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引用原文(日本語訳)
主(個我)が身体を獲得し、また身体を離れる時、
彼はそれら〔の感官〕を連れて行く。
風が香りをその拠り所から連れ去るように。
(『バガヴァッド・ギーター』第15章 第8節)
逐語訳
個我(ジーヴァ、魂の主)は、ある肉体を得て生まれ、
またその肉体を離れて死に至る時に、
彼(ジーヴァ)は、思考器官(マナス)と感官(六根)をともなって移動する。
それはちょうど、風が香りを花や草から運び去るようなものである。
用語解説
用語 | 意味 |
---|---|
主(プルシャ、個我) | 個人の魂(ジーヴァ)。身体に宿り、経験し、転生する主体。 |
身体の獲得・離脱 | 誕生(肉体の取得)と死(肉体からの離脱)という生命のサイクル。 |
感官(五感+思考) | 視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚、そして意(マナス)を含む六つの認識器官。 |
風と香りの比喩 | 形なき魂が、微細な感覚の性質(香り)を伴って移動する様を示す詩的表現。魂は身体に依存せず、それ自体で感覚傾向を保つ。 |
全体現代語訳(まとめ)
魂は、肉体の誕生に際して身体を獲得し、
死のときにはその身体を離れる。
その際、感官と心の傾向を携えたまま、
まるで風が香りを運ぶように、新たな存在へと移っていく。
魂は本質的に形を持たず、それでも行動と記憶の痕跡を連続的に保っている。
解釈と現代的意義
この節は、「魂=自己の本質は肉体に限定されるものではなく、転生を超えて存続する」という教えを伝えています。
そしてその魂は、単に存在しているだけでなく、思考の傾向や感覚の性質を携えて次の場へ移ると述べています。
現代的に言えば、「人間の本質は、環境や肉体に縛られず、内在する資質や習慣が継続して現れる」ということです。
環境が変わっても、同じ行動パターンを繰り返すのは、この「風が香りを運ぶような性質の連続」によるのです。
ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
本質的な能力の継続性 | 仕事・職場・プロジェクトが変わっても、その人の思考傾向や感覚的判断はついて回る。ゆえに内面の成長が重要。 |
習慣と意識の移動 | 転職や組織移動をしても、問題が繰り返される場合は「環境」ではなく「内なる性質」に目を向けるべき。 |
人材の本質を見る | 経歴や肩書きよりも、「どんな思考や感性を持ち続けているか」を見抜く視点が、真の人材評価につながる。 |
長期的成長戦略 | 目先の成果ではなく、「魂に蓄積される習慣・意識・価値観」を育てるマネジメントが、企業文化の永続に寄与する。 |
心得まとめ
「人は、環境を離れても、自分を連れていく」
場所を変えても、職を変えても、
本質的な自分が変わらなければ、繰り返すパターンもまた変わらない。
だからこそ、真に成長するには、
肉体や環境ではなく、心の習慣や感覚の傾向を浄化・改革することが鍵となる。
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