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部門別(営業所別・店舗別も同じ)収益性はこうして

部門ごとの収益性を測る方法が、ほとんどの企業で誤っているのが実情だ。前述の通り、共通費の割り振りが問題を引き起こす。その原因は「割り振り方が悪い」という点にある。しかし、「割り振り方が悪いなら割り振らない」という選択肢も現実的ではない。実際には共通費は必ず発生するものだからだ。結局のところ、この矛盾に直面することになる。

この問題に対する解決策は三つ考えられる。その第一の方法は、部門ごとの収益を個別に評価しつつ、共通費用は全体として一本化して扱うというアプローチだ。この手法を用いて計算したのが〈第33表〉であり、これは〈第4表〉の会社をこの方式で再計算した結果を示している。

このように、部門ごとの収益を明確にしつつ、それ以外の費用は会社全体で一本化して計算する方法には、一種の「分けないほうが賢明」という感覚も否めない。しかし、企業規模が小さい場合には意外と有用だ。規模が小さいからこそ、内部の費用がどの活動にどれだけ使われたのかを細かく区別しなくても、おおよその見当がつくためだ。特に、各部門の営業形態が大きく異なる場合、この方法は効果的といえる。

ある貸衣裳業者では、貸衣裳事業と呉服販売事業の二本立てで運営されていた。貸衣裳は売上がそのまま付加価値に直結する一方で、呉服販売の粗利益率は20%台にとどまっていた。この違いがあるため、単純に売上高を比較するだけでは実態を正確に把握することができない。さらに、呉服販売は貸衣裳と同じスタッフが兼務して行っていた。そのような状況では、この方法以外に収益性を評価する現実的な手段は存在しなかった。

ある会社では、高価な特殊金属素材の販売と、その金属の二次加工の二本立てで事業を展開していた。営業活動は同じスタッフが担当しており、特殊金属素材の粗利益率は5%にも満たない一方で、二次加工は売上がそのまま付加価値に直結していた。さらに、売上高の比率では、素材売上が加工売上の数十倍にも達していた。このような状況では、両事業を分離して計算しなければ、売上高の規模に引きずられて誤った判断を下すリスクが非常に高い。

正確な収益性を判定するには、収益源を明確に分離することが重要であり、それによって判断が容易になる。「第二」の方法として挙げられるのは、部門別の売上と、それぞれの部門に固有の固定費を分離して計算し、共通費用については全社単位で一本化して扱う方法だ。このアプローチを適用した具体例が〈第34表〉であり、〈第4表〉のデータをこの方式で再計算した結果を示している。

この方法で計算を行う際、特に注意すべき点は固有固定費の算定だ。固有固定費として計上するのは、十分な信頼性を持ってその部門に特有のものと判断できる費用だけに限るべきだ。これは、数字を扱う上での基本的なルールと捉えるべきである。部門別計算を行う以上、その部門で実際に使用されたかどうか曖昧な費用を含めるのは誤りだ。「疑わしいものは計上しない」という姿勢が求められる。

しかし、現実にはこの基本原則を無視しているケースがほとんどだ。多くの場合、すべての費用を部門ごとに割り振ろうとする。推定値を持ち込んだり、恣意的な割掛基準を用いたりするのが一般的だ。なぜそこまでして、すべてを割り振ろうとするのか。不思議で仕方がない。これはまさに「割掛病」とでも呼ぶべき状況だ。

この「割掛病」が厄介なのは、固定費の中には、その部門の活動とは直接的な関係がない費用が少なからず含まれている点にある。例えば、本社費のような費用は、その典型例だ。これらを無理に部門に割り振ることで、実態と乖離した数字が生まれ、収益性の判断を誤らせる原因となる。

同時に、こうした費用は部門の担当者にとって完全に「統制不能費」に該当する。つまり、それらの費用は部門の活動とは無関係に発生し、部門側でコントロールすることが不可能だ。このような統制不能な費用を無理やり部門に割り振ることで、各部門の実態を大きく歪めてしまう結果となる。正確な分析が目的であるにもかかわらず、その目的を自ら損なうような行為だといえる。

部門別計算は本来、各部門の状況を正確に把握するために行うものだ。しかし、統制不能な費用を無理に割り振るようなやり方では、その目的から大きく逸脱してしまう。結果として、正確な部門の姿を見失い、収益性や効率性を正しく評価するどころか、誤解を生む原因となる。これでは、本来の狙いを台無しにしてしまうだけだ。

問題は、真実の姿が見えなくなるだけにとどまらない。部門の責任者の立場からすれば、自らの活動とは無関係で、しかも統制不能な費用を割り当てられた上に、それを基に業績を評価されるのは理不尽極まりない話だ。こうした状況が、部門別業績検討会などで不毛な議論を引き起こす原因となる。責任者は、自分の努力や判断とは無縁の要因で責任を問われることに反発し、建設的な話し合いが進まなくなるのだ。

だからこそ、共通費は無理に部門へ割り振らず、全社一本で計上するのが適切な方法となる。部門ごとの固定費を算出する作業が比較的簡単なのは、営業所や販売店の場合だ。これらの現場では、費用の発生源が明確であり、各部門ごとに固有の費用を切り分けやすいからだ。この手法の具体例として、N社の実際のケースを検討してみよう。

