人の過ちは、あたたかく受けとめ、寛大に赦してあげるべきである。
しかし自分の過ちについては、どこまでも厳しく省みなければならない。
また、自分の苦しみや屈辱は、じっと耐える覚悟を持つべきだ。
けれど、他人が苦しんでいるときには、ただ見過ごすのではなく、積極的に手を差しのべねばならない。
孔子が「忠恕(ちゅうじょ)」――誠実さと他者への思いやり――を道の中心としたように、
また孟子が「人に忍びざるの心」を「仁のはじまり」と説いたように、
この条は「他者を思いやる心こそが、人の徳の出発点」であることを静かに教えてくれる。
原文(ふりがな付き)
「人(ひと)の過誤(かご)は宜(よろ)しく恕(じょ)すべし、
而(しか)れども己(おのれ)に在(あ)りては則(すなわ)ち恕(じょ)すべからず。
己(おのれ)の困辱(こんじょく)は当(まさ)に忍(しの)ぶべし、
而(しか)れども人(ひと)に在(あ)りては則(すなわ)ち忍(しの)ぶべからず。」
注釈
- 恕(じょ):思いやり、許す心。孔子の徳目「仁」に通じる中核的な価値。
- 困辱(こんじょく):困難や屈辱、苦しみの意。
- 忍ぶべからず:ただ見過ごしてはならない。行動を起こすべき時の戒め。
パーマリンク候補(英語スラッグ)
compassion-over-judgment
(裁くより思いやりを)be-strict-on-yourself-kind-to-others
(己に厳しく、人に優しく)don’t-ignore-suffering
(苦しみに背を向けるな)
この条は、現代のリーダーシップや人間関係にも通じる深い哲学を含んでいます。
「自分には厳しく、他人には優しく」という姿勢は、実践こそ難しいものの、最も信頼される人間の在り方であると言えるでしょう。
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