C社は小規模スーパーマーケットを3店舗展開し、堅調な業績を上げていました。さらなる成長を目指す中で、中規模店舗の導入を計画し、適切な候補地が見つかったことで大胆なショッピングセンター建設計画を進めることとなりました。
この計画では、C社を核とした別会社(α社)を設立し、テナント誘致型の運営モデルを採用しました。
計画の甘さと資金調達のリスク
C社長は、この計画に必要な資金を試算し、テナント保証金と銀行借入で十分に賄えると考えていました。しかし、詳細な資金調達計画がないまま進めたため、さまざまな問題が明らかになりました。
具体的な計算書の欠如
計画に必要な資金試算が曖昧で、具体的な計算書が存在しませんでした。社長は「難しい計算ではないから大丈夫」と答えるのみで、返済計画や収益見通しに対する具体的な裏付けがありませんでした。
税負担の見落とし
法人税や地方税が計画に考慮されておらず、収益に対する税負担が計算外となっていました。このため、実現可能性の低い収益計画が立てられていたのです。
追加借入の必要性を想定していない
初期の建設資金に加え、借入金返済のために追加借入が必要になることが想定されていませんでした。
長期的な資金需要を軽視したことで、計画全体の持続性が危うくなっていました。
長期的視点での資金計画の必要性
私は社長に対し、長期的な利益計画と資金運用計画の重要性を説き、次のような計画を作成しました。
長期利益計画
計画された収益がどのように利益に転化し、税負担や配当、役員賞与を差し引いた実際の手元資金がどれほどになるのかを明確にしました。
長期資金運用計画
借入金返済や運転資金の増加を考慮した資金の流れを可視化し、不足する資金を特定しました。
長期借入金返済計画
借入金返済の負担が経営に与える影響を分析し、どの時期に追加資金が必要になるかを予測しました。
計画によるリスクの顕在化
これらの計画をもとに試算を行った結果、以下の現実が明らかになりました。
- 初年度から追加借入が必要で、その状態が5年間続く見通し。
- 借入のピークは5年目に達し、その後ようやく返済が進むことで資金繰りが改善する見込み。
これらの試算結果を目にした社長は、自身の見通しの甘さに驚愕しました。
資金計画の重要性とその効果
私は社長に対し、次の現実を指摘しました。
この現実を理解したことで、社長は事業計画を大幅に見直し、資金繰りリスクを軽減するための具体策を講じることとなりました。
銀行の信頼を得るための計画の重要性
最終的に、私が作成した綿密な計画を添付した借入申請は、銀行から高く評価され、初年度の建設資金だけでなく、5年間にわたる追加借入も同時に承認されました。
これは、長期的な資金運用計画の重要性を如実に示す事例と言えるでしょう。
計画を通じて、C社は銀行の信頼を得ただけでなく、経営リスクを大幅に低減し、安定した事業拡大を実現する道筋を描くことができたのです。
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