N社は菓子メーカーだが、業績不振に苦しんでいた。その状況を打開するため、販売店別の収益性を分析した結果が次頁の〈第35表〉に示されている。この分析は急ぎで行ったため、一か月分のデータを基にしている。しかし、その月の売上は平均的な月商に近かったため、「年間のデータと大きな差はないだろう」と社長は判断した。

N社の販売網は、デパートなどの委託販売店11店舗と直営店舗13店舗の合計24店舗で構成されている。委託販売店といっても派遣店員を配置し、売上歩合を支払う仕組みになっているため、粗利益率が低いのが特徴だ(この売上歩合は変動費として扱われる)。

各店舗の売上高、固有固定費、そして粗利益率を基に、それぞれの店舗の損益分岐点を計算した。その結果を評価した判定欄では、「AA」が極めて優秀、「A」が優秀、「B」が平均的、「C」が不十分、「D」が赤字同然、そして「▲」は完全な赤字店を示している。この赤字店舗というのは、「その店舗自体の経費すらカバーできていない」状態を指す。

分析の結果、委託店11店舗のうち4店舗、直営店13店舗のうち3店舗、合計7店舗が赤字店舗に該当していた。つまり、全店舗のうち約3割が赤字を出している状況だった。この結果は、N社にとって深刻な問題であり、業績不振の大きな要因といえる。

この「▲」印がついた店舗こそが、N社の業績を引き下げる主因となっている。私は社長に対してこう伝えた。「あなたの会社の低迷する業績の元凶は、これらの赤字店舗にある。この状態を放置するわけにはいかない。しかし、これらの店舗の売上を大幅に増やすことを目指すのは、よほど画期的な施策がない限り、現実的には期待できないと考えるべきだ。そして、残念ながら、そんな『うまい手』が簡単に見つかることはほとんどない」。

だからこそ、赤字店舗の「切捨て」が基本方針となる。ただし、単に店舗を閉鎖すれば問題が解決するわけではない。なぜなら、その店舗に配置されていた社員の給与負担は依然として会社に残るからだ。そこで重要なのは、社員を配置転換によって有効活用する仕組みを整えることだ。

一つの方法としては、明らかに人手が不足している店舗へ人員を回す。この場合、その配置転換によって確実に売上増が期待できることが前提となる。もう一つの方法は、新店舗を開設し、そこに社員を配置することだ。売れない店舗を切り捨てつつ、新たに収益を生む店舗を増やすという「スクラップ・アンド・ビルド」の姿勢を持ち続けることが重要だ、と社長に勧告した。

N社ではこれまで、このような分析を全く行っておらず、専ら売上高だけを基準に店舗の評価をしていた。社長の頭痛の種は売上高の低い店舗だったが、実際には、売上が多くても赤字の店(例えば、直営のg店)が存在していた。一方で、g店よりも売上がはるかに低いにもかかわらず黒字の店舗が複数あった。たとえば、委託販売のE店やI店、直営のh、i、j、k、l、mの計8店舗である。その中でも、直営のl店とm店は特に優秀な店舗だった。

この事実は、売上高だけを基準に判断することの危険性を如実に示している。売上規模が大きいからといって必ずしも利益を出しているわけではなく、逆に、売上が小さい店舗でも適切にコストを管理すれば黒字を実現できる。こうした分析の重要性が、N社のケースから明らかになった。

N社長の判断が誤っていただけでなく、根本的な問題として、社長自身が「スクラップアンドビルド」という方針を望ましい姿と考えてはいたものの、それを積極的に実行に移そうとはしていなかった点が挙げられる。この消極的な姿勢が、N社の業績低迷を長引かせる一因となっていた。

こうした背景から、私は社長に対して明確な行動を促すための勧告を行った。店舗の現状を正しく分析し、収益を生まない店舗を思い切って切り捨てる一方で、新たな収益源となる店舗を育てていく――このスクラップアンドビルドの実践が、N社にとって不可欠であることを強調したのである。

もちろん、N社の業績不振の原因はこれだけにとどまらなかった。商品そのものにも改良が必要な点が多く見受けられたし、価格政策にも疑問が残る部分があった。また、店頭販売員の訓練がほとんど行われておらず、実質的には販売員任せ、あるいは放任に近い状態だった。これらの課題が重なり、業績不振に拍車をかけていたのは明らかだった。

そこで私は、店舗のスクラップアンドビルドだけでなく、これらの商品改良、価格政策の見直し、そして販売員の教育体制の整備についても、並行して改善を進めるべきだと勧めた。これらを総合的に解決しなければ、根本的な改革にはならないからだ。

特に重要なのは、店頭販売員の能力によって売上が大きく左右される事実を認識することだ。N社長は、販売員の訓練にもっと情熱を注ぐべきであり、自ら店舗を巡回して指導を行い、時には自ら店頭に立つくらいの覚悟が必要だ。販売現場での実践が、販売力を向上させる鍵となる。

また、売上の良い店舗の販売員をよく観察し、その成功の要因を分析して他の販売員にも実践させる訓練が特に重要である。このプロセスを徹底しない限り、全体の販売力の向上は難しい。それでも改善が見られない場合には、販売員の交替を検討することも必要だ。結果を出す販売員を育てるか、それが無理なら適材適所の配置換えで対応するべきだ。

