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我社の未来像をつくる

目次

経営者に求められる未来像の明確化

企業を発展させるためには、明確な未来像を描くことが経営者に求められる。

しかし、未来像がぼんやりとしていたり、描いた構想をさらに洗練する努力が不足しているケースは少なくない。

未来像が実現する保証がないからといって諦めるのではなく、その実現を目指して挑戦することが重要だ。

本記事では、未来像を描くプロセスと、その構想を具体化し実現するための方法について考察する。

社長は、「自身の経営理念に基づいて自社の未来像を描くべきだ」という考えを、すでに「経営戦略篇」で述べている。

これまで私が支援してきた社長たちは、一人の例外もなく、「自社の将来をこうありたい」という明確な意思を持っていた。

しかし、その未来像が明確でなかったり、一応の形を持っていても、それをさらに洗練させる努力が十分に払われていない場合も多い。

理由の一つとして、描いた未来像が実現できるという確証が得られないため、半ばあきらめのような状態に陥っていることが挙げられる。その結果、未来への不安が拭いきれず、行動に移すことが遅れてしまうのである。

我が社の未来像について考えると、明確なビジョンが形作られていないことが多く、仮にそれらしい構想があったとしても、それをさらに良いものにするための努力が十分に注がれていない状況がある。その原因は、未来像を実現できる確証が何もないため、半ば諦めの状態に陥っていることにある。そして、その諦めが将来への不安を増幅させる要因となっている。

未来像が実現するという保証がないからといって、逆に「実現しない」という保証も存在しない。結局のところ、それは行動してみなければ分からないことだ。であれば、一度きりの人生に後悔を残さないためにも、その未来像に向けて挑戦することが何よりも重要なのではないか。

やってみてできなかった場合には潔く諦めればいい。しかし、最初から挑戦もせずに諦めるという選択肢はあり得ない。何より、事業を経営する社長である以上、経営者としての気概が求められる。その気概があるならば、自らの心に描く未来像の実現に対して執念を持って取り組むべきだ。未来像をただの夢や希望で終わらせるのではなく、それを現実のものとするための行動が必要だ。

未来像を具体化するプロセス

そのために、まず第一に求められるのは、揺るぎない決意を固めることだ。次に、自社の未来像を明確に描き出すことが必要となる。そしてその後、その未来像に向けて具体的な行動を開始することが第三のステップとなる。最終的には、「人事を尽くして天命を待つ」という覚悟を持つべきだ。決意を固めたなら、次に取り組むべきは我が社の未来像をしっかりと構築することであり、それが未来への第一歩となる。

この場合、最初から完璧で立派な未来像を築こうとするのは現実的ではないし、必ずしもその必要はない。重要なのは、最初の一歩として、「こうなりたい」「こうありたい」と感じることを思いつくままに書き留めることだ。具体性や完成度を求めるのではなく、理想や願望の断片でも構わない。それらをメモに残すことが、未来像を形作るための第一歩となる。

順序や整合性を考える必要はない。例えば、「今は借り工場だが、将来は自社工場を持ちたい」「この商品の売上を5年後にはこれくらいまで伸ばしたい」「10年後には総売上をこれだけの規模にしたい」「業界の占有率を5年後に20%、10年後に30%にしたい」「5年後には海外に拠点を持ちたい」「5年後には給与水準を同地区の平均より10%高くしたい」「こんな新商品を持ちたい」「無借金経営を実現したい」「支払い手形をゼロにしたい」「自己資本比率を40%以上に引き上げたい」「純資産をこれだけにしたい」……といった具合でよい。

個々の目標がバラバラでも問題はない。重要なのは、自分が「こうなりたい」と思う目標や夢を、ひとつひとつ具体的に書き出してみることだ。それが未来像を具体化するための出発点となる。

バラバラに書き出した目標がある程度集まったなら、それらをざっくりとした分類で整理していけばよい。「これは事業構造に関するもの」「これは商品構成に関するもの」「これは新事業の目標」「これは販売に関すること」「これは設備投資の計画」「これは資本面の目標」「これは内部体制の整備に関するもの」といった要領で分類していく。

この段階では、細かい精度や完璧さを求める必要はない。おおまかに分類し、それぞれの目標がどの分野に属するかを整理することで、未来像をより具体的かつ体系的に捉えられるようになる。これが、実現に向けた次のステップの基盤となる。

その後、新たに浮かんだバラバラな目標を再び書き出し、前回の大まかな分類に加えていく作業を繰り返す。このプロセスを通じて、未来像は徐々に具体性を増し、体系的な形へと進化していく。

