目次
1. 契約負債
契約負債は、会社が顧客に財またはサービスを移転する前に、現金等で対価を受け取った場合に計上します。
処理の流れ
- 履行義務を果たす前 → 契約負債(負債)として処理。
- 履行義務を果たした後 → 売上(収益)に振り替え。
【例1】商品の販売と保守サービスの契約
契約内容
- 契約締結日:X1年4月1日
- 契約内容:
- 商品の販売(対価80円)→ 引渡し時に収益計上。
- 2年間の保守サービス(対価20円)→ サービス提供期間に応じて収益計上。
- 契約金額:100円(商品の引渡時に現金受領)。
- 決算日:X2年3月31日
- 保守サービス期間:X1年4月1日~X3年3月31日(2年間)。
(1) X1年4月1日(商品の引渡時、対価の受取時)
仕訳
借方:現金 100円
貸方:売上収益 80円
契約負債 20円
(2) X2年3月31日(決算日)
保守サービスのうち、1年分(20円 × 1/2 = 10円)を収益計上。
仕訳
借方:契約負債 10円
貸方:売上収益 10円
(3) X3年3月31日(保守サービス期間終了時)
残りの保守サービス分(10円)を収益計上。
仕訳
借方:契約負債 10円
貸方:売上収益 10円
2. 契約資産
契約資産は、会社が財またはサービスを移転したにもかかわらず、対価の支払いに関して無条件の請求権が発生していない場合に計上します。
処理の流れ
- 履行義務を果たす → 契約資産(資産)として処理。
- 法的請求権が発生 → 売掛金(資産)に振り替え。
- 対価を受領 → 現金に振り替え。
【例2】商品Xと商品Yの販売契約
契約内容
- 契約締結日:X1年4月1日
- 契約内容:
- 商品Xの対価60円 → X1年4月30日に引渡し。
- 商品Yの対価100円 → X1年5月31日に引渡し。
- 支払い条件:
- 商品Y引渡し完了後に、商品Xと商品Yの合計対価160円を受領。
- 入金日:X1年6月30日
(1) X1年4月30日(商品Xの引渡時)
商品Xの引渡しに伴い収益を計上。ただし、対価に関する法的請求権はないため、契約資産で処理。
仕訳
借方:契約資産 60円
貸方:売上収益 60円
(2) X1年5月31日(商品Yの引渡時)
商品Yの引渡しに伴い収益を計上。商品Xと商品Yの合計対価について法的請求権が発生するため、契約資産を売掛金に振り替え。
仕訳
借方:売掛金 160円
貸方:契約資産 60円
売上収益 100円
(3) X1年6月30日(対価の入金時)
売掛金の回収。
仕訳
借方:現金 160円
貸方:売掛金 160円
3. 契約負債と契約資産の違い
項目 | 契約負債 | 契約資産 |
---|---|---|
発生タイミング | 履行義務を果たす前に対価を受領した場合 | 履行義務を果たしたが、対価に無条件の請求権がない場合 |
貸借区分 | 負債(貸方) | 資産(借方) |
振り替え時 | 履行義務を果たした時点で収益に振り替え | 法的請求権が発生した時点で売掛金に振り替え |
まとめ
- 契約負債は、履行義務を果たす前の前受金に相当。
- 契約資産は、履行義務を果たした後、対価請求が未確定の際に使用。
収益認識の適切な処理を行うことで、企業の収益と負債(または資産)を正確に管理できます。
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