「N社の商品は店頭販売以外に売る場がない。だから、社長自ら店頭販売を指導すべきだ」と、私はN社長に直言した。

しかし、共通費を便宜的に割り掛ける方法にも一理ある。この方法に「事業効率の測定」という意義を持たせるのが、「第二」の方法だ。

〈第36表〉を見てほしい。この方法では、まず部門付加価値から部門固有固定費を差し引いて部門利益を算出する。ここまでは「第二」の方法と同じだ。しかし、その部門利益からさらに共通費負担を差し引いて、共通費負担後利益を計算する。こうして、固有固定費と共通費を明確に分離して収益性を評価する仕組みを採用している。

この場合、どの基準で各部門に共通費を割り付けるべきかという問いに、残念ながら明確な正解は存在しない。そもそも、部門の活動と無関係な費用を部門に割り当てること自体が無理のある行為だからだ。したがって、会計的な正確さを追求した割り掛けはあきらめ、事業経営的な視点で割り付けを行うことが求められる。

その割掛基準として適しているのは、各部門の「人頭割り」である。この基準を採用する背景には、企業が保有する資源――人、物、金、時間の中で、人的資源が最も重要であるという考え方がある。人的資源を基準にすることで、事業全体の資源配分をより公平かつ実態に即した形で評価することが可能になる。

物、金、時間といった資源は、一度に一つの目的にしか使うことができない。しかし、人的資源だけは異なる特性を持つ。一人の人間がその能力次第で何倍にも、何十倍にも価値を発揮することが可能だ。同時に、その逆もあり得る。能力が発揮されなければ、その人材は本来のポテンシャルの何分の一、何十分の一の価値しか発揮できない資源となってしまう。これが人的資源の特徴であり、重要視される理由でもある。

この最も重要な資源である人的資源を、どのように活用するか、あるいは活用しないかは、すべて社長の采配にかかっている。だからこそ、人的資源一人当たりにどれだけの費用を負担させるべきか、また、負担可能なのかを慎重に考える必要がある。その判断が、企業全体の効率と成果に直結するのだ。

もし一人当たりの負担を賄いきれないとすれば、それはその部門の事業自体が非効率であることを示している。つまり、この基準は、各部門の事業効率を測るだけでなく、社長が自らの経営判断や事業効率を客観的にチェックするための物差しとして機能するという意味を持つ。この視点が、事業全体の健全性を評価する上で重要な役割を果たすのだ。

したがって、もし一人当たりの共通費負担を賄えない部門が存在するなら、それは明確に社長自身の責任であり、それ以外の何ものでもない。この状況は、社長がその部門の効率を見極められていないか、適切な判断と対策を怠った結果である。経営の責任者として、こうした状況を放置することは許されないのだ。

人頭割りでは人件費の違いを反映できない、という意見があるなら、人件費割りを採用するのも一つの方法だ。例えば、ある会社では、熟練を要する部品加工部門と、熟練をそれほど必要としない組立部門が存在していたため、人件費割りを基準として共通費を割り付けた。この方法により、各部門の人件費構造の違いを考慮したより公平な分配が可能となった。

人頭割りと人件費割りを半々で組み合わせる方法も一案だ。しかし、これが適用の限度であることを理解しておく必要がある。それ以上に多様な割掛け基準を設けると、割掛けそのものの妥当性が議論の対象となり、終わりの見えない不毛な論争が繰り広げられる危険性がある。共通費の割り振りは、シンプルで理解しやすい基準に留めることが肝要だ。

世間一般で広く受け入れられている「部門の業績はその部門長の責任である」という考え方は、完全に誤りであり、大いに見当違いだ。それどころか、この考え方は、社長が自身の責任を回避するための方便に過ぎない。部門の業績は、最終的には経営全体を統括する社長の方針や判断に大きく依存しており、その結果に対する責任も社長自身が負うべきである。

優れた社長は、部門業績の不振を自らの責任として受け止め、何が問題かを深く反省し、業績向上の策を必死に模索する。一方、凡庸な社長は、不振の原因を部門長の責任に押し付け、自分では真剣に解決策を考えようとしない。この違いが、企業の成長や存続に大きな影響を及ぼすのだ。

よく考えてみてほしい。部門の長が、自らの意思だけで一体何を決められるというのだろう。その部門の事業内容、商品構成、価格設定、人的資源の配分、担当エリア(テリトリー)、そして事業方針そのもの――これらは基本的にすべて社長が決定している。部門の長は、その枠組みの中で動くしかない。したがって、部門業績の責任は最終的に社長に帰するべきものだ。

「自由にやらせている」と言う人もいるかもしれないが、その「自由」とは、すべて上述のような社長が決めた枠組みの中での限定的な自由にすぎない。ここで誤解してはならないのは、部門の活動に自由を与えることが正しい、という意味ではないという点だ。実際には、多くの場合、それは優れた経営判断ではなく、ボンクラ社長が「活動の自由」という名の下に責任を放棄した放任主義を取っているだけに過ぎない。この無責任な姿勢が、部門業績の悪化を招く要因の一つとなる。

優れた社長は、必ず明確で一貫性のある活動方針を打ち出し、そのもとで社員が動けるようにする。「自由な活動」などというものは、会社組織において存在してはならない。もしそれを許容すれば、会社全体に遠心力が働き、組織は文字通りバラバラになってしまう。

これを戦争に例えれば明白だ。各部隊が、さらにはその中の個々の兵士が自由に行動を取った場合、統制が失われ、戦略も崩壊してしまう。同じことが企業にも当てはまる。組織は、明確な方向性と指揮系統の下で統一された行動を取ることで、初めて力を発揮するのだ。

