人の意志は、生まれながらに強固であるものではない。
されど、正しき心の柱を立て、
思慮深く物事に臨むことで、
その意志は磨かれ、鍛えられていく。
その柱こそ、「忠」と「孝」である。
忠とは、公に対する誠、
孝とは、私に対する義。
この二つは、人としての根であり、行いの源である。
忠をもって世に尽くし、
孝をもって身を立てる。
この精神のもとに意志を築けば、
それは浮ついた利害にも、時流の誘惑にも、
たやすく揺らぐことはない。
ただし、意志は衝動ではなく、
沈思黙考によってこそ養われる。
すぐに答えを求めず、
静かに己の心に問い、
事の順序と理を整えた上で決断すべし。
言葉は慎み、行動は一貫し、
判断には迷いなきこと。
これこそ、意志の鍛錬において
最も大切な心得である。
忠と孝とをもって志を定め、
沈思黙考して事に臨むならば、
その意志に破れは生じない。
たとえ困難が道を塞いでも、
そこに迷いは生まれぬであろう。
○忠と孝とこの二者より組み立てたる意志をもって、何事も順序よく進ませるようにし、また何事によらず、沈思黙考して決断するならば、意志の鍛錬において間然する所はないと信ずる。
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