コンピュータはなぜ役に立たないのか:その原因と解決策
近年のコンピュータ技術の進化は目覚ましく、企業経営の現場でも広く導入されています。しかし、その効果が必ずしも期待通りではなく、むしろ非効率や混乱を引き起こしている例が後を絶ちません。ここでは、コンピュータが「役に立たない」と感じられる主な理由を整理し、その解決策を提示します。
1. 本質を理解しない導入が問題の根源
問題:
- 経営者の無知
経営者がコンピュータの本質や使い方を理解せず、「時代に乗り遅れないために」と漠然とした理由で導入しているケースが多い。 - システム開発者の業務理解不足
開発者が企業の実務を十分に理解していないため、現場のニーズとかけ離れたシステムが構築される。
例:
- MIS(経営情報システム)の名ばかり運用
「経営を効率化する」と謳いながら、実際は日常業務のデータ管理にとどまり、経営判断に寄与しない。
解決策:
- 経営者自身が学ぶ
社長がコンピュータやシステムに関する基礎知識を学び、導入目的を明確にする。 - 業務理解を重視した設計
開発者と現場担当者が密に連携し、業務に即したシステム設計を行う。
2. 過剰な期待と依存による誤用
問題:
- コンピュータを万能の道具と信じ込み、システムが導き出すデータや判断を無批判に受け入れる。
- 入力ミスやエラーをチェックせず、コンピュータの「権威」に頼りきりになる。
例:
- 売掛金の請求額が異常値(二億円)と表示されたにもかかわらず、担当者がシステムを信じ込み訂正しなかった。
解決策:
- システムを監視する体制を構築
データ入力や結果のチェックを行う人的な監査プロセスを導入する。 - ツールとしての認識を徹底
コンピュータは経営判断を支援するツールであり、最終判断は人間が行うべきである。
3. 業務改善を伴わない導入
問題:
- 現行の業務フローを見直さずにコンピュータ化を進めた結果、既存の問題がそのままシステム内に取り込まれる。
- 業務の複雑さが増し、結果的に効率が低下する。
例:
- 在庫管理の課題が解決されないままシステム化を進め、現場がさらに混乱。
解決策:
- 業務改善を優先
コンピュータを導入する前に、業務フローを整理し、課題を明確にする。 - 小規模な導入から開始
段階的にシステムを導入し、効果を検証しながら全体に展開する。
4. 顧客よりもコンピュータを優先する姿勢
問題:
- システム運用が顧客対応を妨げる場合がある。
- 顧客の要望よりもシステムの都合が優先されることで、機会損失や顧客離れを招く。
例:
- 在庫があるにもかかわらず、出荷指示書の発行が遅れ、顧客の希望納期に間に合わなかった。
解決策:
- 柔軟な運用を許容
システムの制約を理由に顧客対応を遅らせないよう、手動対応を含めた柔軟な運用を可能にする。 - 顧客中心の設計思想
システムを顧客サービスの向上に直結させるため、設計段階から「顧客第一」の視点を持つ。
5. データの氾濫と無意味な出力
問題:
- コンピュータが膨大なデータを出力するものの、情報が整理されておらず、意思決定に役立たない。
- データが「紙屑」と化し、経営の妨げになる。
例:
- 日々大量に出力されるデータが無意味で、分析に活かされていない。
解決策:
- 必要なデータを絞り込む
データを目的に応じて要約し、経営判断に必要な情報だけを提供する仕組みを導入する。 - 視覚化ツールを活用
データをグラフやダッシュボードで可視化し、経営者が直感的に状況を把握できるようにする。
6. コンピュータが「神聖化」される風潮
問題:
- コンピュータやプログラマーが組織内で過剰に権威を持つことで、経営の主軸がずれる。
- 社長を含む全員がコンピュータの指示に従う状況に陥り、顧客視点を失う。
解決策:
- 経営者主導での運用方針
コンピュータはあくまで経営の補助ツールであり、最終的な指揮権は社長が握るべきである。 - 顧客視点の優先
コンピュータの運用方針において、顧客満足度を最優先事項とする。
結論:コンピュータを使いこなすための経営者の役割
コンピュータは正しく使えば強力な経営ツールとなりますが、使い方を誤れば「公害」となり、企業の柔軟性を奪い、顧客を遠ざける結果を招きます。そのためには、以下のポイントを押さえることが重要です。
- 導入前の準備
コンピュータを導入する前に、業務フローを見直し、課題を明確化する。 - 経営者のリーダーシップ
社長自身がコンピュータやシステムの導入に積極的に関与し、目的や運用方針を明確にする。 - 柔軟な運用体制の確立
顧客ニーズや市場変化に応じた運用体制を整え、機械に振り回されない仕組みを作る。 - データ活用の強化
必要な情報だけを絞り込み、意思決定に役立つ形でデータを活用する。
最終的に、コンピュータを役立たせるかどうかは、経営者の意識と運用次第です。技術を支配する側に立つことが、企業成功の鍵となるのです。
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