重要なのは、目標が新たに生まれるたびに、それを放置せずに整理し、既存の構想に組み込んでいくことだ。この反復作業によって、未来像は単なる断片の寄せ集めではなく、全体としての整合性と方向性を持つものへと成長していく。繰り返しの中で、より現実的で実現可能な道筋も自然と見えてくるだろう。

市場と顧客の視点を取り入れる

このような過程を経て、目標が徐々にまとまり、全体としての構想が形を帯びてくる。この段階に至ったら、次にその構想を検討し始める。「この構想には何か誤りや無理はないか」「もっと優れた方法やアイデアはないか」といった視点で深く考え、磨きをかける作業に取り組むのである。

この構想を練るプロセスについて、多くの経験者である社長たちは「苦しいというよりは、むしろ楽しい」と感じると言う。未来を描き、それを実現するための道筋を探る作業は、単なる経営課題ではなく、創造性を発揮する場として大きなやりがいをもたらすのだ。

構想を検討し、磨きをかけていく際に、絶対に忘れてはならないのが市場と顧客の存在である。常に外へ目を向け、自らの目で見て、耳で聞き、肌で感じながら市場や顧客の要求を確かめ、それに基づいて構想を再確認する必要がある。

「どこかに一人よがりがないか」という視点を持ち続けることが重要だ。自分の頭の中だけで完結させるのではなく、実際の市場や顧客の声と照らし合わせることで、構想が現実と乖離していないかをチェックする。これにより、より実現性が高く、顧客のニーズに応える未来像を描くことができる。

構想を練る際に忘れてはならないのは市場と顧客だ。自ら足を運び、目で見て耳で聞き、肌で感じながら市場や顧客の要求を確かめ、それをもとに構想を見直す。「一人よがりになっていないか」を常に意識することで、現実に即した未来像を描くことができる。

現状認識とギャップの克服

もう一つ重要なのは、我が社の現状を正しく認識することだ。ただし、それに固執するのではなく、目標と現状のギャップを明確にすることが目的である。そのギャップをどう埋めるかを前向きに考える姿勢が求められる。現状認識はあくまでも未来への足場であり、行動の起点とするべきものだ。

「このギャップを埋める具体策は何か」という問いが次に来る。この問いに答える鍵は、現状と目標を冷静に分析し、達成のための優先課題を明確にすることである。そして、それに基づき、実行可能なアクションプランを立案することが重要だ。さらに、資源や人材、時間の配分を最適化し、効率的かつ効果的に行動を起こすことが鍵となる。

我が社の特色と欠陥を見つける

その第一の問いは、「我が社の特色は何か」である。我が社の特色とは、市場や顧客に対して他社よりも優れたサービスや価値を提供できる分野を指す。それは必ず顧客から支持を得られるものでなければならず、一人よがりや自惚れでは成立しない。

たとえば、K社でのエピソードが示すように、ある洋菓子研究家を自称する人物にアイスクリーム作りを指導してもらった結果、甘味が強すぎて顧客には受け入れられなかった。このように、顧客の嗜好やニーズを無視した「自分本位の特色」では意味がない。本当に市場で評価される特色を見つけることが鍵となる。

そこで、非常によく売れて評判の高い店へその先生を案内し、そこのアイスクリームを試食してもらった。しかし、先生は一口食べただけで「こんなに甘味が薄いものはアイスクリームとはいえない」と言い、それ以上は口をつけなかったという話を聞いたことがある。

このエピソードは、自分の価値観や専門性に固執しすぎることが、いかに市場や顧客のニーズとかけ離れた結果を生むかを物語っている。顧客に支持される特色とは、自己満足ではなく、市場が求めている価値でなければならない。

こうなってしまったら、もはや終わりである。このような事態を避けるためには、常に顧客の立場に立って考える姿勢が必要だ。顧客のニーズや期待を正しく理解し、それに応える特色を見極めることが求められる。

そして、その特色をどのように生かすか、あるいは生かさないかを最終的に決断するのは社長自身である。経営者として、市場と顧客に寄り添いながら、自社の強みを最大限に活用する道を選ぶ責任がある。これは他人任せにできるものではない。

第二の問いは、「我が社の欠陥は何か」である。このとき、安易に「人材の不足」を挙げるべきではない。人材待望論に頼るのは誤りであり、その問題点を理解する必要がある(詳しくは「経営戦略篇」を参照のこと)。

