資金繰計画の正しい作成方法

正確で実効性のある資金繰計画を作成することは、企業の財務管理において重要な役割を果たします。本記事では、資金繰計画書を構成する際に必要となる要素や具体的な手法を解説します。

1. 資金繰計画書の基礎構成

資金繰計画書を作成するためには、最低限以下の4つの表を用意する必要があります。

1.1 売掛金回収計画表

• 月ごとの売掛金回収を予測し、実際の入金予定を明確に管理します。
• 詳細な回収予定を把握することで、資金の流入を計画的に整理します。

1.2 買掛金支払計画表

• 買掛金の支払いスケジュールを管理し、月次の支出予定を明確にします。
• 仕入先への支払いをスムーズに進めるための計画です。

1.3 資金残高表

• 月次の資金残高を予測し、事前にキャッシュフローの不足を把握します。
• 資金の過不足を把握し、必要な対応策を計画します。

1.4 月次資金繰計画表

• 各月の資金収支状況を総合的に計画し、資金不足時の対応を決定します。
• 資金繰り全体を俯瞰的に管理するための中心的なツールです。

これらの表を基に、年間または半年分の資金繰計画を構築します。

2. 当月資金繰計画表

資金繰計画書には月次計画だけでなく、当月の詳細な資金収支を把握するための表も必要です。

2.1 当月資金繰計画表

• 当月における資金の入出金を詳細に記録します。
• 当月の収支状況を把握し、迅速な意思決定をサポートします。

3. 資金繰計画書の管理

月次および当月の資金繰計画書は、必要な付帯資料を添付し、「資金繰計画表綴」として一括管理するのが理想的です。これにより、計画全体を体系的に把握でき、経営判断の際に迅速な対応が可能となります。

4. 売掛金と買掛金の動きの把握

資金繰計画の中でも特に複雑なのが、売掛金と買掛金に関わる資金の動きです。これらの動きを正確に把握することで、計画の実効性を高めることができます。

4.1 売掛金の管理

• 回収の多様性
  売掛金の回収は、現金回収と手形回収に分かれます。また、手形の「サイト」（支払期限）が取引ごとに異なるため、回収時期が複雑になります。
• 計画の複雑性
  月内に複数回の回収がある場合、それぞれの時期を正確に把握し、計画に反映する必要があります。

4.2 買掛金の管理

• 支払いの多様性
  買掛金は現金支払いと手形支払いに分かれます。また、手形の「サイト」（支払期限）が案件ごとに異なることが一般的です。
• 支払いスケジュール
  買掛金の支払いは通常月に一度ですが、全額を一度に支払うわけではない場合もあります。

5. 相殺と廻し手形の影響

売掛金と買掛金の双方において、次のような特殊なケースも考慮する必要があります。

• 相殺
  売掛金と買掛金を相殺することで、実際の資金の動きを調整する場合があります。
• 廻し手形
  特定の条件下で、取引先との間で廻し手形が発生することがあります。

6. 正しい計画作成の意義

売掛金回収計画と買掛金支払計画を作成することで、以下の効果が得られます。

• 資金の流れを明確に管理することで、キャッシュフローの見通しが立ちやすくなる。
• 資金不足に陥るリスクを事前に把握し、対応策を講じることが可能になる。
• 経営者が資金管理に対して自信を持ち、金融機関や取引先との交渉において信頼を得られる。

まとめ

資金繰計画の正しい作成は、企業の経営安定性を高めるために欠かせないステップです。売掛金回収計画や買掛金支払計画を含む詳細な計画を立てることで、資金の流れを可視化し、計画的な運営を可能にします。また、これらの計画をもとにした月次および当月の資金繰計画は、迅速な意思決定と柔軟な対応をサポートする重要なツールとなります。