企業活動は戦争と同じだ。どんな社長でも、枠組みを勝手に変えることを許してはいない。部門の長が担っているのは、社長が決めた枠組みの中での実施責任にすぎない。その枠組み自体、つまり事業の方向性や戦略、資源配分を決めるのは社長の役割であり、部門長が独自にそれを変えられるわけではない。部門長の責任は、あくまで与えられた枠内での実行力を発揮することにある。

業績というものは、基本的な枠組みと方針によってほとんどが決まってしまう。したがって、業績が上がらない原因は明らかに枠組みが適切でないことにあり、その枠組みを設計したのは社長である以上、その責任は社長にある。部門の努力や工夫が影響を与えるのは、あくまで枠組みの範囲内での話であり、根本的な成果を左右するのは経営トップの判断なのだ。

もし「枠組みは良いが、部門長がダメだから業績が上がらない」と言うのなら、そのダメな部門長を任命した社長こそが責任を負うべきだ。さらに、「人材がいないから仕方がない」と弁解するなら、それは不適任と知りつつ任命した結果であり、そもそも業績を期待すること自体が間違っている。このような状況は単なる「形式主義」に過ぎず、責任を回避するための言い訳にほかならない。

形だけ整えても何の意味もない。適任者がいないのなら、社長自らがその役を担うべきだ。それができないのであれば、その部門を切り捨て、新たな方策を模索するしかない。それが経営の現実だ。現状に妥協して中途半端な状態を続けても、事態が好転することは期待できない。厳しい判断こそが、企業の未来を切り開く鍵となる。

「すべてが社長の責任なら、部門に分ける必要などないのではないか」という疑問を抱く人もいるかもしれない。しかし、部門ごとの分業や責任分担は、経営の効率性を高めるために必要不可欠だ。部門の存在意義は、全体の枠組みの中で特定の役割を果たし、実務を遂行する点にある。ただし、その部門が結果を出せるかどうかは、最終的には社長が設定した枠組みや方針にかかっているのだ。

この疑問に答えよう。会社の中には、さまざまな事業、部門、商品が存在する。その中で、どれが収益性が高く、どれが低いのかを把握することが重要だ。収益性の高いものには積極的に力を注ぎ、逆に収益性の低いもの、つまりお客様のニーズがないものは思い切って切り捨てていかなければならない。これが、企業を健全に成長させるための基本的な経営の原則だ。

そして、お客様の新たな要求に応える商品を開発していく。これこそが、事業における「スクラップアンドビルド」の実践だ。部門別に分けるのは、自らの事業経営に必要な情報を的確に把握するためであり、部門別に責任を押し付けるためではない。部門の役割は、あくまで経営判断を支えるデータや視点を提供することであり、責任の所在は最終的に社長にあるということを忘れてはならない。

この点を深く心に刻むべきだ。決して部門の責任者を追及してはならない。部門がうまくいかない原因は、根本的に枠組みや方針に問題があるからであり、それを決定しているのは社長自身だ。「会社の中でうまくいかないことは、何もかも社長の責任である」という言葉の意味は、まさにここにある。経営の結果を真摯に受け止める覚悟が、優れた経営者の条件である。

本社費の割り振りにおいて、もう一つ重要な点がある。それは「必ず事前に割り振る必要がある」ということだ。一方で、原価計算では必ず事後配賦(割り振りのこと)が行われる。

事後配賦が必要な理由は、原価計算そのものが過去のデータを基にした計算だからだ。数字が実際に発生しなければ計算そのものが成立しない。つまり、原価計算の専門家には「未来」という概念が存在しないのだ。(一方で、企業経営においては「過去」という概念は意味を持たない。過去の集積である「現在」を起点とした未来だけが重要なのだ。)

過去の実績を基にした割り振りにはさまざまな方法があり、これが原価計算の専門家たちを悩ませる大きな理由でもある。各企業の実情があまりにも多様で、統一的な「原則」を設定することが非常に困難だからだ。その中で最も一般的とされる割り振り方法が「売上高比例」である。

「売上高に比例させる」という方法は、一見合理的に思えるが、実際には多くの問題を引き起こす要因となる。この方法では、売上高が増えると割り振られる金額も増加し、逆に売上高が少ないと割り振られる金額も減少する。その結果、売上高の変動によって割り振り額が大きく左右され、必ずしも実態に即した分配とは言えなくなる場合がある。

このような割り振りを受けた部門が不満を抱くのは当然だ。「一生懸命に売上を伸ばせば伸ばすほど割り振り額が増える。逆に、売上が少ない部門は少なくなるほど負担も軽くなる。こんな理不尽はない」と、高業績を上げているある部門長が語った言葉がその典型的な例だ。努力が結果的に不利に働く構造では、やる気を損なうのも無理はない。

全くもってもっともな意見だ。一方で、業績の振るわない部門は沈黙を守る。下手に発言すれば、自らの状況が注目されて余計な責任を追及される可能性があるため、下手なことは言えないのだ。このような構図が、社内での不満や緊張感を助長する要因にもなっている。

考えるまでもなく、売上比例方式には明らかな矛盾がある。売上を上げれば上げるほど割り振り額が増え、その結果、部門の利益は削られる構造になっている。つまり、一生懸命働いて会社に貢献するほど、割り振りという名の「罰金」を科されることになる。この仕組みは、努力や成果が逆にペナルティとして返ってくる不合理を生み出している。

