■ 引用原文(日本語訳)
自分が他人に教えるとおりに自分でも行なえ。
わたしは常にわが身をよくととのえている。
自分というものは、まことに制し難いものである。
――『ダンマパダ』第8節(八*)
■ 逐語訳と用語解説
- 自分が他人に教えるとおりに自分でも行なえ:人に語る内容が、自分の実践と矛盾していないように。まず自ら模範となれ。
- わたしは常にわが身をよくととのえている:自分は常に心身ともに律し、姿勢を保っていると述べる発願または誓言。
- 自分というものは、まことに制し難いものである:自己の感情・欲望・慢心などを抑えることは非常に難しく、慎重に向き合うべき対象である。
■ 全体の現代語訳(まとめ)
「他人に教えることは、自分でもその通りに行動することで初めて意味を持つ。私は常に自分自身の姿勢を正している。なぜなら、自分という存在は、非常に制御の難しいものだからである。」
この句は、「指導する人間は誰よりもまず、自らを統御すべきだ」という厳しい自己規律の精神を語っています。
■ 解釈と現代的意義
この章句は、教える立場にある者の自己への厳しさと、自己認識の重要性を示しています。
他者への忠告や教育は簡単ですが、それを自分に適用することははるかに難しい。
そして、まさにその難しさを知っている者だけが、謙虚さと真実の力を持つリーダーとなりうるのです。
これは、家庭・教育・ビジネス・宗教など、あらゆる領域に通じる普遍の真理です。
■ ビジネスにおける解釈と適用
領域 | 適用例 |
---|---|
組織の信頼構築 | 「人には厳しく、自分には甘い」上司は信頼を失う。言葉と行動が一致する人にこそ人は従う。 |
自己研鑽と謙虚さ | 教える立場にある人ほど、自分が一番学び、律する姿勢を持つことが説得力を生む。 |
コンプライアンス | ルールを説くだけでなく、まず自分が模範となることで、文化が定着する。 |
メンタルトレーニング | 自分の癖・感情・言動のパターンを知り、それをどう整えるかが真のリーダーシップの鍵となる。 |
■ 感興のことば(心得まとめ)
「教えは行いで証明せよ。自己を制する者こそ、真に語る資格がある」
自らの行いと一致しない言葉に、他人は耳を貸さない。
自己は最も手強い敵であり、最も貴い修行対象でもある。
まずは、自分が語る言葉を自分の行動に刻みこめ。
この句は、リーダー・教育者・親・経営者など、他者に影響を与えるすべての人に向けた鋭く深いメッセージです。
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