費 500円 / 減価償却累計額(建物) 500円
減価償却方法の比較
項目 | 定額法 | 定率法 | 生産高比例法 |
---|---|---|---|
計算基準 | 耐用年数 | 未償却残高 | 利用度(生産高・走行距離) |
費用計上のパターン | 一定額 | 初期多く、後に減少 | 利用量に応じて変動 |
月割計算の必要性 | 必要 | 必要 | 不要 |
適用例 | 一般的な建物や設備 | 使用頻度が変化する資産 | 航空機、自動車など |
まとめ
- 減価償却は固定資産の価値減少を適切に費用化し、企業の利益計算を正確に行うために不可欠。
- 固定資産の性質や利用方法に応じて、最適な減価償却方法を選択します。
コメント