逆に、売上を下げて会社への貢献度が低くなると、「割り振りが減る」という実質的な褒賞金が与えられる仕組みになっている。これが褒賞金と言える理由は、多くの企業で、このような計算法に基づいた部門損益額をボーナスの査定基準として使用しているからだ。つまり、努力しない部門が優遇されるような状況を生み出しているのである。この矛盾は、会社全体のモチベーションや公正性を損なう大きな要因となり得る。

食べ物や金、土地をめぐる争いが恐ろしいのと同じように、不公平な割り振りは社内の不和を生み出し、会社全体に不穏な空気を広げる原因となる。原価計算の専門家たちは、こうした現実がどれほど深刻な問題を引き起こしているかなど、想像すらしていないだろう。机上の空論にすぎない理論を現場に押し付けることは、企業にとって大きなリスクだ。現場を知らない理論家の言葉に振り回されるのではなく、現実を踏まえた実践的な解決策を追求するべきである。

話を元に戻すと、共通費を事前に割り振るという考え方の根拠は、まず第一に、共通費の大部分が各部門へのサービス業務に由来している点にある。具体的には、集荷や配送、検査、資材保管といった直接的なサービスに加え、庶務、社会保険、給与計算、経理事務、資金管理、支払業務などの間接的なサービスが含まれる。これらの業務は、各部門の運営を支えるための不可欠な要素であり、その費用をどのように適切に分担するかが割り振りの前提となる。

もしこれらのサービスが存在しなければ、各部門がそれぞれ独自にこれらの業務を行う必要があり、そのためには追加の人員や費用が必要になる。共通部門がこれらの業務を担っているのは、直接部門へのサービスを提供するためであり、そのサービスに対する対価を支払うのは当然のことだ。このサービスに対する報酬が、「共通費の割り振り」であると解釈される。つまり、共通費は部門間での公正な負担として位置づけられるべきものであり、その存在意義は部門全体の効率向上にある。

これらのサービスは部門の業績とは無関係である。そのため、業績に基づかず、事前に割り振り金額を決定するのが合理的とされる。仮に、これらの業務を外部に委託した場合を考えてみると、当然ながら事前に年間の報酬額を契約することになる。会社の業績がどう変動しようと、この契約金額は基本的に変わらない。この点を踏まえると、事前に金額を決定し、年間を通じて不変とするという考え方には十分な説得力があるといえる。

もう一つの考え方として、事前割り振りで年間を通じて金額が不変であれば、部門の売上が増加するほど、割り振り額が「割安」になる。一方、売上が低迷すると「割高」になる。この仕組みによって、部門の責任者は努力の成果が公正に反映されていると感じ、納得しやすくなる。つまり、売上増加による負担軽減がインセンティブとなり、部門間での公平感が保たれるというメリットが生まれる。

業績が向上すれば、収益の増加がそのまま利益の増加として反映される。一方で、業績が不振であれば、割り振りが割高になり、収益減少分がそのまま利益の減少となる。この仕組みこそが、高業績を上げた部門に納得感を与え、業績不振の部門には売上高比例方式のような「甘え」を許さない構造を作るのである。事前配賦は、業績を正確に反映するだけでなく、部門の人々にも納得できる公平な仕組みと言える。

事業経営の結果は、そこで働く人々の気持に大きく影響される。その気持を最も左右するのが社長自身の姿勢であることは言うまでもないが、同時に、個々の活動についても社員が納得できる仕組みや方法で運営されなければならない。共通費の配賦のような一見細かな仕組みであっても、この原則が当てはまる。社員が不合理と感じる制度ややり方では、士気が下がり、経営全体に悪影響を及ぼすことは避けられない。

ではここから、収益性の判定方法について説明しよう。〈第37表〉を参照してほしい。これは、ある商社であるIT社の部門別利益計画表を示したものである。この表を基に、部門ごとの収益性や計画達成の状況を評価していく方法について具体的に解説していこう。

この表は、まず全社目標を設定し、それを各部門に割り振ったものであり、各部門の数字を集計して全社目標を算出したわけではない。ここが重要なポイントだ。事業経営において、各部門の数字を先に出してそれを合計する、いわゆる「積み上げ方式」を採用するのは明らかに誤りである。

全社目標は企業全体の方向性を示すものであり、トップダウンで設定されるべきだ。これを基に、各部門が自らの役割を果たし、その目標を達成するように動くべきである。積み上げ方式では、全社としての一貫性や方向性が欠け、結果的に企業全体のパフォーマンスを損なう危険がある。

もし積み上げ方式が正しいとするなら、その部門の売上目標は、まず商品別または得意先別の売上目標を細かく設定し、それを集計して算出する必要がある。しかし、実際には商品別や得意先別の目標設定自体が非常に複雑で、不確実性も高い。

また、この方法では部門や全社の戦略的な方向性が失われる可能性がある。商品や得意先の目標を単に積み上げていくだけでは、全社的な目標や市場環境の変化、経営資源の最適配分といった重要な要素を見落としかねない。事業経営では、全体を俯瞰した視点からトップダウンで目標を設定し、それに基づいて各部門や商品、得意先に役割を分担させるほうが合理的だと言える。

