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志は乳とともに育てよ


一、章句(原文)

山本前神右衛門は、一門の子供、当歳子にても耳に口を寄せ、「大曲者になりて殿の御用に立ち候へ」と申し候。「未だ聞分けぬ時より、耳に吹込みたるがよし」と申され候由。
(聞書第六)


二、現代語訳(逐語)

私の父・山本神右衛門は、一門に子どもが生まれると、生後まもない赤子の耳元に口を寄せ、
「お前は大きな人物になって、主君のお役に立つのだぞ」と語りかけた。

そして常にこう言っていた――
「子どもは物心がつく前から、覚悟や志といった“根性”を、耳から吹き込まなければならぬ」と。


三、用語解説

用語意味
大曲者(おおまがりもの)大人物・傑出した人物の意。ここでは「志の高い武士」を意味する。
御用に立ち候へ主君のために尽くすこと。忠義の実践。
吹込みたるがよし小さい頃から言葉を吹き込むことが望ましいという教育観。

四、全体の現代語訳(まとめ)

父・神右衛門は、赤ん坊のときから「大人物になって主君のために尽くせ」と語りかけた。
物心がつく前から「志」や「忠義」を耳に刷り込むことで、その子の根っこに強い覚悟が根づくと信じていた。これは、教育は理屈や理解を超えて、早い段階から心の芯を育てるものだという信念に基づく教えである。


五、解釈と現代的意義

この章は、「教育とは理解を待たない、志の刷り込みである」という価値観を示しています。
現代の教育や育成では「自分で考える力」「選択肢の尊重」が重視されがちですが、常朝の父はあえて「志を植えつけることの重要性」を説きました。

特にこの章句に表れるのは、「環境が人格をつくる」「日々の言葉が信念を形づくる」という、無意識への働きかけです。

これはビジネスやリーダー育成においても重要な示唆を与えてくれます。


六、ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)

項目解釈・適用例
新人育成理解を待たずに、まず「理念」や「使命」を口に出して語り続ける。反復と環境が人格を育てる。
チームビルディング「我々はこういう目的で動いている」という原点を何度でも語るリーダーであるべき。
子育て・後継者教育理屈ではなく、人生の早期から「社会に役立つ人になれ」「責任を果たせ」と語り続けることで、価値観の核が育つ。
組織文化の形成繰り返される言葉(スローガン、理念の共有)が、無意識のうちに組織の「常識」となる。

七、心得まとめ

  • 教育とは、理解や論理の前に、「志」を吹き込む行為である。
  • 志はあとから作るものではなく、幼いころから植え付けられるべきである。
  • ビジネスにおいても、「理念なき成長」は一過性である。根っこに理念を植えることが、永続する強さを生む。
  • 環境と日々の言葉が、人の人生を方向づける。志の言葉を繰り返せ、それが人格となる。

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