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顧客の好みはどう変ってゆくのか

最近、婚礼家具は二点セットが主流になりつつあると、ある家具店の店主が話していた。以前、婚礼家具といえば三点セットや四点セットが一般的だったが、どうやら時代とともにその傾向が変化してきたようだ。

その理由として、最近増えている団地のような狭い住宅では、三点セットや四点セットを置くスペースが確保できないからだという。その店主はそう語っていた。こうなると、メーカー側も対応を考える必要が出てくる。三点セットや四点セットがそのまま売れるケースもあれば、一部の二点だけが購入されることもあるからだ。二点だけが売れた場合、残りのセットが余り、それを補充する形で別途購入される状況も生まれる。

この状況では、メーカーは少なくとも一年間はモデルチェンジを避けざるを得ない。モデルを変更すると、小売店が補充で買い足そうとしても対応できなくなるからだ。結果として、こうしたメーカーの商品は小売店に敬遠され、販売網の信頼を失うリスクが高まる。

婚礼家具を手がけるメーカーの多くは、婚礼家具専門の事業を展開している。そして、その製品ラインナップは決して多くはない。理由は明白で、婚礼家具のように手間と技術を要する製品では、数多くの型を生産するのは現実的に難しいからだ。

もし新型が売れなければ、メーカーは一年間も売れ残りの商品を抱え込むことになり、大きな負担となる。このため、確実に売れる商品を作り出さなければならないという難題に直面する。その一方で、売れた商品だけを補充生産するという手間のかかる対応も求められる。こうした状況が、メーカーにとって避けられない課題となっている。

顧客の好みは、時代の流れとともに変化していく。特に石油ショックを境に、その変化は顕著になった。それまで「消費は美徳」という価値観が支配していた使い捨ての時代から、「節約は美徳」という考え方が主流となったのだ。この変化により、修理業や修繕業者が大忙しとなり、補修部品の需要も急増している。すべてが実質を重視する時代へと移行していることを物語っている。

当然のことながら、これまで売れていた商品が売れなくなり、逆に売れなかった商品が売れるようになる。こうした需要の逆転は、売れなくなった商品を生産していたメーカーや、それを取り扱っていた流通業者にとって大きな打撃となる。この変化に対応できなければ、彼らは市場での立場を失いかねない。

売れなくなってから対策を講じても遅い。市場の変化の兆候をいち早く察知し、それに対応する手を迅速に打つ必要がある。そのためには、まず顧客の声や購買傾向を徹底的に観察し、分析することが欠かせない。加えて、定期的に市場調査を実施し、消費者のニーズや価値観の変化を的確に把握することが重要だ。また、流通業者や販売店との緊密な連携を図り、リアルタイムでの情報共有を進めることで、変化に対応するスピードを高めることが求められる。

商品というものは、水物や流行に左右される際物を除けば、急激に売れなくなることは稀だ。一般的には、売れ行きが徐々に鈍化し、やがて頭打ちになり、そこから少しずつ下降していくという過程を辿るのが常だ。この緩やかな変化をいち早く捉えることが、市場の流れに対応するための鍵となる。

この過程は、売上高年計グラフ(経営戦略篇三二一頁参照)を分析すれば把握できる。しかし、グラフだけに頼るわけにはいかない。グラフに反映されるのは、顧客の好みの変化だけではなく、他社の市場参入や競争の激化による「割り込み」の影響も含まれているからだ。売上の変動には多くの要因が絡み合っており、それぞれを正確に読み解く必要がある。グラフはあくまで全体像を示す一つのツールに過ぎず、その背後にある具体的な動きを深く掘り下げることが重要だ。

したがって、年計グラフだけに頼るのは不十分だ。外部情報を的確に収集し、そのデータをもとにグラフを読み解くことで、初めて正確な状況判断が可能になる。市場動向や競合他社の動き、さらには顧客の潜在的なニーズを踏まえた情報を統合することで、グラフの数字だけでは見えてこない背景や要因を明らかにすることができる。こうした総合的なアプローチが、適切な戦略を立てるための土台となる。

外部情報を的確に把握するには、セールスマンからの情報だけに依存するのは不十分であり、むしろ偏りが生じる危険がある。セールスマンの情報には、常に彼ら自身の利害が絡んでおり、不都合な事実や自身に不利となる情報が隠される可能性がある。これでは全体像を正確に掴むことができないため、情報収集には他のルートや方法を組み合わせる必要がある。例えば、顧客アンケートや市場調査、第三者の分析データなど、セールスマン以外の視点からも情報を取り入れることが重要だ。

