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防衛兵器

R社で工程管理の改善に取り組んだ際の話だ。そこは典型的な受注一品生産の現場で、季節による需要の変動が大きい上に、短納期対応が求められ、さらに突発的な案件も頻繁に発生するという厄介な状況だった。

混乱の原因は、無計画な受注にあった。このため、受注時に工数の山積みを行い、それに基づいて次の受注の納期を調整するという方法を採用することになった。

同時に、外注業務も調整のクッションとして重要な役割を果たしていたため、調査の重点対象となった。外注係の帳票を確認していると、「外注品完成台帳」というものが目に留まった。これがまた、実に奇妙な台帳だった。

外注係の役割は、これから外注する業務の計画を立てることと、現在進行中の外注業務を推進することにある。一方で、外注先から完成品が戻ってきた時点で、その仕事はすでに役割を終えているはずだ。そう指摘すると、外注係は「それは確かにそうですが……やっぱり、何が入ったのか記録は残しておかないと……」と、言葉を濁すばかりだった。

そこで追及をやめた。理由は明白だった。その台帳は彼の仕事に実質的に必要なものではなく、言い訳の材料として存在していたからだ。納期が遅れると、現場では外注品の遅れが原因だと主張する。すると、今度は外注係が責任を問われる。その際に、この台帳が「証拠書類」として彼を守る盾になるのだ。

会社の中には、このように責任逃れのために作られた証拠書類が意外に多い。しかし、私はそれを非難する気にはなれない。なぜなら、それは正当防衛とも言える行為だからだ。組織内の責任追及から自分を守る手段として、必要に迫られて生まれるものなのだろう。

トップや上司が成果を上げるための具体的な指導を行わず、不達成の責任をただ追及するだけであれば(そして、マネジメントの専門家たちがそのやり方を是として教えている限り)、こうした「防衛兵器」は決してなくなることはないだろう。それは、まるで死んだ子の年を数えるような無意味な行為が組織内に蔓延し続ける構造そのものを象徴しているかのようだ。

この事例では、R社が抱える工程管理の問題や無計画な受注が引き起こす混乱が描かれています。特に、外注業務の管理や、外注品の完成台帳に関連した問題が強調されています。この台帳が、実際には業務改善のためではなく、上司や経営層からの責任追及を避けるために作成されているという点が注目されます。

経営や現場での「防衛兵器」として、無駄な証拠書類や言い訳が作られるという現象は、上司や経営者が適切な指導や成果を求めない場合に起こりがちです。部下や担当者は、必要な改善を行うのではなく、自分たちが責任を問われることを避けるために、形式的な手続きや証拠を積み重ねていくのです。

ここで重要なのは、上司や経営者が成果をあげるための適切な指導やマネジメントを行わず、責任を過度に部下に押し付けることで、実務を進めるために必要な「防衛兵器」が生まれるという点です。このような状況では、業務の効率化や改善が進まず、逆に無駄な手続きや証拠書類が増えるだけです。

「防衛兵器」は、企業や組織が健全に機能するためには、上司と部下、経営層と現場の間で適切な信頼関係と指導が必要であることを示しています。成果をあげるためには、責任の追及ではなく、改善のための実行とサポートが重要です。

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