このようなやり方を採用すると、自然と「実績主義」に陥ってしまう。過去の実績を基に目標を設定すると、成長の余地が考慮されず、保守的な計画にとどまる可能性が高い。その結果、赤字を生むリスクが増大し、加えて市場占有率を向上させるための積極的な取り組みが困難になる。

実績主義では、過去の延長線上でしか計画を立てられず、市場や競争環境の変化に柔軟に対応することが難しい。このような方法では、企業が成長し続けるどころか、事業の存続すら危うくなると言える。未来志向の目標設定と戦略的な行動が、企業の競争力と持続的な成長を支える鍵である。

事業の目標は、「生き残るための条件は何か」という根本的な問いを基に設定されるべきだ。そのため、過去の実績に依存するのではなく、現在を出発点とし、未来を見据えた前向きな目標でなければならない。

このような考え方に基づき、T社の利益計画は策定された。生き残りをかけた条件を明確にし、それを達成するために必要な行動と資源配分を計画に落とし込むことで、過去の枠に縛られない柔軟で挑戦的な目標が可能になる。このアプローチが、T社の収益性と市場競争力を支える基盤となっているのである。

目標数字のうち、括弧内に記載されている数字は、部門に関連するものであり、全社目標の計算には含めない。この点を正確に理解してもらうために、念のため括弧内の数字を除外して再計算し、確認してほしい。これで、全社目標がどのように算出されているかを納得してもらえるはずだ。

この〈第37表〉でまず目につくのは、各部門の固有の固定費だけを計上して部門営業利益を算出し、その後に本社費配賦を差し引いて、本社費負担後の部門利益を計算している点だ。このように部門利益を二段階で計算する理由について疑問を抱くかもしれないが、それには以下のような理由がある。

  1. 部門固有の業績評価のため
    各部門が自らの業務努力によって生み出した利益を明確に把握するため、まず部門固有の固定費だけを引いて営業利益を算出する。この段階で、部門の純粋な業績を評価できる。
  2. 本社費の公平な配賦を考慮するため
    本社費は全社的な運営に関わるものであり、直接的に部門ごとの業績に結びつくものではない。そのため、本社費を配賦した後の部門利益を別途計算することで、全体的な負担構造と部門間の公平性を明確にする。
  3. 業績向上のインセンティブを保つため
    部門固有の営業利益を先に計算し、それを基に部門の努力を評価することで、部門責任者やスタッフのモチベーションを高める。その上で本社費の負担を反映させることで、現実的な全体利益の分布も示せる。

この二段階の計算は、部門ごとの業績評価と全社運営のバランスを取るための重要な仕組みとなっている。

部門別計算の目的は、「部門の収益性を明確にする」ことにある。そのため、部門固有の活動で発生する数字だけを基に算出する必要がある。その結果得られる部門営業利益こそが、その部門の収益性を測る指標となる。

それに対する疑問ももっともだ。「部門固有の固定費は、その部門で発生したことが確認できる数字でなければならない」とするなら、通信費、事務用品、水道光熱費といった、部門で発生しているものの正確な金額が把握できない費用を計上しないのは問題だ。その結果、部門の収益性を正確に把握できないのではないか、という疑問が生じるのは当然のことである。

もっともな疑問だが、心配は不要である。なぜなら、通信費や事務用品、水道光熱費といった費用は、各部門の人数に応じてほぼ同じ割合で消費される傾向があり、絶対額が小さいため、部門利益の判定に重大な影響を与えることはない。さらに、それらの費用は本社費として人数に応じた配分が行われるため、全社的には誤りのない正確な数字を把握できる仕組みになっている。

そもそも部門利益は、絶対額を正確に把握する必要はなく、一定の誤差範囲内に収まる「信頼度」があれば十分である。というのも、部門利益は絶対額ではなく、「部門収益性の比較」を目的とするものだからだ。比較を行う場合、全ての部門が同様の誤差を含んでいれば、それらは相殺され、影響を与えない。この前提に立てば、誤差を過度に気にする必要はない。それでは、話を元に戻そう。

部門営業利益の目的は、「その部門が自らの費用を賄えるかどうか」を確認することにある。もし部門利益が「赤字」であれば、その部門の事業が会社全体にとって負担となっていることを意味する。この指標を使うことで、部門ごとの収益性や効率性を明確に評価し、必要な改善策を検討するための基盤が得られる。

たとえ赤字ではなくとも、わずかな利益しか出ていない場合は、未計上の確認できない費用が存在することを考慮し、「実質的には赤字」と判断するのが正しい。社長としては、常に「安全サイド」に立って物事を考える必要がある。万が一、赤字と判定される状況であれば、まずは出血を止めることが最優先課題となる。この判断が事業全体の健全性を保つための鍵となる。

更生会社に乗り込んだ再建社長が最初に取り組むのは、必ず「出血を止める」ことである。このことからも、赤字事業を迅速に改善する重要性が理解できるだろう。(参考として、会社再建の名人である大山梅雄氏の著書『会社再建の秘訣』(ダイヤモンド社刊)をぜひ参照してほしい。)

十分な利益が出ている場合は、その利益が共通費を賄えるかどうかを確認する。これが、共通費負担後の部門利益の評価である。理想的なのは、部門利益が大きく、共通費を十分にカバーできることであるのは言うまでもない。そしてここでも、「部門間の比較」が非常に重要となる。比較を通じて、どの部門が効率的に収益を上げているのかを明確にし、経営資源を適切に配分する判断材料を得ることができる。

