目次
■引用原文(日本語訳)
第二三章 象(三二一)
馴らされた象は、戦場にも連れて行かれ*、王の乗りものともなる。
世のそしりを忍び、自らをおさめた者は、人々の中にあっても最上の者である。*戦象は調教されることで、戦場で王を乗せる誇り高き役割を担う。
■逐語訳
- 馴らされた象:よく訓練され、制御のきいた象。
- 戦場にも連れて行かれ:戦場においても制御されて行動する。
- 王の乗りものともなる:王が信頼して乗る存在となる。
- 世のそしりを忍び:人々からの中傷・非難に耐え。
- 自らをおさめた者:自己を統御し、感情や欲望に支配されない者。
- 人々の中にあっても最上の者:多くの人の中にあっても、最も優れた者である。
■用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
馴らされた象 | 仏教では「訓練された心」の象徴。自制が利いた力強さの象徴でもある。 |
王の乗りもの | 高貴で信頼された存在。制御が利いているからこそ最も重要な役割を担う。 |
そしりを忍ぶ | 外部からの誹謗中傷に心を乱されず、静かに耐える態度。 |
自らをおさめた者 | 煩悩や怒り、欲望などの内部の衝動を制御した者。 |
最上の者(uttama) | 仏教用語で最も優れた修行者・人格者の称号。 |
■全体の現代語訳(まとめ)
よく調教された象は戦場においても王の乗り物として用いられるように、外からの非難を静かに耐え、内なる自己を制御した人間は、人々の中にあって最も尊く尊敬される存在である。
■解釈と現代的意義
この節では、「外の敵」よりも「内なる敵(怒り・プライド・欲望)」を制御する者の尊さが説かれます。
たとえ力があっても、それを制御できなければ害となる。だが、象のように力を持ちながらも静かで、自らを律した者は社会の中で最も価値ある存在となる――という教えです。
このメッセージは、現代社会において、自己主張や競争が激しい場においても、「自己制御こそ真の強さ」であるという普遍の価値観を示しています。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
リーダーの資質 | 部下や環境に振り回されず、感情をコントロールして冷静な判断ができるリーダーは、組織において信頼される「乗り物」となる。 |
パフォーマンスの安定性 | 外部環境が混乱していても、自制の利いた人物はぶれずに成果を出せる。 |
自己管理力 | 自らの感情や欲求に流されず、長期的視点で冷静に行動できる人は、最終的に高く評価される。 |
プレッシャー耐性 | 厳しい状況でも動じず、冷静に状況を制御する姿勢が、戦略的価値を生む。 |
■心得まとめ
「真のリーダーは、自らを制する者である」
力ある者が尊いのではない。
力をもってなお、それを制御できる者が最も価値ある存在である。
ビジネスの現場においても、騒がしい状況や他者の評価に揺れず、自らの心を統御して冷静に行動できる人こそ、組織を導く「王の乗りもの」となるのです。
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