人の短所に気づいたとき、それをあからさまに指摘して傷つけるのではなく、
やさしく丁寧にフォローし、うまくつくろってやることが大切である。
もし、相手の欠点をそのまま暴いてしまえば、
それは自分の短所で相手の短所を攻めるようなもので、何の成長ももたらさない。
また、頑固な人に対しては、感情的にならず、上手に導き、さとす工夫が必要である。
こちらが怒ってぶつかってしまえば、頑固さが頑固さを呼び、かえって対立を深めるだけである。
責めるより、包む。突くより、導く。
そのような姿勢こそ、人間関係を育て、自分自身の品格を高めていく道となる。
原文(ふりがな付き)
人(ひと)の短處(たんしょ)は、曲(きょく)さに弥縫(びほう)を為(な)すを要(よう)す。如(も)し暴(あら)わしてこれを揚(あ)ぐれば、是(こ)れ短(たん)を以(もっ)て短を攻(せ)むるなり。人の頑(がん)ある的(てき)は、善(よ)く化誨(けいかい)を為すを要す。如し忿(いか)りてこれを疾(にく)まば、是れ頑を以て済(す)すなり。
注釈
- 曲さに弥縫を為す:「弥縫(びほう)」とは繕う・補うという意。相手の短所を柔らかく補い、体面を保たせる配慮。
- 短を以て短を攻む:自分にも短所があるのに、他人の短所をあからさまに攻撃してしまうこと。互いに傷つけ合うだけになる。
- 頑ある的:頑固な性質を持つ人。
- 化誨(けいかい):感化し、教え導くこと。穏やかな説得。
- 忿りてこれを疾まば:怒って相手を嫌い、敵対すること。
- 頑を以て済す:自分の頑固さで、相手の頑固さをさらに助長してしまう状態。
パーマリンク(英語スラッグ)
correct-with-kindness
(やさしく正す)temper-tames-temper
(穏やかさが頑固を和らげる)guide-don’t-condemn
(責めるより導く)
この条文は、人間関係における最も繊細な部分――**「相手の欠点への対処」**において、
感情ではなく誠意と知恵で接することの重要性を説いています。
他者の過ちや未熟さに直面したとき、私たちは「裁く者」ではなく「育てる者」であるべきだという、
深い慈しみと人間理解に満ちた教えです。
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