先に商品で「出血」「貧血」「健康」という判定方法を述べたが、部門でも同様の判定が可能である。部門利益が「赤字」であれば「出血部門」、部門利益は出ているものの共通費負担後に「赤字」となる場合は「貧血部門」、共通費負担後でも利益が出ていれば「健康部門」と分類できる。

〈第37表〉では、「出血部門」はないものの、「貧血部門」が1つ存在する。それがB営業所だ。一方で、残りの部門はすべて「健康部門」となっている。これらの判定に基づく対策の取り方は、商品における対応と基本的に同じである。例えば、貧血部門にはコスト削減や収益向上策が必要であり、健康部門にはさらに成長を促すための支援が適切である。

以上が、部門利益を二段計算する理由であり、この手法の必要性を示す根拠でもある。一方で、伝統的な原価計算では、「共通費を部門に配賦し、それを部門経費として扱い、部門利益を算出する」という方法が一般的だ。しかし、この方法では、部門ごとの収益性を正確に判定することができない。共通費を部門の経費として一律に配賦すると、実際の部門ごとの収益性や問題点が隠れてしまい、適切な経営判断を下す妨げになるからだ。そのため、二段計算はより正確な収益性評価のために不可欠な手法と言える。

これは、共通費がその部門で直接発生したものではないからだ。そのため、部門収益性を測定する際に、その部門以外で発生した数字を無理に含めてしまうと、「真実の姿」を把握できなくなる。部門別計算を行う目的は、各部門の収益性や効率性を正確に評価することにある。それにもかかわらず、他部門に関係する共通費を加えるのでは、部門ごとの実態が曖昧になり、そもそも部門別計算を行う意義そのものが失われてしまう。

もう一つ説明すべき重要な点は、本社部門の損益についてだ。伝統的な会計理論では、本社費、つまり共通費を全額各部門に配賦し、本社自体はその負担を一切持たない形をとる。このやり方は、配賦を受ける部門にとって非常に不満の種となる。なぜなら、これらの共通費は部門の裁量でコントロールすることができない費用だからだ。

部門としては、これらのコントロール不能な費用を一方的に押し付けられる形になるため、経営の公平性に疑問を持ち、モチベーションの低下を招くことがある。本社費の扱い方には、このような現場の実態を踏まえた慎重な配慮が必要である。

F社で、新任の総務部長が、いわゆる「原価病」に取り憑かれたように原価計算制度の導入を提案したときのことだ。総務部長は、原価計算の権威として知られる大学教授の指導を受け、徹底した原価管理制度を構築した。この制度は、理論的には精緻で完成度の高いものだったが、実際の運用面では多くの課題を抱えることになった。その背景や結果について詳しく説明していこう。

製造部門では、徹底した原価管理制度のもと、部品ごとに所要加工時間の詳細な報告が求められただけでなく、プロパンガスや溶接棒の型式別使用量、不良品の発生数まで細かく報告することが義務付けられた。このような細分化された管理は、理論上は正確な原価計算を可能にするものの、現場にとっては大きな負担となり、作業効率や士気への影響が懸念された。

その他の部門でも、トラックの使用状況や倉庫の在庫費用、検査工数、資材係や購買係の業務に至るまで、型式別の使用区分や投入労力の割合を毎月詳細に報告することが義務付けられた。しかし、現場での実態は、これらの報告があまりに細かすぎたため、各部門は適当に「もっともらしい数字」を作り上げて報告していた。このような形式的な対応は、制度の信頼性を損なうだけでなく、現場の負担を増やし、結果として実効性の低い管理体制を生む原因となった。

経理部門では、これらの細かい数字を集計するために新たに4名もの大学卒の人員を採用し、大車輪で計算を進めていた。一方で、各部門は増えた余分な仕事に対して不満をこぼしていた。その理由は明白で、現実とはかけ離れた「ウソっぽい数字」を報告しなければならない無意味さが、彼らにとって非常にストレスフルだったからだ。無駄だと分かっていながら、それをやり続ける仕事ほど嫌なものはない。この状況は、現場の士気を下げ、組織全体の効率を損なう結果を招いた。

製造部門に至っては、増員された経理部門の人件費をはじめ、増大した費用の全てが部門に配賦される仕組みとなっていた。その結果、原価が高くなり、部門利益が減少したことで、社長から叱責を受ける羽目に陥った。現場の声としては、「原価計算のために原価を引き上げ、その負担を我々に押しつけているじゃないか」という不満が噴出していた。このような状況は、原価計算本来の目的を逸脱し、現場に無駄な負担を強いるだけの悪循環を生んでいた。

増員された経理部門の長には一切の責任が問われず、すべて製造部門の責任とされる状況に、製造部門の人々は激怒していた。「こんなバカげた話があるか」と声を荒げる者も少なくなかった。一方で、総務部長や経理部門以外のすべての部門の人々は、原価計算の導入に熱心な経理課長を冷ややかに見ていた。その理由は簡単で、原価計算制度をどれだけ導入しても、原価が下がるどころか、逆に上がることを彼らは現場での経験から知っていたからだ。この話は、実際に起きた事例であり、現場と理論の乖離がいかに組織全体に悪影響を及ぼすかを如実に物語っている。

