自分自身が正しい姿勢と行動を持たなければ、社員にそれを求めることはできない。社員は、社長の姿勢や行動を完全に手本として見る存在であることを常に意識する必要がある。
会社はお客様の存在によって成り立つ。お客様がいなければ事業は生まれず、信頼を失えば会社は存続できない。この当たり前の事実を、何度でも繰り返し伝える必要があると実感している。そして実際に、これまで何千回、何万回と伝え続けてきた。これからも、自分が現役である限り、その思いを発信し続ける覚悟だ。
世の中のいわゆる社長という人種は、驚くほどお客様のことを考えていない。そして、お客様を無視する会社が業績を伸ばすことは期待できない。一時的に時流に乗って繁栄することがあっても、流れが変わればあっという間に没落していく。それが現実だ。
外食産業はその典型例だ。昭和50年頃にファミリーレストランを中心に巻き起こった大ブームも、今や過去の栄光に過ぎない。現在では完全に淘汰の時代に突入している。
ブームが始まった頃、私は「外食産業は数年で行き詰まる」と予測していた。その根拠は明確だった。外食産業を率いる社長たちが、お客様のことを真剣に考えていなかったからだ。ただ利益を追い求めるだけで、顧客の満足や信頼を築くことに目を向けていなかった。その結果が今の状況だ。
「ファミリーレストランは、あまり『おいしくない』方がよい」というような定説じみた考え方まで存在していた。この発想自体、お客様を見下しているとしか言いようがない。そんな態度で運営されていたのだから、物珍しさが薄れた瞬間に、お客様が離れていくのは当然の結果だった。
だからこそ、会社の考え方や行動のすべては、お客様の要求を出発点とし、最終的にそこへ戻ってくるものだ。お客様の要求を満たすということは、手間がかかり、効率も悪く、費用も増える。それでも、この事実をしっかりと心に刻み、ひたすらお客様の満足だけを追求していれば、道を誤ることはない。
注意すべきは、「値引き」「安売り」「無料」といったサービスのあり方だ。これらは確かに一種のサービスではあるが、販売政策や感謝の意を込めた特別な施策として会社が意図的に決めたもの以外で行うべきではない。安易な値引きや無料サービスは、会社の価値を損ない、顧客との関係を歪める原因となりかねない。
これをむやみに行えば、会社に必要な収益が確保できず、結果として会社は破綻してしまう。会社を潰すような行為は、どんな理由があろうと許されるものではないのは明白だ。その中でも特に避けるべきなのが、長期にわたる無料サービスだ。これこそが会社の体力を奪い、最終的には自らの首を絞める最悪の手段である。
あるガソリンスタンドで長年続けていた無料洗車サービスを有料に切り替えたところ、お客様からのクレームが相次いだ。その原因は明白だ。無料で提供していたがゆえに、スタッフが知らず知らずのうちに洗車の質を軽視し、正しいサービスを提供できていなかったからだ。無料であることが、サービスの本質を曇らせてしまっていたのだ。
お客様の要求を満たすためには、まずその要求を正確に知ることが必要だ。そのためには、社長自身が直接お客様のもとへ足を運び、自らの目で見て、耳で聞き、肌で感じ取ることが不可欠だ。現場に立って初めて得られる生の情報こそが、お客様の真の声であり、それを知ることからすべてが始まる。
社長が自らお客様のもとへ足を運ばなければ、お客様の真の要求を知ることは絶対にできない。この点については、この「社長学シリーズ」で何度も実例を挙げながら強調してきた。そして、私が直接企業を訪問しサポートを行う際に、まず最初に社長に勧めるのも、まさにこの「自ら現場に出向く」という行動だ。それが経営の出発点であり、最も重要な基本であるからだ。
私の助言に従い、社長が自らお客様のもとを訪れるようになると、その瞬間から会社は確実に変わり始める。そして、社長が継続してお客様の現場を回り続ける限り、その会社の業績は間違いなく向上し続ける。お客様の声を直接聞き、それを経営に反映させることが、会社の成長を支える原動力となるのだ。
一方で、どれだけ私が繰り返し強く勧めても、お客様のもとへ行こうとしない社長もいる。また、しぶしぶ始めたものの、形だけ数回回って満足し、それで終わりにしてしまう社長もいる。理由は様々だが、多くの場合、「他の用事があって回れない」といった言い訳に終始している。その姿勢では、会社の変革も成長も望むべくもない。
私は常にこう伝えている。「社長がお客様のもとへ足を運ぶことは、社長として最も重要な仕事である。お客様の要求を知らなければ、正しい事業経営は成り立たない。一番大切なことを放棄して、他の用事を理由にするのは本末転倒だ」と。しかし、実際のところ、こうした社長はお客様のもとへ行く気がないのだ。それは明らかに社長としての怠慢であり、自己中心的な姿勢と言わざるを得ない。そんな態度では、事業の未来を語る資格はない。
長年の経験から言えるのは、こうした社長が会社の業績を上げることはまず不可能だということだ。お客様の声に耳を傾けることを拒み、自ら行動しない姿勢では、どんな助言をしても効果はない。だからこそ、私としてはそのような社長への支援を辞退するほかに道はない。真剣に変わろうとしない相手に手を差し伸べても、時間と労力の無駄になるだけだ。
お客様こそ事業のすべて
企業は、お客様の存在によって初めて成り立つ。お客様がいなければ、事業は始まらず、顧客に見放されれば企業は崩壊する。この当たり前の原則は、経営の根本でありながら、しばしば見過ごされがちだ。
多くの経営者が、お客様のことを優先して考えないために、業績は一時的に好調でも、時流の変化とともに失速し、淘汰の運命をたどることが多い。昭和50年代に流行したファミリーレストランの例はその典型で、業界は急成長したが、お客様のニーズを真摯に追求しなかったため、ブームが去ると衰退に向かってしまった。
事業経営の出発点と到達点
企業の活動や判断は、すべてお客様の要求から始まり、そこに帰結する。お客様の要求を満たすには労力と費用がかかるが、経営者がその大変さを引き受ける覚悟を持たなければならない。低価格や無料サービスの乱用はかえって会社を衰退させる危険性がある。お客様のためと称して必要な利益を放棄することは、事業を支える土台を壊しかねない。
顧客理解の重要性
お客様の要求を理解するためには、経営者自らが現場に赴き、顧客の声に直接耳を傾ける必要がある。経営者が実際にお客様と接することで、表面的には見えないニーズや改善点を発見し、組織全体のサービス向上に活かすことができる。私の経験では、経営者が積極的に顧客と向き合う姿勢を持つ企業ほど、業績が向上し続ける傾向がある。
お客様を優先する意識の持続
お客様の要求に耳を傾ける姿勢を持たない経営者がいる場合、企業の成長は望めない。用事を理由に顧客との接点を避けるのは本末転倒であり、事業の本質を見失っている証拠だ。経営者にとって最も重要な役割は顧客のニーズを知ることであり、怠慢や自己中心的な姿勢では、企業の発展は難しい。
事業経営は、お客様への奉仕がすべてであり、この基本を貫くことが企業の成長と繁栄を支える。
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