人材の不足を欠陥として挙げるのは、現状の課題を他者や外部要因に押し付ける姿勢に過ぎない。本質的には、現在の人員でどのように工夫し、課題を克服するかを考えるべきだ。経営において、解決の糸口は常に自らの内側にあるという視点を持つことが重要である。

欠陥の最大のものは、常に我が社の「事業構造」の中に潜んでいる。その典型的な例として、単一業界、単一商品、単一得意先への依存という偏りが挙げられる。

高度成長時代には、仕事が豊富で、何もしなくても注文が入ってきた。そのため、多くの企業が「やりやすい仕事」や「儲かる仕事」にだけ集中し、結果として事業構造が偏ってしまった。ところが、高度成長時代が終わり、経済が減速する中で、こうした片輪な事業構造のリスクが顕在化したというケースは非常に多い。これを放置すると、環境変化に耐えられず、競争力を失う原因となる。

次に挙げる欠陥は「販売力の弱体化」である。これも高度成長時代の安易な経営が原因となっている。需要が溢れる時代には、積極的な営業努力を怠り、受け身の姿勢に陥った企業は少なくない。この結果、販売力が弱くなり、競争環境が厳しくなると苦境に立たされるケースが多い。

これら二つの欠陥(事業構造の偏りと販売力の弱体化)は、特に一般的な問題として挙げられる。我が社にこれらの欠陥が当てはまらないか、真剣に考えてみる必要がある。

ただし、その他の欠陥を見つけるのは容易ではない。自社の問題点は、自分ではなかなか気づきにくいものだ。これを知るための最良の手がかりは、お客様からの意見やクレームである。顧客の声を真摯に受け止めることで、自社の欠点を明らかにし、改善への道を見出すことができる。

お客様の意見やクレームに謙虚に耳を傾けられるかどうかが、我が社の事業の未来を大きく左右する。どのような時でも、お客様の声こそが最も貴重で価値のある忠告である。

この意見をもとに自社の欠陥を見つけ、それを改善することで、さまざまなリスクを未然に防ぎ、事業を健全な方向に導くことができる。顧客の声に学び、変化に対応する柔軟性こそが、長期的な成功の鍵となる。

まとめ:未来像を描き、行動する

未来像を描き、それを実現するためには、経営者自身が揺るぎない決意を持ち、市場や顧客の視点を取り入れながら構想を磨き上げていく必要がある。

また、現状と目標とのギャップを明確にし、具体的なアクションを起こすことで課題を克服できる。

そして、最も重要なのは、顧客の声に耳を傾け、その意見をもとに改善を重ねることである。こうしたプロセスを通じて、企業は持続的な成長を実現できるだろう。

以下のステップで、将来像の構築を進めていくのが効果的です。

1. 将来の姿への決意を固める

  • 「我社の将来をこうしたい」という強い意思を持ち、目標に向かって挑戦する気概を持つことが大切です。仮に保証がなくとも、挑戦せずに諦めるのではなく、行動に移すことが成功への第一歩となります。

2. 将来の姿を形作る

  • 初めから完璧な未来像を求めるのではなく、やりたいこと、目指したいことをメモし、それを基にして将来像を徐々に構築します。
  • 例として、「自社工場を持ちたい」「業界での占有率を高めたい」「無借金経営を実現したい」といった具体的な願望を出し、それらを整理し、大まかに分類していくことで、構想が少しずつ具体化されます。

3. 市場と顧客に基づく現状認識とギャップの理解

  • 構想の検討時には、常に市場の動向や顧客のニーズを念頭に置き、自分の計画が一方的なものになっていないかを確認します。
  • また、自社の現状と目標とのギャップを認識し、このギャップを埋めるための具体的な行動計画を立てます。自社の現状を把握することで、現実に基づいた計画を立てることが可能となります。

4. 自社の特徴や欠点を正確に捉える

  • 自社の強みをどのように活かすか、または強みをさらに強化する方法を考えます。一方で、欠点についても見つめ直し、特に「事業構造」の偏りがないかをチェックします。
  • 顧客の意見やクレームに謙虚に耳を傾け、改善すべき点を見出すことが成長への鍵です。顧客の声は、会社の欠陥を知るための大切な指標となります。

5. 活動の始動と継続的な改善

  • 目標を達成するためには、社員全員がその意図を理解し、協力体制を整えることが不可欠です。社内外の理解と協力を得るために、計画を具体的に明文化し、目標を分かりやすく伝えましょう。
  • 設定した未来像に向かって、計画的な行動を起こし、定期的に目標達成への進捗を確認し、改善を重ねることで、会社の成長を持続させます。
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