こんな馬鹿げた状況は、何もF社に限った話ではない。原価計算を採用している多くの企業で、共通費はその実績額が全額商品や製造部門に配賦され、それがそのまま製造部門の責任として扱われている。一方で、実際に共通費を消費している部門には、原価計算の制度上、何の責任も問われない。このような構造的な問題が、製造部門にとって大きな不満の原因となっている。

もちろん、原価計算制度とは別に、共通費の削減や経費節約が行われることはある。しかし、それが原価計算制度と連動しない限り、こうした不公平な状況が解消されることはない。この矛盾が多くの企業で見過ごされている現実が問題なのである。

こんな状況では、一体何のために原価を計算しているのか分からない。計算をするからには、実際に役立つものでなければ意味がない。その「役に立つやり方」が、この〈第37表〉に示されている。

この表では、本社費が一般管理費や販売費として計上され、その金額は5,650万円に達している。このように、本社費の全貌を明確にした上で、各部門の収益性を評価し、課題を見極めることが重要だ。このアプローチこそが、原価計算を単なる数字合わせではなく、実際の経営に貢献させる方法となる。

この本社費は各部門に配賦されているが、その配賦額は「各部門へのサービス料」として捉えることができる。このサービス料を本社の収入と見なすため、本社の粗利益欄に収入として記入している。ただし、実際には現金収入が発生しているわけではないため、その金額を括弧で囲んで記載している。

この手法により、各部門が本社費の負担を適切に認識できると同時に、本社費が経営全体でどのように分配されているのかを明確化している。こうした配慮が、原価計算をより実務的で役立つものにしている。

この仕組みによって、本社にも収入と支出があることが明確になり、本社部門の損益計算が可能となる。本社部門の収入は、各部門に配賦されたサービス料として、年額が固定されている。そのため、もし本社の支出がこの収入を上回れば、本社部門自体が「赤字」となる。

このように本社部門の損益を明確化することで、共通費の使い方や管理の妥当性を検証できる仕組みが整う。本社部門の赤字が発生する場合、それは全社的な経営改善の必要性を示す重要なシグナルとなる。

この仕組みでは、本社費を部門に配賦して「涼しい顔」をしているわけにはいかなくなる。本社部門が利益を出すためには、本社費を5,650万円以内に抑える必要があるからだ。この制約により、本社部門もコスト管理や効率化に取り組む動機が生まれる。

本社費が適切に管理されない場合、それが即座に赤字として現れるため、責任の所在が明確になる。この仕組みは、全社的なコスト意識の向上と、経営全体の健全性を保つための重要な手段といえる。

この仕組みによって、初めて全社のすべての部門の損益計算が可能となり、部門計算の本来の目的が達成される。同時に、本社費を配賦される各部門の人々も、その負担が適切であると納得できるようになる。

このように、本社部門の損益を明確化し、全社的な視点で費用配分を行うことで、部門間の不満を軽減し、経営全体の透明性と公平性を高めることができる。このアプローチこそが、部門計算を実務に役立つものとし、企業全体のパフォーマンス向上に貢献する。

部門別や営業所・店舗ごとの収益性を正確に測定するためには、以下のような考え方や手法が有効です。共通費の扱い方や、部門ごとの収益性の計算を正しく行うことで、社内の部門責任者が納得しやすい損益管理が可能となり、経営判断がより確実なものになります。

1. 共通費の扱い方

部門別収益性を正確に測定する際、共通費(全社的な経費)は直接部門に割り当てるのではなく、会社全体として一括で計上します。これにより、各部門の純粋な収益力が見えるようになり、部門ごとの実態がより明確になります。共通費の無理な割り当ては、部門ごとの収益性を歪めるため、誤った経営判断の原因になります。

2. 固有固定費の計算

各部門の固有固定費(その部門に特有の費用)は、信頼できる範囲内での計上に留め、不確実な数字は含めないようにします。たとえば、疑わしい費用や推定に基づいた数字は計上しないことで、部門ごとの費用構造を精度高く反映することが可能です。

3. 収益性のランク分け

部門別に「出血部門」「貧血部門」「健康部門」として分類します。収益性が低い部門(出血部門)については、適切なスクラップアンドビルド(不採算部門の廃止と新規部門の構築)を行うなど、リソースの効率的な活用が求められます。

4. 本社費の事前割り当て

本社費(共通費)は事前に固定して各部門に割り当て、年度内で変動させないようにします。これにより、業績が良い部門は相対的に低い割当額となり、業績が悪い部門は負担が大きくなるため、部門間の公平性が保たれます。業績が良い部門の努力が報われる仕組みを作り、全社的な収益性の向上を促します。

5. 本社部門の収益管理

本社費を各部門への「サービス料」として配賦し、それを本社の収入とみなして、本社部門にも損益計算を行います。こうすることで、全社の損益を統合的に管理し、本社部門も収益性を意識した経営が可能となります。

6. 部門の損益計算の二段階構成

部門ごとにまず固有の固定費を控除した「部門営業利益」を計算し、その後に共通費を配賦して「共通費負担後の部門利益」を計算します。これにより、部門の収益性と全社的な負担の両面を把握でき、どの部門が収益に貢献しているかが明確になります。

7. 経営目標の設定

会社の全社目標をもとに、各部門の利益計画を策定します。この際、「積み上げ方式」(部門別に目標を出して集計)ではなく、全社の目標から部門別に割り当てることで、前向きな目標設定が可能です。

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