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心の蔓草は、自らを滅ぼす


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■引用原文(日本語訳)

『ダンマパダ』第十二章「自己」第162偈

「極めて性の悪い人は、仇敵がかれの不幸を望むとおりのことを、自分に対してなす。
蔓草が沙羅の木にまといつくように。」


■逐語訳

  • 極めて性の悪い人は(sudubbalaṃ purisaṃ)
  • 仇敵が望むとおりに(verīva tassa pāpakaṃ)
  • 自らを害する(attanā’va akāsi taṃ)
  • 蔓草が(vālā)
  • 沙羅の木にまといつくように(salalaṃ iva otthataṃ)

■用語解説

  • 性の悪い人(sudubbalaṃ purisaṃ):「きわめて抑制が効かない人」「内面が弱く、煩悩に流されやすい者」の意。
  • 仇敵(verī):敵意を持つ他人。本来は外部の危機や害意の象徴。
  • 蔓草(vālā):巻き付く性質の植物。油断すれば寄生し、宿主を滅ぼす。
  • 沙羅の木(salala):清らかで美しい木として知られる。仏陀の入滅地にも関わる神聖な象徴。
  • まといつく(otthataṃ):「からみつく」「巻き付いて締め殺す」イメージを持つ語。

■全体の現代語訳(まとめ)

極めて性質の悪い人間――すなわち自制のない人は、外からの敵がどれほど彼を不幸にしようとしてもかなわないような害を、自らに対して行ってしまう。それは、蔓草が沙羅の木に絡まりついて、やがてその木を滅ぼしてしまうようなものである。


■解釈と現代的意義

この偈は、「自分を最も深く傷つけるのは、自分自身の未熟さである」という厳しい真実を描いています。敵が望む不幸を、自らが実現してしまう――つまり、「自滅的行動」の恐ろしさです。

蔓草は、当初はささやかな存在に見えても、放っておけば宿主を絞め殺します。同様に、内にある怒り・欲・怠惰・無知といった「性の悪さ」は、自分自身の本質や可能性を覆い、やがて破壊してしまうのです。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点解釈・適用例
自己破壊的行動怒りによる対立、短絡的判断、責任回避――これらはすべて、外部の敵よりも自分自身を損なう。
慢心と失敗謙虚さを失い、自分の欠点に目をつぶると、内部から腐敗が始まり、他者の批判より先に崩壊が起きる。
組織の内部崩壊外的競争よりも、内部の利己心・対立・誠意の欠如が企業やチームを滅ぼすリスクが高い。
リスクマネジメント本当の敵は「外」ではなく「内」。感情・惰性・不誠実といった蔓草を自覚し、断ち切る勇気が必要。

■心得まとめ

「敵より恐ろしいのは、己の蔓草」
自らの中にある怠惰、怒り、慢心――それらが最も強力な敵である。他人の攻撃ではなく、自分の無自覚さが、最も自分を傷つける。放っておけば成長し、巻きつき、やがて自分を壊す。そのことを忘れず、日々内面の点検と整えを怠らぬこと。それが、本当の強さである。

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