外部情報を正確に把握するには、セールスマンの情報だけに頼るのは極めて偏りが生じやすい。セールスマンが提供する情報には、常に自身の利益や立場が影響を及ぼし、不利になるような事実は隠されるか歪められることがあるためだ。このため、情報収集には複数のルートを用意し、セールスマン以外の視点や手段を取り入れる必要がある。例えば、顧客の直接の声を集めたり、第三者のデータや市場分析を活用することで、より客観的でバランスの取れた情報を得ることが可能になる。

ある社長が、「うちのセールスマンは、うちの競合商品でうちより安いものの情報しか持ってこない」と笑っていたが、まさにこれが実情だ。セールスマンの情報というものは、自分たちの有利な点を強調し、逆に不利な点や都合の悪い情報には目を向けない傾向がある。そのため、こうした偏りを前提にしながらも、情報の裏を取る作業が欠かせない。市場を正確に見極めるには、セールスマンの情報に加え、外部の独立したデータや広い視野での分析が必要だ。

重要な情報をセールスマンから得られると考えるのは誤りだと思うべきだ。それどころか、会社の将来を左右するような重要な情報収集をセールスマン任せにすること自体、経営者としての怠慢にほかならない。社長自らが外部に足を運び、現場の声を直接聞き、競合の動きや市場の変化を自分の目で確認しながら情報を集めるべきである。これこそが、正確な判断と迅速な対応を可能にし、会社を次のステージへ導くための責務だ。

同じ物事を見聞きしても、社長とセールスマンでは捉え方の次元が全く異なる。社長自身が現場に足を運ぶことで、相手側も責任ある立場の人間が対応するため、得られる情報の質も次元の高いものとなる。こうした直接のやり取りでは、表面的な情報だけでなく、経営戦略や市場動向など深い洞察につながる貴重な情報を手に入れることができる。この差が、企業の将来を左右する重要なポイントとなる。

顧客の好みの変化と情報収集の重要性

顧客の好みはどう変わるのか

顧客の好みは社会の変化や環境の影響を受け、常に変化しています。例えば、婚礼家具のトレンドが三点セットや四点セットから二点セットに移行した背景には、住宅事情の変化やスペースの制限があります。こうした変化をいち早く察知し対応することが、販売や製造の現場での生産性向上に直結します。

顧客ニーズへの適応

顧客のニーズが変わる兆候を見逃さないことが重要です。商品が急に売れなくなることは少なく、徐々に売れ行きが鈍化していく傾向にあります。この変化を売上高年計グラフなどで捉えることも有効ですが、単にグラフだけでは不十分であり、他社の動きや市場のトレンドも加味する必要があります。

正確な外部情報の必要性

外部の状況を正確に把握するためには、セールスマンに情報収集を任せるだけでは偏った情報に依存するリスクがあります。セールスマンは、自身の売上に直接関わる情報には敏感であるものの、企業全体の戦略に資するような情報には関心が薄い場合が多いです。

社長自らが情報を集める意義

社長自身が外部に出向き、情報を収集することは、会社の将来を見据えた重要な活動です。社長の立場であれば、取引先や顧客からより上位の情報を得られることが多く、戦略的判断に役立つ深い洞察を得やすくなります。また、社長自らが動くことで、情報の精度と価値が上がり、迅速な市場対応が可能となります。

まとめ

  • 顧客の好みの変化: 社会や住環境の影響を受けて、顧客ニーズは変化していくため、兆候を見逃さずに対応する必要がある。
  • 売上データの活用: 売上高年計グラフなどで徐々に落ちる売れ行きや頭打ちの兆候を捉え、変化の背景を多面的に分析する。
  • 外部情報の収集方法: セールスマン任せにせず、社長自らが外部に出て情報を収集し、より高次元の情報を得る努力が求められる。
  • 市場戦略の判断: 社長が得た情報をもとに、即時に戦略的な決定を行うことで、変化する市場環境に柔軟に対応し、競争優位を確保する。

顧客の好みの変化に対応するためには、販売や製造戦略を定期的に見直し、外部情報を積極的に取り入れることが肝要です。

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