一心不乱が難しければ、日々の実践から始めよ

■引用原文（日本語訳）

「もしあなたが心を堅く私に集中することができないなら、常修のヨーガによって私に達することを望め。アルジュナよ。」
（『バガヴァッド・ギーター』第12章 第9節）

■逐語訳

アルジュナよ、
もしあなたが、心を揺るぎなく私に集中させることができないならば――
継続的な修行（アビヤーサ・ヨーガ）によって、
私に到達することを願いなさい。

■用語解説

• 心を堅く集中（マイイ・ステェィラム・マナハ）：心を完全に神（または信念）に定め、ぶれずに保つこと。
• 常修のヨーガ（アビヤーサ・ヨーガ）：繰り返し実践する修行。小さなことでも日々続ける努力の道。
• 達する（マーム・イチチャ）：神（あるいは理想・目的）と一体化する、成就するという意味。
• できないなら（ナ・シャクノシ）：否定的に見えるが、現実的な代替手段を提案する柔軟な表現。

■全体の現代語訳（まとめ）

「もしあなたが、心を完全に私に集中することが今できないのであれば、日々の修練（常修）という道によって、私に到達することを志せ」――とクリシュナは、実践的で段階的な道もまた認めて励ましている。

■解釈と現代的意義

この節は、「一途な集中ができないからといって、あきらめる必要はない」という希望の教えです。
最初から理想の精神集中ができる人はまれであり、繰り返しの努力こそが集中と信念を育てる道であるとギーターは説きます。

これはまさに、「才能よりも習慣」「意志よりも日々の積み重ね」を重視する現代的な学習論・成功哲学とも一致しています。

■ビジネスにおける解釈と適用

観点	適用例
スキル習得と継続	最初は集中できなくても、毎日の反復と努力で実力は必ず積み上がる。継続こそ力。
理想の働き方に向けて	完璧な働き方ができなくても、「少しずつ理想に近づく実践」を重ねることで自己変革は可能。
リーダー育成	生まれつきのカリスマでなくても、日々の行動と訓練の積み重ねが人を育てる。

■心得まとめ

「高みに届かぬときは、足元から踏み出せ」
心を完全に定めることができなくても、失望する必要はない。
道は、日々の実践と努力によって開かれていく。
理想を信じ、今日できる小さな一歩を重ねる者が、やがて大きな到達を果たすのだ――ギーターはその確信を与えてくれる。