■引用原文(日本語訳)
聖バガヴァットは告げた。
「動不動のいかなるものが生じようとも、
それは『土地』と『土地を知る者』との結合によると知れ、バラタ族の雄牛よ。」
(『バガヴァッド・ギーター』第13章 第26節)
■逐語訳
動くもの(生物)も、動かざるもの(鉱物・植物など)も、
この世のいかなる存在もすべて、
「土地(プラクリティ=物質的基盤)」と
「土地を知る者(クシェートラジュニャ=意識・魂)」の結合によって生まれるのだ――
と理解せよ、アルジュナよ(バラタ族の偉大なる者よ)。
■用語解説
用語 | 意味 |
---|---|
動・不動(チャラ・アチャラ) | 動物などの動的存在と、鉱物や植物などの静的存在。 |
土地(クシェートラ) | 肉体・感情・環境など、変化する「場」=プラクリティ(物質自然)。 |
土地を知る者(クシェートラジュニャ) | 「土地=物質」を認識する存在。真我(プルシャ)、意識、魂。 |
結合(サンガタ) | 意識が物質に宿ること。魂と身体、観察者と現象の結びつき。 |
バラタ族の雄牛 | アルジュナの尊称。優れた戦士・求道者への呼びかけ。 |
■全体の現代語訳(まとめ)
この世界に現れるすべての存在――動くものも、動かぬものも――は、
「物質的な場(身体や現象)」と、それを見て経験する「意識的存在(魂)」が結びついた結果である。
クリシュナは、あらゆる現象の根底に「意識と物質の結合」という原理があることを明かしている。
■解釈と現代的意義
この節は、宇宙の創造の根本には「場(素材)」と「意識(観察者)」の結びつきがあるという、深遠な存在論を提示しています。
目に見える現象のすべては「物質」だけでは成立せず、
そこに「それを経験しようとする意識」があって初めて、“生きた現実”となる。
これは、「すべては自分の意識によって意味づけられている」という洞察にもつながります。
■ビジネスにおける解釈と適用
視点 | 解釈と応用例 |
---|---|
プロジェクトと人間性 | どんな計画(場)も、それに命を吹き込む“意識(人の熱意・意図)”がなければ機能しない。 |
働き方改革 | 「仕組み」だけでは人は動かない。人の心・主体性・意識が結びついて、初めて生産性は生まれる。 |
価値創造の本質 | 商品・サービス・情報の“素材”に、使い手・届け手の意図や視点が加わることで、本当の価値が生まれる。 |
マーケティング戦略 | 顧客(意識)と製品(素材)の結びつきをどう創出するかが、成功の鍵になる。 |
■心得まとめ
「意識と素材が出会うとき、世界は動き出す」
『バガヴァッド・ギーター』は、存在の根源が「物質(場)」と「意識(観察者)」の結合にあると説きます。
どんなに良い仕組みや環境があっても、それだけでは動かず、
そこに“意図ある存在”が関与してこそ、意味ある現実が展開する――
この視点は、現代のあらゆる創造・行動・組織運営にも深く通じる真理なのです。
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